業務自動化を実現する手順やツール、成功事例や自動化のメリット

最終更新日: 2023.08.10 公開日: 2023.03.31

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これまで人の手で行っていた業務をICTツールに任せることで、生産性の向上が可能です。これを「業務自動化」と呼び、日本企業が抱える課題の解消が期待されています。しかし、いまだ多くの企業で導入が進んでいないのが現状です。そこで本記事では、企業経営者の方向けに業務自動化について詳しく解説します。

業務効率化ハンドブック

業務自動化とは?

業務自動化とは、人が行っている作業をICTツールに任せ、省人化や業務効率・生産性の向上などに役立てることを指します。たとえば、データを取得して入力する作業を自動化したり、現地調査の代わりにセンサーなどでデータを収集したり、といった具合です。このとき使用するツールには、主に以下のようなものがあります。

  • AI(Artificial Intelligence):行動や知識を学習させて自動化するシステム
  • IoT(Internet Of Things):あらゆるモノをインターネットにつなげるシステム
  • OCR(Optical Character Reader):スキャナやカメラで画像を読み取る技術するシステム
  • RPA(Robotics Process Automation):パソコン上の作業を自動化するシステム

それぞれの例としては、「AIによる自動運転」「IoTによるセンサーを使用したデータの取得」「OCRによるカメラでの文字の読み取り」「RPAによるパソコンでの反復作業の自動化」などが挙げられます。

業務自動化が進まない背景

業務自動化は多くの企業にとってメリットをもたらし、政府が推進するDXにも通じる取り組みですが、実際のところ導入が進んでいない企業も少なくありません。ここでは、なぜ導入が遅れているのかを解説していきます。

業務の実態が可視化されていない

業務自動化を導入するうえでは、「何を自動化するのか」「何が自動化できるのか」を考えなくてはいけません。これらを考慮せずにそのまま導入しても、結果的に業務に利用できなかったり、一部分だけしか自動化できず期待していたほど効率が上がらなかったりする可能性があります。

また、自動化すべき内容を精査する際に業務実態の把握が必要ですが、手順書やマニュアルが古く、実態に合わないケースも見られます。この場合、改めて業務内容を調査するためにヒアリングが必要です。しかし、業務の中でヒアリングを行うのが難しく、なかなか進まずに頓挫してしまうこともあります。

自動化しやすい業務かどうかを判断できない

業務自動化で使用されるICTツールは、必ずしも万能というわけではありません。人の手や判断が入らないと成立しない作業もあるため、自動化できるかどうかの見極めが必要です。

たとえば、業務内容が多岐にわたっていてロジックが複雑な場合や、作業自体が属人的になっている場合には注意が必要です。また、作業に伴って承認作業が必要な場合は、人の手が介入することになります。

このように、業務の中でも自動化できるものとできないものがあるため、これらを見極めて導入を進めなければいけません。これを疎かにして導入と検討に時間をかけただけでは、ICTツールの導入により、かえって作業が増えてしまうこともあります。

自動化による効果を具体的に示せない

自動化の導入にあたっては、その必要性やメリットを示し社内理解を得ることが重要ですが、「作業が効率化する」「管理の手間がなくなる」などの漠然とした効果を謳うだけでは具体性がありません。効果が曖昧な状態では、上長の承認が得られない可能性もあります。そのため、本当に業務が効率化して管理の手間がなくなるのかを示す場合は、導入後の状態を数値化して効果を算出することが大切です。

たとえば、「1時間かかっていた作業が10分になる」「自動化により生産性が向上して残業がなくなる」など、具体的な効果を提示します。このような具体性は、承認が有利になるだけでなく、導入後の失敗を防ぐためにも効果的です。

業務自動化しやすい主な業務

自動化しやすい作業としては、「反復・単純な作業」「パソコン上での業務」「データ化できる作業」などが挙げられます。毎日繰り返し行う作業や、ロジックが複雑でない簡単な作業は、自動化プロセスを組みやすいのが特徴です。とくにパソコン上での作業は、プログラムで実行できるので自動化しやすくなっています。各部門で自動化しやすい業務をまとめると、以下のようになります。

  • 経理:帳簿関連の入力、入金・支払い業務、資産管理
  • 人事:労働時間管理、報告書の作成
  • マーケティング:データの抽出・分析
  • 営業:受注管理、販売状況の調査、見積書作成
  • 倉庫:在庫管理、メール発注、発注業務
  • 総務:定型文による文書作成、取引先の業務確認
  • 部門全体:日報作成、システム登録

