ECRS(イクルス)とは?改善の4原則やメリット、事例などを解説!

最終更新日: 2024.08.07 公開日: 2024.03.15

ECRS(イクルス)とは?改善の4原則やメリット、事例などを解説!

事業活動において生産性の向上は重要な経営課題であり、そのためには業務プロセスの改善は欠かせません。「ECRS(イクルス)」は、業務改善で重要な役割を担うフレームワークのひとつで、多くの企業で導入されています。本記事ではECRSの概要や具体的な事例、活用するメリットなどについて解説します。


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ECRS(イクルス)とは?

「ECRS」は「Eliminate(排除)」「Combine(結合)」「Rearrange(入れ替え)」「Simplify(簡素化)」の頭文字をとった略称です。業務改善における指針として用いられるフレームワークであり、「ECRSの4原則」や「業務改善の4原則」とも呼ばれます。

ECRSでは、より大きな改善効果が期待され、不要なトラブルを避けるために、

  1. 不要な業務を排除する(Eliminate)
  2. 複数の業務を結合する(Combine)
  3. 業務の手順を入れ替える(Rearrange)
  4. 業務を簡素化する(Simplify)

の順番で検証・改善の実施を進めることが重視されています。ECRSは、さまざまな産業や職種に応用でき、業務改善におけるマイルストーンとして設定されることもあります。

ECRSの改善の4原則と具体例

ここでは、ECRSの各要素の基本的な考え方と具体的な事例について解説します。

必要かどうか見極める:Eliminate(排除)

Eliminate(排除)は、業務の目的を洗い出すことによって、本来は不要であるはずの工程やタスクを取り除き、業務改善を図るアプローチです。例えば、

  • 議題のない定例会議や慣例となっているミーティング
  • 形骸化している報告書の作成

などの業務の無駄を排除すれば、タスクの工数や人的資源の投入量を削減できます。Eliminate(排除)の検証は、多くのコストや手間をかけることなく実行できる点がメリットのひとつです。

似ている業務をひとつにまとめる:Combine(結合)

Combine(結合)の目的は、複数の業務や類似するタスクを一元化し、ひとつの業務として結合することです。例えば、

  • 複数の部署が実施している類似業務を一本化する
  • 各部門が別々に実施している調査案件を共同プロジェクトにまとめる
  • ITシステムをひとつのプラットフォームに統合する

といったことがCombine(結合)に該当します。類似するタスクを一本化できれば、業務の遂行に割り当てる人的・物的資源を削減することが可能で、さらに空いた資源を業績向上に直結するコア業務に集中できるというメリットもあります。

プロセスの見直しを行う:Rearrange(入れ替え)

Rearrange(入れ替え)の目的は、作業の順序や環境、タスクの担当者などを入れ替えることによって業務の合理化を図ることです。例えば、

  • 作業工程の順番の入れ替え
  • 設備機器の配置転換
  • 担当者の入れ替え
  • ルート営業の順番変更
  • 紙媒体によるアナログな稟議のデジタル化

などがRearrange(入れ替え)の施策例として挙げられます。業務の順番や担当者などを変えるのが難しい場合は、既存の業務を見直すことで業務改善につながる可能性があります。Rearrange(入れ替え)によって新しい視点やアイデアが生まれやすくなることもあり、結果的に業務改善や課題解決の促進につながります。

誰でもできる状態にする:Simplify(簡素化)

Simplify(簡素化)の目的は、タスクの自動化や作業工程のパターン化を推進し、業務の複雑性を排除することです。例としては、

  • AIによる検品作業や設備保全の自動化
  • マクロ機能によるタスクの自動処理
  • マニュアル作成による業務の標準化
  • IoTによる監視業務のオートメーション化

といったことが挙げられます。Simplify(簡素化)を実施するメリットは、業務の属人化を防止し、人材不足の解消につながる点にあります。複雑化していた業務を簡素化することによって誰もが取り組めるようになり、より少ない人的資源で従来と同等以上の付加価値や生産量を創出できるようになります。

