ビジネスにおけるノウハウとは? 意味や類義語・共有の方法を簡単に紹介
企業が参入市場における競争優位性を確立するためには、競合他社との差別化を実現する顧客体験価値を創出しなくてはなりません。その付加価値を生み出すうえで欠かせない経営資源のひとつが「ノウハウ」です。本記事ではノウハウの重要性や組織内で共有するメリット、共有方法などについて詳しく解説します。
目次
ノウハウの語源は?
ノウハウとは、専門性の高い技術や実践を経て獲得した知見を指します。英語で「知る」や「わかる」を意味する「know」と、「どのように」や「どんな方法で」と和訳される「how」を組み合わせた「Know-how」が語源です。
詳しくは後述しますが、事業領域におけるノウハウとは、専門的な分野に関する知見や体験を通じて得た技術、創作物やアイデアのような知的財産、秘匿措置の取られている営業秘密などが該当します。
ビジネスにおけるノウハウとは?
事業領域におけるノウハウとは、「専門知識・技術」「知的財産」「営業秘密」という3つの要素を指すのが一般的です。
業務上で得られた専門知識や技術
ビジネスシーンでは、さまざまな事業活動を通して専門知識や技術が蓄積されていきます。
たとえばマーケティング業務における市場分析の手法やインターネット広告の運用方法、アプリケーション開発のプログラミングスキルやフレームワークの実装方法、営業活動におけるアプローチの手法や商談を成約に導くクロージングの流れなどです。
こうした専門知識や技術は論理だけではなく、経験を通して習得されるものであり、言語化・数値化が困難でマニュアルに落とし込みにくいという特徴があります。ノウハウは市場での競争優位性を確立するために欠かせない経営資源であり、いかにして蓄積された専門知識や技術を全社的に共有するかが重要な経営課題です。
企業に利益をもたらす知的財産
事業活動や業務プロセスの過程において、財産的な価値を有する情報やアイデアが生み出されます。それらを総称して知的財産と呼びます。主な知的財産として挙げられるのが、特許権や意匠権、商標権、著作権、育成者権、商号、実用新案権、地理的表示、回路配置利用権などです。
発明や商号、デザインなどは第三者による模倣が容易であるという性質をもつため、創作者の権利を保護するために知的財産権制度が設けられています。このような知的財産権は組織に利益をもたらす極めて重要な経営資源であり、企業が発明・考案した商品や著作権なども広義ではノウハウに含まれます。
法的に保護される営業秘密
不正競争防止法の保護を受ける営業秘密もビジネスにおけるノウハウに該当します。不正競争防止法は企業の利益と公正・公平な競争秩序を維持するための法律です。同法に基づく営業秘密として管理されている情報が不正な被害に遭った場合、被害者は侵害者に対して損害賠償の請求といった措置を取ることができます。
営業秘密として挙げられるのは、顧客情報、財務情報、会計情報、人事考課情報、製品開発情報、マニュアル、設計図、研究データなどです。営業秘密は特許権や商標権のように法的な登録は必要ありませんが、一部の従業員しか知らない情報であることが多く、秘密を保持するための適切な対策を講じる必要があります。
ビジネスでノウハウと言い換えができる類義語
ここではビジネスシーンにおけるノウハウの類義語を紹介するとともに、それぞれの定義の違いについて解説します。
知識や情報を意味する「ナレッジ」
ナレッジとは、英語の「knowledge(知識)」に由来する概念であり、学習や会話などのプロセスを通して習得した情報を指します。ビジネスシーンでノウハウとナレッジは類義語として扱われるものの、厳密にいえばそれぞれの定義は異なります。その決定的な違いとして挙げられるのが体験や実践の有無です。
先述したように、ノウハウは体験や実践を通して獲得した知見や高度な技術を意味します。一方でナレッジは書籍による学習や第三者から得た知識など学問的なプロセスで得た知識・情報を意味し、必ずしも体験的・実践的な意味合いを備えてはいません。
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基礎的な技術を意味する「ハウツー」