業務自動化のメリット

続いて、業務の自動化により得られるメリットをご紹介します。

リソースの最適化

単純作業や反復的な作業を人の手で行っていた場合、それだけで多くの時間を費やすことがあります。場合によっては、業務の大半を簡単な作業に奪われてしまい、大事な業務に注力できない人材がいるかもしれません。この場合、生産性が低下することはもちろん、新たに人材を雇おうとすればコストも発生します。

その点、こうした業務を自動化すれば、簡単な作業に人員を割く必要がなくなり、重要な作業にのみ注力させることが可能です。これを「リソースの最適化」と呼び、生産性の向上と少ない人員での業務運営が実現します。

コストの削減

前述したように、リソースの最適化により生産性が向上すれば、少ない人員での業務運営が可能になります。従業員が少なくなれば人件費が削減されるため、大幅なコストカットが期待できます。さらに、外注している業務を自動化すれば、外注コストも削減可能です。

人的ミス・属人化の防止

人の手を介した作業は、ミスが発生する可能性が少なからずあります。その点、業務自動化ではAIやロボットなどを用いることから、設定した手順に沿った正確な作業が可能です。そのため、業務自動化はヒューマンエラーの防止につながり、ミスをしてはいけない作業でとくに高い効果を発揮します。

また、業務によっては、特定の従業員に依存してしまうものがあります。これを「属人化」と呼び、業務にあたる作業員がいなくなると誰も作業できなくなってしまうという問題があります。業務自動化では、こうした属人化を防ぐことも可能です。

業務自動化の具体的な方法

ここでは、業務自動化のための具体的な手段を3つご紹介します。

自動化ツールを導入する

自動化を簡単に作成できるツールに、RPAがあります。RPAはパソコン上の作業をソフトウェアやクラウド、サーバーなどから利用するサービスです。

使用方法は簡単で、自動化する作業をパズルのように組み立てて実行するだけです。難しいプログラミングの知識は必要なく、作成のためのコストもかかりません。

注意点としては、ツールによって自動化できる作業が異なるため、自社の業務に合ったものを選定する必要があります。自動化したい作業に合わないものもあるため、しっかりとツールを見極めましょう。

RPAによる自動化がもたらす業務効率化とは?導入失敗しないためのポイントをご紹介!

プログラミングにより処理を自動化する

ツールなどを使用しない場合は、プログラミング言語を使用して、業務自動化のためのシステムを作成する方法があります。たとえば、よく利用されるのが、Excelのマクロによる業務自動化です。マクロ自体はそれほど難しいものではないため、自社で作成できるのが利点ですが、Excelの中だけにしか適用できないという問題があります。

そこで、Pythonなどのプログラミング言語を使用すれば、自由に自動化ツールを作成することが可能です。ただし、使用するプログラミング言語の知識が必要なので、自社に扱える人間がいない場合は外注しなくてはいけません。この手法は、RPAツールよりも自由度が高くなりますが、システム構築のコストや手間がかかるというデメリットがあります。

AIを活用する

近年はAIの発展が著しく、さまざまなツールが誕生しています。これらを活用すれば、画像や音声を自動で認識したり、データを自動で分析したりすることが可能です。実際に使用されている例では、以下のようなものがあります。

  • 画像認識による、商品を持って退店するだけでクレジット決済されるスマートストア
  • 音声認識による議事録作成
  • データ分析による「おすすめ」の表示

また、ユーザーが質問をすると自動で返答してくれるチャットボットもAIのひとつです。ChatGPTやBing AIなどが有名ですが、自動で文章を作成したり、プログラムを作成したりもできます。企業では主にカスタマーサポートで利用されており、簡単な質問をチャットボットに任せることで、コールセンターの対応の負荷軽減が可能です。

業務自動化を進める手順とおすすめツール

業務自動化の導入で失敗しないためには、適切な手順で導入を進めることが大切です。ここでは、導入の手順を4つのポイントから解説します。

1. 業務を棚卸する

現在、自社がどのようなプロセスで業務を行っているのかを整理するために、業務の棚卸を行います。各部門の従業員にヒアリングを行い、業務内容を書き出しましょう。ヒアリングを実施して業務内容が把握できたら、各部門に業務量や発生頻度、スキルと難易度などをアンケートします。

これらを実施することにより、「業務負荷」「スキルレベル」「業務マトリクス分析」「属人化」の調査が可能です。

2. 業務の見える化を行う

マニュアルや手順書がある場合は、実態とのずれがないかを確認します。業務が属人化していたり、プロセスが複雑化している場合は、マニュアル化することでより業務全体を見える化できます。このとき、確認したい項目として以下の点があります。