業務改善でECRSを活用するメリット

業務改善を推進する際にECRSを活用するメリットには、コストの削減、属人化の解消、生産性の向上、ミスの低減などがあります。

コストを削減できる

ECRSの4原則によって業務改善を推進すれば、不要な業務の排除や特定タスクの自動化による人的資源の削減が可能で、人件費や福利厚生費などのコストが抑えられます。また、類似業務を結合すれば、必要なITシステムや設備機器の総数が減少し、ハードウェアの保守・運用や設備保全の管理コストを削減することが可能です。さらに削減分のリソースを新規事業やコア業務に充てることで、経営基盤の総合的な強化が期待できます。

属人化を解消できる

ECRSの活用は、業務プロセスを調査・分析し、タスクの順番を入れ替えて、効率化を図ったり、ITシステムの導入で特定作業を簡素化して、属人化を解消したりする一助となります。例えば製造分野では、手作業による製品の組み立てや伝統工芸技術にもとづく製品の加工など、熟練工の属人的なスキルに依存する業務が少なくありません。こうした業務を調査・分析して合理化を図りながらナレッジも蓄積できれば、業務の標準化と生産性の向上、両方の実現が期待できます。

無駄を省いて生産性を向上できる

ECRSの4原則である業務の排除・結合・入れ替え・簡素化によって得られるメリットが生産性の向上です。生産性とは、産出量に対して投入した経営資源の割合を示す指標であり、「産出量÷投入量=生産性」で表せます。

ECRSを活用すれば、タスクの効率化や作業の合理化を図り、従来と同等以上の産出量を確保しながら、人的・物的資源の投入量を削減することが可能です。先述したように、削減した経営資源は新規事業やコア業務に充てられるため、組織全体での生産性の向上も期待できます。

ミスを防ぎやすくなる

ECRSの活用には、ヒューマンエラーの防止というメリットもあります。不要なタスクの削除や重複している業務の結合、順序の入れ替えによる合理化、作業のマニュアル化や自動化は、業務を簡素・標準化し、業務量は削減されるため、人為的なミスの低減につながります。

業務量が削減され、人為的なミスが減れば、従業員の心理的負荷も軽減されます。業務に対するストレスや疲労の蓄積が抑えられることにより、従業員エンゲージメントの向上が期待でき、離職率や定着率の改善にもつながります。

業務改善でECRSを活用する際のポイント

ECRSの4原則を活用する際には、目的や方法の明確化、長期計画の立案、他部署との協力体制の整備、従業員からの理解の四つがポイントになります。

目的ややり方を明確化する

ECRSの4原則を実施する際は、目的を明確にし、具体的なKPIを設定することが重要です。例えば「オウンドメディアの運用成果を改善する」という目的を設定した場合には、目的実現のための施策を言語化し、KPIに落とし込んで、具体的な行動計画を立案・策定しなければなりません。上記のオウンドメディアを例にすれば、設定すべきKPIは、

  • 不要なページの削除
  • 類似する記事の一般化(リライト)
  • 視線誘導を意識したコンテンツの再配置
  • シンプルなUI/UXデザインへの変更

などが考えられます。目的を明確化することによって業務改善の方針が定まり、具体的な行動計画を立案できるようになります。

成果が出るまでの長期的な計画を立てる

ECRS4原則を実施する目的は、業務改善、生産性向上、コスト削減などですが、そのための具体的な施策は、実施後に即成果が出るタイプのものばかりはなく、中長期的な視点にもとづいて計画を立案・策定しなくてはなりません。計画を立案・策定するうえでは、事業活動に与え得るリスクや従業員への負担なども考慮する必要があります。そして忘れてはならないのが、単に施策を実践するだけでなく、組織全体で業務改善の推進にあたるという企業文化の醸成です。