ハウツーは英語の「how to(〜するための方法)」を語源とし、基礎的な技術というニュアンスで用いられる概念です。具体的な例としては、手順を教えるガイドブックや手続きの手引きなどがハウツーに該当します。ハウツーもノウハウの類義語ですが、ハウツーは初心者向けの手順・方法を指し、ノウハウは実践的な知見・技術を意味する点が大きな違いです。
たとえばWeb制作において、ハウツーはWebサイトの基本構造やSEOの必要性、HTMLとCSSの役割といった基礎的な知識や情報を指します。一方でWeb制作におけるノウハウとは、ワイヤーフレームの導線設計やレスポンシブデザインを実装するソースコードの書き方、アクセス解析によるユーザー動向の分析、UI/UXデザインといった専門的な知見や技術を意味します。
技術を意味する「スキル」
スキルは英語の「skill(技術)」を由来とする概念であり、「技能」や「技量」を意味します。たとえば学習や訓練を通して獲得した高度な技術、あるいは経験や努力の積み重ねによって体得した独自の製法などです。スキルもノウハウの類義語ですが、ナレッジやハウツーと同じく厳密な定義は異なります。
スキルは「個人が有する技術」に焦点が当たっているのに対し、ノウハウは「知的財産」や「営業秘密」なども含まれるため、より抽象度が高く広範な意味合いを含む概念です。また、スキルは他者との共有や第三者による模倣が困難な暗黙知の性質をもちますが、ノウハウは共有や模倣が可能であり、スキルと比較すると形式知に近いという点が異なります。
ノウハウを社内で共有するメリットは?
ノウハウを体系化して組織内で共有することで、以下に挙げる4つのメリットを享受できます。
企業の生産性がアップする
ノウハウを共有するメリットは組織全体における生産性の向上です。生産性はリソースの投入量に対する産出量の割合であり、「産出量÷投入量=生産性」の計算式で算出されます。実用的な技術や実践的な知見を全社的に共有することで従業員のスキルや業務効率が向上し、労働投入量を抑えつつ産出量を最大化できる可能性が高まります。
また、経験の浅い人材の育成効率が高まるため、人材育成に要するコストを削減しながら、従業員一人あたりの生産性向上につながる点も大きなメリットです。
業務の属人化を解消できる
企業にとって重要な経営課題のひとつは属人化の解消です。属人化とは、特定の業務が専門知識や技術を有する個人に依存している状態を意味します。高度な専門性を備える従業員は重要な経営資源であり、独自の付加価値を創出するうえで欠かせないリソースです。
しかし、その人物が不在の場合、業務の遂行そのものが困難になるリスクが内在しています。体系化されたノウハウを全社的に共有できれば、業務の属人化を解消する一助となり、製品やサービスの品質を一定に保てる点がメリットのひとつです。
知的財産を企業ブランディングに活用できる
現代は市場の成熟化に伴ってプロダクトのコモディティ化が加速しているため、さまざまな産業で競合他社との差別化が重要な経営課題となっています。事業活動を通して生み出された情報やアイデアは財産的な価値を有する無形資産であり、企業のブランド価値向上につながる重要度の高い経営資源です。
また、独自のノウハウを必要に応じて開示することで市場の活性化につながるとともに、その分野におけるイノベーションの創出と優越的地位の確立に寄与するというメリットもあります。
ノウハウを常にアップデートできる
近年、デジタル技術の進歩・発展とともに市場の変化が加速しており、現代は先行きが不透明で将来的な予測が困難な時代へと変遷しています。このような社会的背景も相まって顧客や消費者のニーズは多様化かつ高度化し、ノウハウが陳腐化する速度も早まりつつあるのが現状です。
ノウハウを共有できれば異なる部門や複数の従業員が共通の認識をもてるため、新たな洞察やアプローチが生まれやすくなります。集団的知性によるノウハウの継続的なアップデートが期待でき、時代の変化に柔軟に対応できる可能性が高まります。
ノウハウを社内で共有する方法
ノウハウの全社的な共有を実現するためには、以下に挙げる3つの施策を推進する必要があります。
