QCDとは?開発に欠かせないQCDについて基礎からわかりやすく解説

最終更新日: 2022.07.01 公開日: 2021.12.15

QCDとは

近年、製造業を中心として多くの企業が人材不足という課題に直面しています。日本の少子高齢化に伴い、今後も人材不足は更に加速していくことが予想され、企業成長には労働者1人1人の力がさらに重要になります。それぞれの労働者の能力を最大限に引き出すためには、生産や開発におけるプロセスの最適化が必要不可欠ですが、そこで鍵となるのがQCD改善です。

QCDについて耳にしたことがあっても、QCDの意味や改善方法などよく分からない方もいるのではないでしょうか?そこで本記事では、QCDの意味からその重要性・改善のポイントまで基礎からわかりやすく解説いたします。

製造業におけるQCD改善にお悩みの方はこちらの資料も参考にしてください。

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QCD(きゅーしーでぃー)の意味とは

QCDとは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字を並べた頭字語です。ほとんど全ての企業においてQCDは必要不可欠な要素であり、生産プロセスにおいて重要な3要素を示しています。

Quality(品質)

品質というと、コストや納期も含めた全体の品質を指すこともありますが、ここでいうQuality(品質)とは、製品そのものの品質を表しています。どれだけコストを下げて納期に間に合ったとしても、製品の品質が悪いことには顧客の満足を得ることはできないため、QCDの3要素の中でも最も重要な要素であり、企業成長や顧客満足度において大きな影響力をもちます。

Cost(コスト)

生産プロセスにおけるCost(コスト)とは、製品そのものの値段ではなく生産にかかる諸費用や時間をさします。品質を高くするために、むやみに最新の機械を使用したり人材を増やしたりすると、それだけコストがかかってしまい、全体としての利益を確保することができなくなってしまいます。

Delivery(納期)

Delivery(納期)とは、製品を顧客に届けるまでの納期を指します。いくら品質が高くコストを抑えることができても、顧客が提示した納期は守らなくてはいけません。
また、QCDにおける納期には、製品が完成するまでの期間や発送までのリードタイムも含まれています。製造工程を明確にして必要な工数を確認したうえで、生産が遅延した場合のリスクを加味した納期を設定する必要があります。

QCDの関係性

実は、QCDの3要素はひとつの要素を優先するとその他の要素が犠牲になってしまうトレードオフの関係にあります。

例えば、

  • 品質を向上させるにはより長い制作期間が必要になる
  • 納期を早めるにはコストがかかる

というように、QCDの3要素は独立しているものではなく、常に互いに関係しています。3要素を網羅的に考えてバランスを取ることが大切です。

生産活動のおけるQCD改善の重要性

では、QCDを改善するメリットは何なのでしょうか?ここでは3つのメリットをご紹介します。

商品の品質向上や利益率の向上

QCD改善の目的は「いかにコストをかけず、短い時間で、高品質のものを開発し顧客へ提供するのか」ということであり、これらをどのようにしてクリアするのかが企業や組織の課題となります。仮に予算を度外視して商品の品質向上にのみ注力した場合、たとえ売上が向上したとしても利益を出せなければ企業としてはいずれ立ち行かなくなってしまいます。

前述のように、QCDはそれぞれの要素が互いに影響を及ぼすトレードオフの関係性にあるため、これら三要素をバランス良く改善していくことが、結果として商品の品質向上や利益率の向上につながるのです。

生産プロセスの最適化

QCDの改善は、一つひとつの要素を個別で見直すのではなく、生産開始から出荷までのプロセス全体を改善していくことが必要となります。

例えば、属人化された作業の標準化や、原材料の見直し、機械の導入検討など、製造工程において発生する課題はすべてQCDの改善に直結しています。つまり、QCDの改善行動は生産プロセスの最適化に繋がっているのです。

他社との差別化・長期的な事業発展

QCDのバランスを保つことは前提ですが、これらの要素の中でなにを重視し優先するのかは、企業により異なります。もちろん一定水準以上の品質が保証された上で成り立つことではありますが、ターゲットとなる顧客のニーズを把握した上でQCDの改善を進めていくことは、企業のブランディングに役立ちます。

例えば、QCDの中でも納期の改善を重視した場合、他社に比べてより早い納期が実現すると、同じ商品やサービスを扱う競合に対して優位性が高まり、適正価格での販売が可能となるため、コストに見合った十分な利益を確保することができます。

また、ここで生まれた利益をさらなる納期改善のために投資していくことで、他社と差別化された自社の強みが次第にブランド化され、長期的な事業発展の好循環を作り出せるのです。

