300店舗デジタル化の歩み――アパレル企業の顧客管理システム刷新を成功させた秘訣

最終更新日: 2023.07.10 公開日: 2023.07.04

コロナ禍に突入して3年。2022年の年末から23年1月にかけては「3年ぶりに規制のないクリスマス、お正月」でにぎわう街の様子が各メディアで発信されていたが、感染者数の乱高下はしばらく続くことが予想される。業種、業態問わず企業の変革への挑戦は23年も継続しそうだ。

コロナ禍で苦戦を強いられ、大きな変化を求められた業界といえば小売業だろう。客足が遠のいたことで、売り方、顧客接点の見直しを含めデジタルシフトに迫られた。全国に300の実店舗とECサイトを構え、複数のファッションブランドを展開しているアパレル企業、レリアンも同様だ。

同社はロイヤルカスタマーを多く抱え、顧客と長く付き合う過程で趣味嗜好を深く理解した店舗スタッフが接客にあたっていることが特徴。いうなれば「店舗ごとに接客からマーケティング活動まで大きな裁量をもってお客さま満足度を追求するスタイル」だと、同社でデジタルマーケティング部 部長 兼 システム部長を務める和田真由美氏は話す。そのサポートを行う本社では、コロナ禍以降どのような取り組みをしてきたのか。

ここからは、22年12月8日に開催された、マニュアル作成・共有システムを提供するスタディスト主催オンラインセミナー「ヒトの生産性について考える1日」に登壇したレリアンが語ったデジタル変革、その舞台裏を紹介する。

ITmediaビジネスオンライン
2023年2月14日掲載記事より転載

コロナ禍でオンライン接客が急務に 各種ツールの扱いが不得意なスタッフをどう育成するべきか?

セッション冒頭、和田氏は「20年4月、新型コロナウイルスの影響により対面での接客が難しくなり、至急、全店舗でビデオ通話ツールを導入することになった」と説明。社会の様相に押されてのオンライン接客が急務であったと振り返る。

ビデオ通話ツールを活用するためには、ある程度のデジタルリテラシーが必要だ。しかし、1000人にも及ぶスタッフ全員がそれを備えているわけではなく「デジタルに対し苦手意識を持つ人も存在した。そういった層をいかにサポートしていくかが問題だった」(和田氏)と語る。

そこで、デジタルマーケティング部が主導しマニュアル制作に乗り出す。当初、予定していたのはPowerPointの活用だ。しかし実際に取り組んでみると、制作者のPowerPointスキルに個人差があったため仕上がりに統一感がなく、また制作スピードにも違いが出るなどさまざまな不都合が生じた。視覚的に分かりやすいマニュアルにするため動画を取り入れたいとの意向もあったが、編集スキルを備えたスタッフが少なく、容量が大きい動画ファイルを保存しておく場所にも課題を感じたという。

こだわったのは「作りやすい」「修正しやすい」「分かりやすい」

デジタルマーケティング部には、この取り組みに際していくつか実現したいことがあった。できるだけ隙間時間で反復学習ができるようオンライン学習環境を用意すること。ペーパーレス化を図ること。そしてわずか3人という限られた人的リソースでも、制作した教材を都度、改良し続けられることだ。

 

セッション冒頭、事業紹介をするレリアンの和田真由美氏(右:デジタルマーケティング部 部長 兼 システム部長)と、モデレーターを務めるスタディストの木本俊光氏(左:社長室/Teachme Biz プロダクトマーケティングマネジャー)

 

ペーパーレス化は「制作したマニュアルをプリントアウトして保存することは避け、オンライン上で確認するよう呼びかける」(和田氏)ことで実現しようとした。しかしPowerPointで制作したマニュアルをオンラインで閲覧できるようにしただけの環境では利用しづらく、修正にも時間がかかる。また前述した仕上がりの統一感、動画の利用については未解決のままだ。

「デジタルが得意ではないスタッフの心理的なハードルを下げるためにも、マニュアルの分かりやすさにはこだわりたかった。これは本社への問い合わせを減らすためにも重要だ。できるだけ時間をかけず、均一化されたマニュアルを制作できること、かつ分かりにくい部分があれば即時、修正できるツールが必要だった」(和田氏)

これら多くの課題・要望対応のため選択されたのが、スタディストが提供するマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」だ。1操作1ステップでマニュアル化できるため分かりやすく、画像・動画も手軽に挿入でき、修正も簡単。実際、運用開始後は現場からの問い合わせや要望をすぐにマニュアルに反映するシーンが幾度となく発生したといい、この選定方針が功を奏した。

Teachme Bizを実際に導入したのは、20年8月。オンライン接客で使うビデオ通話ツールのほか、並行して利用促進を目指していたLINE WORKS、また日々業務で扱うiPhone、iPadの便利機能などのマニュアル制作をスタートし、店舗のデジタル化を進めた。

20年ぶりに顧客管理システム刷新 大幅な機能変更でも集合研修なしで現場に定着

また同時期、レリアンでは顧客情報管理システムのリプレースも予定されていた。ここでマニュアルが活用可能との見通しがあったことも、Teachme Biz導入の決め手の一つになったと和田氏は語る。