各部署との協力体制を整える

ECRSで業務改善を図る場合には、部署の垣根を越えた協力体制が必要です。例えば製品の品質改善を目指す場合、購買部門や生産部門、物流部門、販売部門など、サプライチェーン全体を横断した情報共有と業務連携が欠かせません。特定の部署のみで業務改善を推進しても、他の部門が有する重要な情報や洞察を共有できず、組織にとって有害な局所最適化が生じるリスクがあります。全社横断的な協力体制を整備できれば、組織全体で同じビジョンを共有しながら、業務改善を推進できます。

従業員からの理解を得る

部署間での協力体制と同様に重要なのが、業務改善に向けたビジョンをすべての従業員が共有することです。人間には現状維持バイアスと呼ばれる心理作用が備わっており、多くの人々は未知のものや変化を望みません。例えば、属人化している業務の改善を図る場合、当該業務の担当者からは協力的な反応が得られないかもしれません。このような場合でも、業務改善に向けたビジョンを丁寧に説明し、属人化の解消に関する当該従業員からの理解を得ることが重要です。加えて、業務改善後の人材教育の仕組みや研修制度の整備を推進することも大切です。

業務改善に成功した企業事例

ここではECRSの4原則を活用して業務改善を実現した企業の取り組み事例を2件紹介します。

マニュアル作成で作業の効率化・標準化を実現

食料品・日用品のハードディスカウントストア(販売品目を絞り込み、徹底したコスト削減で、超安値を実現するディスカウントストア)を展開する株式会社ビッグ・エーでは、業務の効率化と標準化が重要な経営課題となっていました。そこで同社では、マニュアルの作成を推進したものの、紙媒体のマニュアルでは技術や手順の変更にともなう改訂が難しく、情報の検索にも手間を要するという問題がありました。このような背景から同社が選択したのが、マニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」の導入です。

Teachme Bizでは、クラウド上のプラットフォームでマニュアルの作成・共有を一元化できるため、ペーパーレス化の推進だけでなく、情報のリアルタイム性や検索性の向上にも大きく貢献します。Teachme Bizの導入によって新人研修の期間は14日間から10日間に短縮され、年間で16,000時間の研修時間の削減を実現しました。同社の施策は、紙媒体によるマニュアル作成を「Eliminate(排除)」するとともに、デジタル化によって運用管理を「Simplify(簡素化)」した事例です。

関連記事:年間16,000時間の研修時間削減!「小売りは人なり」を実現する近道に

業務の置き換えで時間的・精神的負担を軽減

システム開発やITインフラの導入支援などを手掛けるE-STAGE(THAILAND)CO.,LTDでは、テレワーク制度の導入による各種申請手続きの対応業務が大きな負担となっていました。テレワーク環境ではコラボレーションツールのアカウント発行や、外部環境から社内LANへアクセスする際の権限の申請などが必要です。同社ではこうした申請手続きがフロー化されておらず、申請方法や申請先の問い合わせが急増していました。

そこで同社ではTeachme Bizを活用してマニュアルを作成・共有することで、各種申請手続きに関する問い合わせ対応の負担の大幅軽減に成功しました。同社の施策は、申請手続きの問い合わせに関する直接的な対応と、マニュアルによる間接的な対応を「Combine(結合)」した事例です。さらに、アナログ形式の申請手続き対応をデジタル上のプラットフォームに「Rearrange(入れ替え)」したことで、従業員の時間的・精神的な負荷を軽減した事例でもあります。

関連記事:「本帰国前に、拡大するスタッフ間の業務量の差を解消したかった」 Teachme Bizでマニュアル化したら3人分の作業が2人で完結!

ECRSのフレームワークが業務改善の近道に

業務改善で活用されるフレームワークであるECRSは、「不要な業務の排除」→「複数の業務を結合」→「手順の入れ替え」→「業務の簡素化」の順番で検証することで、作業の効率化やタスク処理の合理化を図ることができます。「コスト削減」「属人化の解消」「生産性の向上」「ミスの防止」などのメリットがありますが、活用時には目的を明確化して中長期的な計画を立案・策定することが重要です。併せて、各部署での協力体制を整備して従業員の理解を得ることも必要です。

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