生産管理における優先順位とは

Quality(品質)が最優先

一般的には生産活動におけるQCDの優先順位は、Quality(品質)>Delivery(納期)>Cost(コスト)が基本です。

どれだけ納期が早く、コストが低くても、顧客が満足する品質でなければ意味がありません。どのような状況でも「品質ファースト」が基本となります。

状況に応じて柔軟に優先順位を考える

Quality(品質)の次の優先順位は、Delivery(納期)>Cost(コスト)が基本です。しかし納期期限や予算の関係によっては、必ずしもこの優先順位になるとは限りません。顧客の要望や状況によって、Delivery(納期)とCost(コスト)の優先順位は柔軟に変える必要があるでしょう。

生産プロセス改善の3つのポイント

それでは、QCD向上のための生産プロセスの改善は、どのように行うべきなのでしょうか?プロセス改善のための3つのポイントと合わせて解説します。

現場の意見を取り入れる

プロセス改善への取り組みは管理職が中心となるが、現場の生の声が届いていないと本質的なプロセス改善にはつながりません。
まずは実際の現場で行われている生産開始から出荷までの業務ワークフローを把握したり、現場でのヒアリングから課題を抽出することが必要不可欠です。

改善策を立て実施する

次は抽出した課題を元に、実際にQCDの優先順位を整理して改善策を立てていきます。
その際には必ず数値として計測可能な指標を作ってください。例えば顧客満足度やクレーム発生の頻度、作業ミス率などを指標にすると良いでしょう。
そうすることで、どのくらいコストの削減や納期短縮ができるのか、そのためにあらかじめ投じるべき費用があるのか、などこれらの指標をもとに改善案を立てることができるようになるはずです。
また、先に解説したQCDにおけるトレードオフの関係性を加味することも重要です。
生産プロセス改善のためにかけられるリソースは限られているため、自社の抱える課題に対してもっとも効果的な施策を選定しましょう。

継続的に効果を検証し、改善をかさねる

決定した施策は、実施するだけで終わりではなく、その施策には実際に効果があったのか、QCDそれぞれの指標にどのような変化があったのか等、必ず検証を行ってください。
検証を行うことで、成功した施策についてはさらに効果を上げる方法を、想定した効果が得られなかった場合には、その原因を掘り下げ新たな改善策を打ち出す、というようなQCD改善のサイクルを作り出すことができます。
このように、定期的に検証・改善することで常に最適化された生産プロセスを保つことができるのです。

更に広がるQCDの考え方

昨今、QCDにさらなる要素を加えたQCDSやPQCDSMEといった考え方が広まっています。

Safety(安全性)

QCDの前提としてあるのがSafety(安全性)です。労災など安全上の問題は企業にとって大ダメージとなるうえ、いくら高いレベルのQCDを兼ね備えた製品だったとしても、生産プロセスの過程で人的被害が発生しては、その製品が品質の良いものだとは言えません。
そういったことから、生産現場の安全性を保ち、従業員全員の安全を確保することが企業活動の上で最優先事項となるのです。

Service(顧客への対応)

製品販売後の顧客への十分なサービスやサポートによって顧客満足度が向上するという視点です。

Productivity(生産性)

利益を生み出すことは、企業の存続における絶対条件です。特に人材不足が叫ばれる近年では、限られた労力の中でどれだけの付加価値を生み出せるのかが重要となっており、競合他社との価格競争にも生産性は深い関わりがあるのです。このように、QCDを高めていくためにも、生産性の向上が必須となります。

Environment(環境への配慮)

SDGsが重要視されている中、企業活動においても環境への配慮の視点は無視できません。環境保全が社会全体として重要な課題となっていることを踏まえ、CO2の排出量削減への取組みなど、環境へ配慮した循環型社会の形成を促進していくことが必要となります。

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Flexibility(柔軟性)

QCDの三要素に「Flexibility(柔軟性)」の「F」をプラスしたものがQCDFです。グローバル化やデジタル化など、日々移り変わっていくビジネス環境に柔軟に対応することが求められていることから、注目されている要素のひとつとなりました。

QCDFにおいてもトレードオフの関係性は成り立っているため、柔軟性を重視しすぎた結果、コストの大幅増加や品質の低下が起こる可能性があるので、すべての要素のバランスをとることが大切になってきます。

まとめ

QCDは企業活動を行う上で重要な観点であり、QCDを意識した生産プロセスの改善は、業務の効率化に役立つだけではなく、他社との差別化や収益の増加、顧客満足度の向上に繋がります。

ただし、QCDはそれぞれの要素が互いに影響を与えるトレードオフの関係性にあるため、QCDの改善を行う際には、ひとつの要素のみではなく、3要素すべてのバランスが取れた状態を目指す必要があります。また、QCDの改善を行うためには、生産プロセス全体から現場が抱えている課題を抽出して改善指標を設定し、継続的に効果を検証していくことが大切です。

近年ではQCDに他の要素を追加したQCDSやPQCDSMEといった考え方も広まっているため、自社にとって適切な観点を洗い出すことが、プロセス最適化への第一歩と言えるでしょう。

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