デジタル技術伝承セミナー 開催報告
2014年9月3日(水)「デジタル技術伝承 事例共有&勉強会」を開催いたしました。今回は【製造業限定】とし、製造業に従事する方にフォーカスした内容となりました。
製造業における”技術伝承”の変遷を振り返る
はじめに株式会社スタディスト庄司より、製造業における技術伝承の変遷についてふりかえりを行いました。
団塊世代が一斉に定年退職を迎えることで、中核技術者がいなくなってしまうのでは?と「2007年問題」がクローズアップされました。様々な対策が講じられましたが、実際に2007年を迎えた時に多くの企業は「再雇用」を選びました。その結果、技術伝承という問題自体は先送りされ、いまだに「うまく伝承できている」と答えられる企業は限られています。
また、スマホやタブレットの普及に伴う「デジタル化」の時代背景のふりかえりや、マニュアル作成ツール Teachme Bizの開発に至った経緯や従来手法で感じていた課題感なども紹介しました。
続いて、Teachme Bizを導入企業いただいている、大鉄精工株式会社 木下社長(参考記事)と、株式会社ティアンドエスラボラトリ 佐藤社長から、導入に至った経緯や導入後の感想などを伺いました。Teachme Bizを使って簡単にマニュアル作成ができるようになったという点に加えて、使い方や広め方について議論がありました。
- ルーチン作業やリピート注文など繰り返し性の高い作業をマニュアル化している
- 専門性や新規性の高い業務は、マニュアルではなく知識や経験により対応すべき
- 「目先の10分でマニュアル化すれば、半年後に半日悩むことがなくなる」という長期的視点をどう説明するか
- 個人の学習意欲や主体性に委ねるか、業務の一環として作るように命じるか
グループディスカッション1)「技術伝承のメリット/デメリットとは?」
続いて、4人ずつのグループに分かれ「技術伝承やノウハウ共有のメリット/デメリットは?」というグループディスカッションを行いました。「技術伝承」は立場や状況によってメリットにもデメリットにも見えたりもします。たった4人でのディスカッションでも意見が別れることを体感していただき、会社全体であればなおのこと賛成派・反対派が出てくることも実感出来ました。
例えば、「マニュアルで効率的に業務を行えるメリットはあるが、基礎的知識を身につける機会がなくなるデメリットもあるのでは?」という意見では、みなさまのこれまでのご経験から様々な意見がでました。
グループディスカッション2)「各社で取り組んでいる”技術伝承”は?」
最後に、業務の難易度(熟練が求められる業務か、誰でもできる単純作業か)に応じて、各社がどのように技術伝承の取組を行っているのか、成功例と失敗例の情報共有を行いました。どの企業様も試行錯誤しながらチャレンジされている様子をお話いただき、参加者の方々もお互いに参考になったとおっしゃってました。
- ベテランと若手のペア体制を作ったが、相性によっては失敗例も多かった
- 定期的にペアをシャッフルするルールがあり、いろんな先輩から学べた
- 「仕上げ見本」を作ったが、そのとおりの仕上がりになかなかできない
- 「理由型」「暗記型」という個人差を見極めて教え方を変えている
- メーカーの研修会に定期的に参加させている
- 作業標準を作ったがメンテナンスが追いついていない
今回は「デジタル技術伝承」をテーマとしましたが、デジタルかアナログかは手段の話。どのような技術を、なんのために、だれに伝えるかという目的や方針をまずはっきりと見定めた上で、デジタルツールを含めた最適な手段を選ぶことの重要性をあらためて認識する機会となりました。また、各社それぞれの取り組みも、普段なかなか知る機会はありません。共感と驚きの多い二時間となりました。