人時生産性とは? 注目されている理由・改善のための施策について解説
生産性の向上が求められる昨今、人時(にんじ)生産性が注目されています。人時生産性とは、従業員ひとり当たりが1時間でどれだけの利益を生み出しているかを表す指標です。本記事では、人時生産性の計算式や労働生産性および人時売上高との違い、人時生産性を向上させる3つの方法を解説します。
目次
人時生産性とは
人時(にんじ)生産性とは、従業員ひとりが1時間でどれだけの利益を生みだしているかを表す指標です。もともと「生産性」とは、投入量に対してどれくらいの産出量であるかを示します。人時生産性は、さらに従業員ひとりの1時間に絞った生産性を表し、この数値が高いほど短時間で利益を生み出していることになります。主に飲食業や小売業などで用いられており、さらに部門ごとや売り場ごとに分類すると、より効果の高い分析が可能です。
人時生産性の算出には、以下の計算式を用います。
粗利益高総労働時間
分母の「総労働時間」には、パートやアルバイト、非正規雇用の従業員の労働時間および、時間外労働も含めます。また、分子の「粗利益高」では、売上高から売上原価を差し引いた粗利益高を用います。正しく人時生産性を算出するためには、正確な総労働時間や粗利益を把握しなければなりません。特に、さまざまな労働形態を採用している企業では、正確な総労働時間を把握するためにも、勤怠管理を徹底することが重要です。
労働生産性との違い
労働生産性とは投入した労働量に対し、どのくらいの成果を上げられたかを表す指標で、以下の計算式を用いて算出します。
産出量投入した労働量
一般的に労働生産性は、従業員数や総労働時間などの投入した労働資源に対して、従業員がひとりでどれだけの生産量を上げられたかを示し、この労働資源や生産量はやや広義的な概念として扱われます。そのため労働生産性は、労働を効率面から評価する場合に用いられることの多い指標です。一方、人時生産性は従業員ひとりの1時間当たりの粗利益を示し、労働生産性よりもさらに限定的な指標といえます。
なお、労働生産性について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
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人時売上高との違い
人時売上高とは、従業員ひとり当たりが1時間でどのくらいの売上を出したかを表す数値で、以下の計算式を用いて算出します。
売上高総労働時間
人時生産性と似た用語ですが、人時生産性が「粗利」を用いて従業員ひとり当たり1時間の生産性を算出するのに対し、人時売上高は売上にかかったコストを含めた「売上」を用いて算出します。どちらも企業が経営分析を行う際に重要な指標であり、ほかの要素も加味しながら総合的な判断をしていくことが求められるでしょう。
人時生産性が注目される背景
多くの企業で人時生産性が注目されていますが、どのような理由があるのでしょうか。近年の社会問題である、「労働人口の減少」や「労働生産性の低さ」といった観点から解説します。
労働人口が減少している
人時生産性が注目される背景のひとつが、「労働人口の減少」です。これまでも問題となっていた少子高齢化が近年さらに加速し、日本は今、人口減少時代に突入しています。内閣府の試算では、人口減少に伴い生産活動の中心である15歳~64歳の生産年齢人口も1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人に減少すると見込まれています。これは、2021年の7,450万人という数字から29.2%もの減少であり、今後さらに深刻化していくでしょう。
必ず訪れると考えられる労働人口の減少は、いずれ企業の人手不足を引き起こします。人手不足が起こると、労働環境の悪化や従業員の意欲低下、離職者の増加を引き起こし、最悪の場合、事業の縮小や倒産などのリスクも懸念されます。このような事態にならないためには、少ない従業員でも経営が成り立つような仕組みづくりが重要です。その仕組みとして、従業員一人ひとりの生産性の向上が欠かせません。人時生産性を活用することで、生産性の改善が期待されます。
生産性の向上が求められている
日本における「労働生産性の低さ」も、人時生産性が注目されている背景のひとつです。公益社団法人 日本生産性本部が2022年に公表した資料によると、2021年の時間当たりの労働生産性において、日本はODEC加盟の38か国中27位、ODEC加盟の主要先進国7か国の中では最下位であることが示されています。また、ひとり当たりの労働生産性においてもODEC加盟の38か国中29位、ODEC加盟の主要先進国7か国の中では最下位という結果です。
現状のままでは国際競争に打ち勝つ術がなくなり、政府としても生産性の改善は大きな課題として捉えています。民間でも、働き方改革が推進されていることを踏まえ、生産性向上に取り組む企業が増えてきました。業務効率化やコスト削減などを実現したうえで、生産性を上げる働き方が求められます。
参照元:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」
