ホテル業界の離職率が高い原因|改善方法や使えるツールを紹介

最終更新日: 2023.08.24 公開日: 2023.08.09

ホテル業界 離職率

ホテル業界の離職率は高く、それゆえに焦りを感じているホテル経営者も少なくないと考えられます。離職率が高い原因を把握し、適切な対策をとることで状況の改善が可能です。本記事では、ホテル業界の離職率が高い原因や具体的な改善方法について解説します。

厚生労働省のデータから見るホテル業界での離職率

厚生労働省が公開している「令和3年雇用動向調査結果の概況」を参照してみましょう。同資料によれば、宿泊業・飲食サービス業の令和3年における入職率は23.8%、離職率は25.6%となっています。つまり、入職者より離職者のほうが多い状況です。

なお、この数値がどれほど高いのかと言えば、同資料で取りあげている全産業のなかでもっとも高い数値です。次点で生活関連サービス業・娯楽業の22.3%、サービス業(ほかに分類されないもの)が18.7%となっています。

不動産業・物品賃貸業の離職率が11.4%、運輸業が11.5%、製造業が9.7%の数値です。こう見てみると、いかにホテル業界の離職率が高いかが分かります。

参照元:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」

ホテル業界の離職率が高い原因とは?

ホテル業界の離職率が高いことには理由があります。代表的な原因としては、慢性的な長時間労働や少ない休日、有給取得率、賃金の低さ、需要増加に伴う人材難、業務負担の大きさなどが挙げられます。

長時間労働である

ホテルの離職率が高い原因として、慢性化している長時間労働が挙げられます。多くのホテルは24時間365日営業しており、従業員の労働時間が長くなりやすい傾向があります。ただでさえホテル業界は人手不足であるため、少ない人員で業務を遂行しなくてはならず、長時間労働が当然のようになっているケースも珍しくありません。

また、夏休みやゴールデンウィーク、年末年始などの繁忙期には、大勢の人がホテルを利用します。繁忙期には業務が増加するため、連日残業が発生することもあります。

慢性的な長時間労働に加え、勤務が不規則になりがちなのも離職率が高い理由です。ホテルの多くはシフト制を採用しているため、早朝勤務や夜勤も発生します。昼間に寝て夜中に働くスタイルになかなか慣れず、心身を疲弊して離職を決意する、といったケースは十分考えられます。

休日数が少ない

ホテルをはじめとした宿泊施設は、年中無休で営業しているところが多いため、従業員の休日も必然的に少なくなりがちです。土日や祝日などは多くの来客があるため休めず、ゴールデンウィークや年末年始など繁忙期も同様です。週に1~2日の定期的な休日はあるものの、平日にしか休めなかったり、連休を取得できなかったりといったことも珍しくありません。

厚生労働省が公開している「平成30年就労条件総合調査の概況」に目を通してみましょう。同資料によれば、宿泊業・飲食サービス業の平均年間休日総数は97.1日となっています。これだけでは多いのか少ないのか判断しかねるため、比較対象をいくつかピックアップします。例えば、電気・ガス・熱供給・水道業は116.8日、製造業は111.4日、建設業は104日であり、100日を切っているのは宿泊業・飲食サービス業のみです。

このように、他業種と比較してもホテル業界の休日が少ないのは明らかです。家族や友人と休日をあわせたい、連休をとりたいと考える人であれば、こうした状況に嫌気がさし職場を去っても不思議ではありません。

参照元:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査の概況」

有給取得率が低い

有給取得率の低さも、ホテル業界の離職率が高い原因の一つです。有給休暇は労働者に認められた権利であるため、条件を満たした労働者なら誰でも取得は可能です。しかし、ホテル業界の場合、職場の状況的にそれが難しいといったケースがよく見受けられます。

有給の取得が難しい理由の一つが、職場の人手不足です。少ない人員で何とか業務を遂行しているような状況では、なかなか有休を取得させてほしいと言い出せません。厳しい状況下で無理に取得しても、ほかの従業員から白い目で見られたり、嫌味を言われたりして職場の雰囲気が悪くなるおそれがあります。

実際、ホテル業界の有給取得率がどれほど低いのかは、厚生労働省が公開している「令和4年就労条件総合調査の概況」からも一目瞭然です。同資料によれば、宿泊業・飲食サービス業の有給休暇取得状況、平均取得率は44.3%に留まっています。この数値は、資料で取りあげられている全業種のなかで最下位です。

例えば、電気・ガス・熱供給・水道業は71.4%と高い数値を記録しており、製造業も62.6%、医療・福祉も60.3%となっています。

参照元:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」

賃金が低い

賃金の低さに嫌気がさし、離職を決意する人は少なくありません。ホテル業界の離職率が高い原因の一つも、賃金の低さです。国税庁長官官房企画課が公開している「民間給与実態統計調査(令和3年)」、「業種別の平均給与」によると、宿泊業・飲食サービス業の年収は260万円となっています。これは、全業種のなかでもっとも低い年収です。