  • 業務フロー
  • タイムスケジュール
  • ナレッジ

業務フローは、自社の業務の流れを図式化したものです。どのようなプロセスで全体が成り立っているのかを把握できます。さらにタイムスケジュールを付け加えることにより、どのプロセスがいつ・どこで行われているのかがわかります。

またナレッジは、スキルやノウハウの共有を指します。業務に必要な技術を共有できるようにすることで、全体のスキル向上が図れます。

こうしたマニュアルや手順書の作成をExcelやWordなどで行うのもよいですが、従業員が見ないおそれもあります。そこでおすすめなのが「Teachme Biz」です。このソフトウェアを使用することで、マニュアルや手順書の作成・編集が簡単に行えます。さらに、マニュアルをデジタル化することで、従業員が扱いやすくなるメリットもあります。

Teachme Biz

3. 業務の自動化を行う

自社の業務の全体像が把握できたら、業務自動化が適用できそうな業務を絞り出します。前述している通り、定型業務や反復的な作業が自動化しやすいため、こうした部分から確認していきましょう。

自動化ツールでは、導入しやすいRPAから検討するのもおすすめです。たとえば、株式会社NTTデータが提供している「WinActor」は、大きなコストをかけず手軽に導入ができます。導入に時間がかからず、すぐに使用できるのもポイントです。

WinActor

4. 効果測定と改善を行う

ツールを導入してそのまま終わりにするのではなく、必ず効果測定を行いましょう。導入による効果を定量的に評価し、継続的な改善に努めることが大切です。

効果測定では、導入前後でどのくらい作業時間が変わったのか、属人的な作業などの問題点が解消されたのか、といったことを確認します。また、コストがかかった場合には、費用対効果がしっかりと見合っているかを確かめる必要もあります。

業務自動化の成功事例

最後に、業務自動化により成功を収めた企業事例を2つご紹介します。

株式会社ニチレイロジグループ|20,000時間の業務をRPA化

株式会社ニチレイロジグループ様は、労働力不足やマニュアルの不備といった問題を抱えていました。ナレッジも共有されておらず、事務所ごとに業務の品質もばらばらだったため改善が必要でした。そこで業務全体の見直しと、RPAによる自動化に取り組みました。

このとき問題となったのが、RPAの導入により業務が新しくなるため、マニュアルの作成と周知が必要な点です。そこで同社は、Teachme Bizの導入によりマニュアルをデジタルツール化することで、全体に周知をしようと考えました。

実際に導入してみると、従業員のほとんどがマニュアルを参照し、RPAツールの導入がスムーズに進みました。さらにRPAによる業務改善により、年間で20,000時間もの業務をRPA化することに成功しています。

年間で20,000時間の業務をRPA化!労働力不足の問題もクリア

Toyota Tsusho (Thailand) Co.,LTD|「見える化」で社内問い合わせ8割減

Toyota Tsusho (Thailand) Co.,LTD様が抱えていた問題点は、業務の属人化です。人の入れ替わりも多く、引き継ぎの内容に差が出てしまうという問題がありました。手順書も作成し共有してはいたものの、全体で2割程度しか目を通しておらず、最終的に人事部に直接問い合わせがくることが多かったそうです。

この問題を解決するためにTeachme Bizで導入したのが、ビジュアルベースのマニュアルです。それまで採用していた文字ベースの手順書を改め、画像主体のマニュアルにしたところ、問い合わせが8割も減少しました。さらに、マニュアルが全体に周知されたことで社員の理解度が向上し、業務の均一化にもつながっています。

「見える化」で社内問い合わせ8割減! DX化推進にも活用

まとめ

AIやRPA、IoTといった技術により、これまで人の手で行っていた業務を自動化することが可能となりました。業務自動化を導入すれば、これまでよりも飛躍的な生産性の向上が期待できます。

しかし、さまざまなメリットがありながらも、導入が進まない企業が多いことも事実です。業務自動化をスムーズに導入するためには、自社の業務プロセスを可視化して、新しい作業をマニュアル化することが重要です。

そのためには、わかりやすいマニュアルや手順書の作成が必須です。文字ベースでのマニュアルや複雑な手順書は、従業員が見ない場合もあるので、ツールによって画像ベースで作成するのもひとつの手です。ICTツールを上手に活用して、スムーズに業務改革を進めましょう。

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