人時生産性を向上させる3つの方法
人時生産性を向上させるためには、まず人時生産性の計算方法に着目しましょう。人時生産性は「粗利益高 / 総労働時間」で算出されることから、粗利益高の増加や総労働時間の短縮によって向上することがわかります。この点を踏まえ、人時生産性を向上させるための3つの方法を解説します。
人材配置を見直す
総労働時間を減らすために有効な手段は、人材配置の見直しです。従業員にも業務内容の得手不得手があり、それぞれの適性に合わせた人材配置を行うことで、生産性の向上が期待できます。例えば資料作りの業務では、PC操作が苦手な従業員と得意な従業員とでは、作業効率や作業品質に大きな違いが出るでしょう。
人材配置の適正化は、生産性の観点からも重要な取り組みですが、従業員のモチベーションにも大きく影響します。業務全体を洗い出し、従業員の適材適所を行うことで労働時間の削減が見込めます。
一方、従業員の成長および社内ナレッジの蓄積を促すためには、労働時間削減だけを考慮した人材配置はおすすめできません。また、退職リスクにも対処できない可能性があります。人時生産性の明確な目標を設定し、達成のためのパフォーマンス向上につなげられるような配置を行うとよいでしょう。
業務の効率化
業務効率化も労働時間削減につなげられます。業務を効率化するには、まず業務内容を隅々まで洗い出し、ボトルネックを把握・解消することが重要です。ボトルネックとは、ボトルの首が細くなることで水の流れに差し障る事象になぞらえ、業務の停滞や生産性の低下といった問題を招いている阻害要因を指します。
業務がうまく運んでいない、もしくは大幅に時間がかかってしまっているなどの場合、すべての業務工程に問題がある場合は少なく、どこかの箇所で問題が発生していることがほとんどです。例えば、「ある工程だけに時間がかかっている」「特定の従業員にだけ業務が集中している」などが考えられます。
このようなボトルネックを把握し改善することで、業務効率の向上が期待できます。組織が抱える、さまざまな業務におけるボトルネックを解消していくことで、労働時間の削減につながるでしょう。
ツールを利用する
労働時間削減に効果的なのは、システムやITツールの導入です。これまで手作業で行っていた業務をシステムやITツールに任せることで、業務時間の短縮が期待できます。
例えば、書類管理を紙ベースなどアナログな方法で行っている場合は、ITツールを導入して効率化したり、ルール化された定型業務をRPAに置き換えたりするなどの施策が考えられます。これらのシステムを導入することで、ヒューマンエラーの抑制につながり、修正の手間も削減されます。
また、部署・部門間でチャットツールなどの同じITツールを導入することで、コミュニケーションおよび情報共有が円滑化します。ひとつの業務における労働時間削減だけではなく、社内全体の人時生産性向上に大きな効果をもたらすでしょう。
マニュアル作成ツールTeachme bizで効率化・生産性の向上を実現
業務効率や生産性の向上には、ボトルネックとなっている業務を洗い出し、業務の標準化を行うことが重要です。業務の標準化とは、従業員の誰もがいつでも同じように作業を進められるよう、業務手順を最適にしておくことです。業務を標準化できれば、業務効率や生産性の向上だけでなく、属人化の解消にもつながります。属人化が解消されれば、従業員の退職や人材不足にも対応でき、飛躍的に業務効率および生産性の向上が期待できます。
生産性向上のための業務標準化には、最適化した業務マニュアルの作成がおすすめです。業務マニュアルがあれば、業務の標準化だけでなく、人材の再配置に伴う研修などのシーンでも活用できます。とはいえ、マニュアルは作成に時間がかかるうえ、都度更新も必要です。また、時間を費やして作成したマニュアルがうまく活用されないなどの問題も起こり得ます。
このような問題を回避し、業務効率化や生産性向上に寄与するマニュアルを作成するためには、マニュアル作成ツールの活用がおすすめです。業務マニュアルを簡単に作成・閲覧・管理できるクラウド型マニュアル作成ツール「Teachme Biz」は、画像や動画をベースに、誰でも簡単にわかりやすいマニュアルを作成できます。マニュアルを見てもらうための機能も豊富で、活用状況も分析可能です。業務効率化や生産性向上への足掛かりとして、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では、人時生産性の概要や計算の仕方、人時生産性を向上させるためのポイントを解説しました。
人時生産性は、従業員ひとりの1時間当たりの成果を表すため、労働生産性よりもさらに限定的な意味で捉えられます。人時生産性が注目されている背景には、少子高齢化による労働人口の減少や、世界的に見ても低水準の日本における生産性などが挙げられます。企業が生産性を向上させるためには、人時生産性に着目し、人材配置の見直しや業務効率化、ツールの導入などの施策が必要です。
業務マニュアルを作成して業務の標準化を行うことで、業務効率の改善や生産性の向上、属人化の防止が期待できます。これらの実現により労働時間が削減されることで、人時生産性の向上につながります。