もっとも年収が高かったのは、電気・ガス・熱供給・水道業の766万円、次いで金融業・保険業の677万円、情報通信業の624万円、学術研究・専門・技術サービス業・教育・学習支援業の521万円と続きます。宿泊業・飲食サービス業の次に低いのは農林水産・鉱業ですが、それでも310万円と300万円は超えています。賃金の低さはダイレクトに生活へ影響を与えるため、離職を決意する理由としては妥当です。

参照元:国税庁「民間給与実態統計調査(令和3年)」

需要が増加している

東京オリンピックの開催が決まったタイミングから、東京を中心に多くのホテルが建設されました。インバウンド対応のホテルが急増したことで、人材の奪い合いになっているのが現状です。

一時は、新型コロナウイルスの感染拡大により、ホテル業界は壊滅的なダメージを受けました。しかし、コロナ禍は収束しつつあり、最近では再び外国人観光客も増えています。今後は、さらに多くの外国人観光客が戻ってくると考えられるため、それを見越して多くのホテル事業者が人材の確保に動いています。

人材を確保するため、魅力的な待遇や条件を提示するホテルも少なくありません。労働者としても、同じ時間働くのなら少しでも条件、待遇がよいところを選びたいのが普通です。その結果、従業員が職場を離れて競合のホテルで働き始める、といったことも考えられます。

業務の負担が大きい

業務負担の大きさも、ホテル業界における離職者の増加に拍車をかけています。ホテル業界は慢性的な人手不足に陥っているため、限られた人員で業務を回しているホテルも少なくありません。最小限の人員で業務を遂行するとなれば、必然的に個々の従業員へ過度な負担がかかります。

ただでさえ、ホテルの従業員はさまざまな業務を遂行しなくてはなりません。配属されている部門によっても異なりますが、予約の受け付けや案内といったフロント業務をはじめ、ハウスキーパーやルームサービス、セールスなどの業務があり、複数の業務を1人が掛け持ちするケースもあります。

あまりにも心身に過度な負担が生じている状態で勤務し続ければ、離職を決意しても何ら不思議はありません。1人あたりにのしかかる負担が大きい割に給与は低く、しかも休みも取れないとなれば、離職を考える人が増えるのも自然です。

ホテル業界の離職率の高さを改善する方法

ホテル業界の離職率を改善したいのなら、従業員が快適かつ長く働きたいと思えるような環境や体制の構築が不可欠です。また、IT化やDX推進に取り組み業務を効率化する、人材教育方法を見直す、マニュアルを整備するなども離職率改善に有効です。

待遇を改善する

まず取り組むべきは、従業員の待遇改善です。ホテル業界は、仕事が過酷なわりに給与は低く、休日も少ないといった職場が少なくありません。このような環境で喜んで働く人はまずいないと考えられるため、離職率を引き下げたいのなら待遇の改善に取り組みましょう。

給与の大幅なアップがもっとも効果的だと考えられるものの、あまり現実的ではありません。ひとつのアイデアとしては、休館日の導入が挙げられます。休館日の導入によって従業員は心身ともにリフレッシュでき、働きやすさが向上することで組織に対する愛着心や従業員満足度が高まると考えられます。

また、従業員に十分な休息時間を与える勤務間インターバル制度を導入するや、年次有給休暇を取得しやすいよう取り組みを始める、なども離職率低下に有効です。若いスタッフが有給休暇を取得しやすいよう、上司が率先して取得するような取り組みも良いかもしれません。

業務のIT化・DXを推進する

業務のIT化や、職場のDX推進が離職率の低減につながります。ITツールやDX推進への取り組みを進めれば、効率よく仕事を遂行できる環境が整うため、生産性も向上します。効率よく業務を遂行できるようになった結果、これまでよりも少ない人員で同じボリュームの仕事をこなせるようになるのがメリットです。

IT化やDX推進を始めたいのなら、すでに取り組みを始めている同業他社を参考にするのもひとつの手です。ひと口にIT化といっても、単にITツールを導入するだけではそこまで成果は期待できません。導入するツールを慎重に選定するのはもちろん、適切に運用して初めて成果が期待できます。

外国人従業員の雇用を促進する

近年、コンビニやスーパーなどで働く外国人の姿を頻繁に目にするようになりました。日本で職を探している外国人は大勢いるため、こうした人材を活用しない手はありません。

外国人を採用するメリットは、外国人宿泊客へのスムーズな対応が可能になる点です。アメリカや中国など、さまざまな国籍の外国人を従業員として採用すれば、同じ母国の人が宿泊に訪れたとき適切な対応ができます。

外国人従業員を採用する際には、在留資格の有無を忘れず確認しましょう。在留資格がない外国人を採用してしまうと、雇用した側も罪に問われます。また、取得している在留資格によって、任せられる業務が変わってくるため注意が必要です。さらに、外国人を採用するときは直接雇用に限られている点も覚えておきましょう。