1.体制を整える
ノウハウという経営資源を戦略的に活用するためには、全社レベルで施策を推進する体制を整えなくてはなりません。そのためにはノウハウを蓄積・共有する目的、ナレッジを取捨選択する際の基準や優先順位、または属人的なスキルを形式知へと変換する重要性などを明確化し、そのビジョンを組織全体で共有するプロセスが必要です。このプロセスを経ることでノウハウの戦略的活用に向けた意義や方向性が具体化され、現状における課題が明確になるとともに、自社に必要な施策を立案・策定する一助となります。
2.活用システムを整える
専門性の高い技術や実践的な知見を全社レベルで効率的に運用するするためには、情報の蓄積や共有に特化したITシステムの導入が求められます。代表的なソリューションとしては、ナレッジの蓄積・共有・検索を得意とする情報ストックツール、ハウツーの体系化に活用できるマインドマップやロジックツリー、ノウハウ・スキルの標準化や形式知への変換を支援するタレントマネジメントシステムなどが挙げられます。
3.PDCAサイクルを回せる仕組みを整える
ノウハウの共有を推進する際は、PDCAサイクルの仕組みを整える工程が極めて重要です。消費者の需要や市場は常に変動しており、社会情勢や経済動向の変化に伴ってノウハウも陳腐化する可能性があります。そのため、「Plan(計画)」→「Do(実行)」→「Check(評価)」→「Action(改善)」のサイクルを回し、ノウハウのアップデートを図る継続的な改善が必要です。また、知的財産の価値向上や営業秘密の保護を推進するためにも、ノウハウを管理する「組織・人材開発部」のような部署の設置が推奨されます。
ノウハウを社内で共有するためのポイント
組織内でノウハウを共有する際は、以下に挙げる3つのポイントを意識することが大切です。
ナレッジマネジメントを行う
ナレッジマネジメントとは、企業が保有する情報や従業員がもつ知識などを管理し、事業活動に活用する経営管理手法です。
たとえばトップセールスを誇る営業担当の交渉や商談の進め方、コミュニケーションのポイント、アポイントメントの取り方といったノウハウ・スキルをナレッジに変換します。これを形式知としてデータベースに蓄積できれば営業部門全体の業績向上と人材育成の効率化が期待できます。また、こうした特殊なスキルや高度なノウハウをナレッジとして共有することで、業務の属人化を解消できる点もメリットのひとつです。
ノウハウをマニュアル化する
ハイパフォーマーが有するノウハウやスキルをナレッジに変換できたなら、次はその知識・情報をマニュアルに落とし込む工程が必要です。先述した営業担当の例でいえば、クロージングのプロセスをテンプレート化する、プレゼンテーションの構成を動画マニュアルにまとめる、クレームやトラブル対応のハウツーをテキスト化するなど、図解や動画を用いてマニュアル化します。言語化・数値化が困難な暗黙知を可視化しやすい形式知へと変換し、マニュアルに落とし込むことでノウハウやスキルの全社的な共有が実現します。
ツールを活用する
自社のリソースでマニュアルを作成する場合、高度なスキルを有する人材と相応の制作期間を必要とします。マニュアルの作成は極めて重要な業務ですが、経営資源には限りがあるため、本来であればそのリソースは業績向上に直結するコア業務に注力すべきです。そこでおすすめしたいのが、マニュアル作成システム「Teachme Biz」の導入です。
Teachme Bizはビジュアルベースの高品質なマニュアルを簡単に作成できるとともに、ノウハウの蓄積・管理・共有・更新の効率化を支援します。マニュアル作成の負担を軽減し、制作業務におけるリソース投入量を最小限に抑えたい方はTeachme Bizの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
ノウハウとは、専門性の高い技術や実践的な知見を指す概念です。ノウハウを体系化して共有できれば、生産性の向上や属人化の解消といったメリットを享受できます。経営基盤の総合的な強化を図るためにも、ノウハウを蓄積・共有する仕組みの整備に取り組んでみてください。