人材教育方法を見直す

離職率が高い理由は、人材の教育方法に問題があるのかもしれません。例えば、上から一方的に指示を出すだけで指導らしい指導をしないことや、適切なフィードバックをしていない、どの従業員にも同じ教育を行っている、といったケースでは、離職率が高くなるかもしれません。

人材教育への取り組み方ひとつで、離職率の低下につながります。個々の従業員にマッチした教育を行うのはもちろん、一緒に目標設定をしたうえで評価、フィードバックを行えば、従業員は自身の成長や不足している部分を実感でき、仕事に対するモチベーションアップも実現できます。

また、人材教育に力を入れることで、顧客に対するサービス品質向上につながるのもメリットです。サービス品質が向上すれば、お客様から直接お褒めの言葉をいただく機会も増え、さらにモチベーションがアップするというよい循環が生まれます。

マニュアルの作成を行う

マニュアルの作成も、ホテルの離職率改善に有効です。業務の流れや注意点、取り組み方などを網羅したマニュアルがあれば、従業員はそれに基づき業務を遂行できます。仕事中に分からないこと、不安なことがあってもマニュアルさえ開けば解決できるため、落ち着いて仕事に取り組めます。

マニュアルの整備は業務効率化にも有効です。もっとも効率よく業務を遂行できるモデルケースを策定し、共有することで業務の標準化と効率化を図れます。業務を効率よく遂行できるようになれば、従業員にのしかかる負担が減少し、離職率低減につながります。

また、マニュアルの整備によって、従業員の育成コストも削減できます。良質なマニュアルを作成しておけば、大掛かりな研修を行わなくても効率よく従業員の育成が可能です。育成コストを削減しつつ、短期間で従業員を戦力化する効果も期待できます。

ホテル業界の業務改善に使えるツール

自動チェックイン機

自動チェックイン機の導入によって、フロントのチェックイン業務を自動化できます。自動チェックイン機は、顧客が自ら操作してチェックインやチェックアウトを行う機械であり、現在ではさまざまな宿泊施設で目にするようになりました。

フロントの混雑を回避でき、本当に困っている顧客や急いでいる人への対応が可能になるのもメリットです。また、多言語対応できる機種であれば、外国人観光客も安心して受け入れられます。

ホテル管理システム(PMS)

ホテル管理システムとは、ホテル運営におけるさまざまな情報を一元的に管理するシステムです。Property Management Systemを略してPMSとも呼ばれるシステムで、予約受付や自動部屋割り、売掛管理、客室清掃管理、データ分析といったさまざまな機能を実装した製品が多くを占めています。

部屋の空き状況にあわせて自動的に部屋を割り振れるため、業務効率化に有効です。また、顧客管理機能を実装した製品であれば、自動的にリピート客を判定して適切なフォローを行ってくれます。製品によっては、自動チェックイン機や会計システム、SNSのアカウントなどとの連携も可能です。

鍵管理システム

鍵管理システムとは、専用アプリなどをルームキーとして使用できるシステムです。顧客はスマートフォンで簡単に施錠と解錠ができ、物理鍵を紛失するおそれがありません。ホテル側としては、フロントで顧客へわざわざルームキーを渡す手間が省け、フロント業務の効率化につながります。

チェックイン機と連携できるシステムであれば、無人フロントも夢ではありません。顧客は自ら端末を操作してチェックインを行い、自身のスマートフォンにインストールしたアプリで部屋に入れるため、フロント業務の削減が可能です。

清掃ロボット

ホテルにおける過酷な業務のひとつが客室の清掃です。顧客がチェックアウトしたあとの部屋を、次に使う人のために素早くきれいにしなくてはならず、繊細さと体力が求められる仕事です。

清掃ロボットを導入すれば、効率的に客室の清掃を行えます。実際、掃除ロボットを導入しているホテルもあり、客室清掃員が不足している問題を解決しています。薄型設計の掃除ロボットであれば、ベッドの下など人の手が届きにくいところも丁寧に掃除できるためおすすめです。

ホテル業界の離職率低下にはTeachme Bizがおすすめ

「Teachme Biz」は、伝わりやすいマニュアルを簡単に作成、共有できるツールです。テンプレートが用意されているため1から作る必要がなく、画像や動画を用いたステップ構造のマニュアルを作成できます。16言語に対応できる自動翻訳機能も実装しているため、外国人従業員を採用した際も安心です。

優れたマニュアルを作成しても、従業員に使ってもらえなければ意味がありません。同ツールには、活用状況の確認と分析を行える機能が実装されているため、効果的なマニュアルの運用が可能です。特定の従業員がマニュアルをどこまで読み進めたのか、トレーニングの進捗はどうかといったことも管理者は把握でき、効率的に人材を育成できます。

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まとめ

ホテル業界の離職率が高い原因は、賃金や有給取得率の低さ、休日の少なさなどが挙げられます。原因を理解したうえで適切な対策を打ち出し、離職率を引き下げるべく取り組みを進めましょう。マニュアル整備による業務効率化も、離職率改善に有効です。

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