同社はもともと自社で開発した顧客情報管理システムを利用していたが、利用開始からおよそ20年がたち、その見直しを図る時期がコロナ禍に重なっていた。リプレース先に選んだのは、高い導入実績を持つSalesforceの「Service Cloud」。レリアンには、新たな顧客情報管理システムを使いさらなる進化・強化したいポイントが3つあったという。

まず1点目は、顧客接点の強化。これまで顧客の購買行動の把握は店舗ごとに閉じており、他店舗やECの情報は連携されていなかった。そのため、店舗横断で情報共有を行い、顧客サービスの質向上を目指した。2点目は個々のスタッフが持つ詳細な顧客情報を可視化し、スタッフ全員で共有すること。経験年数に関わらず、全体的な接客力のアップを図った。3点目は売り上げの可視化。自店舗だけでなく他店舗、ECの売り上げも把握できるようにし、さらなる接客力の強化を求めた。

 

Salesforce導入で目指す、顧客体験(CX)と従業員体験(EX)向上(出所:レリアン資料)

 

オンラインでも「脱落者をつくらない」教育プログラム設計

この新しい顧客情報管理を成功に導いたのもまた、Salesforceの活用を支えるTeachme Bizだ。まず取り組んだのはSalesforceのトレーニングスケジュール調整だったが、それと同時にTeachme Bizでマニュアル制作にも着手した。制作自体をシステム会社に委託するという選択肢があったものの、デジタルに慣れていない店舗スタッフがシステム会社の作るマニュアルを理解するのは難しいと考えたため、最終的には内製することに決めたという。この判断が、想定以上のメリットにもつながった。

具体的なトレーニング方法としては、マニュアルを活用したオンライン学習とZoomでの実習会、説明会の開催を設定し、質問ができる時間も用意した。従来の集合研修も検討したが、新型コロナウイルスの影響があったほか、店舗代表者だけが集まりがちになりスタッフ一人一人まで教育が行き届かなかった過去事例から採用しなかった。「今回はスタッフ全員がツールを使えるようになる必要があった。集合研修だと受け身になりがちだが、今回は各自がマニュアルで自習の上(実習会や説明会で)積極的に質問してもらうことで理解を深めることを目指した」と和田氏は振り返る。

 

レリアンが実施したトレーニング方法(出所:レリアン資料)

 

大きな目的として掲げられたのは「脱落者をつくらないこと」。デジタルに弱いスタッフでも活用しやすいよう、見やすさと分かりやすさを追求した。具体的には1機能1マニュアルを基本として、全149本制作。Salesforceの操作だけでなくiPhone、iPadの操作方法などつまずきがちな手順も盛り込まれた。隙間時間による反復学習時に繰り返し見てもらうことを想定した内容に仕上げると同時に、それらを22本のトレーニングコースとして段階的に学べる形に整理している。

「トレーニングコース向けのマニュアルは、実施するごとにスタッフへアンケートをとった。『分かりにくい』と指摘された部分は随時修正を加えたり、追加マニュアルを制作したりした」(和田氏)というが、これぞまさに制作・修正が簡単なTeachme Bizだからこそ実現できたPDCAサイクルだといえる。

レリアンのデジタル変革を支えたTeachme Biz 今後の課題は?

セッションの中で和田氏は、オンライン接客、顧客情報管理システムのリプレースによる店舗のデジタルシフトという大きな変革を成し遂げる上で、スタディストのサポートが大きな支えになった点にたびたび言及した。

「そもそものマニュアルツール選定時、合計8社ほどの商材を比較検討していたが、スタディストはまず『成し遂げたいゴール』を私たちからヒアリングした上で、そこへ向かうためにどう準備を進めていくべきか、ゼロから相談に乗ってくれた。すでに多くの企業への導入実績があったことも魅力的だったが、対話の中でビジネスゴール達成までのフローを具体的にイメージできたこと、『これならできそうだ』と確信できたことは非常にありがたかった」(和田氏)

また、マニュアル制作時の細かなアドバイスにも助けられた。和田氏は「マニュアル制作時、仕上がりにブレが出そうな部分は事前にある程度ルール化することなど、実用的なアドバイスをいただいた。それに従ったことで、誰が見ても混乱のないマニュアル制作が行えた」と、スタディストの手厚い支援に感謝を述べ笑顔を見せる。

変化を続ける顧客の価値観や購買行動 次世代マニュアルで対応力を

これらの取り組みにより、Salesforce稼働直後から店舗現場での利用が本格化し、定着させることができた。今後Teachme Bizをさらに有効活用していくためのアイデア創出にも意欲的だ。マニュアル数が増加してきたことを受け、知りたいときに知りたい情報をすぐ見つけ出せるような改善も検討している。和田氏は「社内で使っている既存のチャットボットを生かし、店舗スタッフがチャット経由で求めているTeachme Bizのマニュアルタイトル、閲覧URLを即時、表示できるような方法を模索中だ。また、Teachme Biz内でどのような検索ワードが使われているかを分析し、検索性も上げていきたい」と話す。

 

Teachme Biz閲覧数と、Salesforceへのログイン数。Salesforce稼働後すぐに活発なログイン状況が見てとれる(出所:レリアン資料)

 

「冒頭で話した通り、当社の強みはお客さまとの長く深いつながりにある。そこを伸ばすために、今後はデジタルツールをいかにうまく取り入れていくかが重要課題になるが、店舗スタッフからのツールに関する問い合わせ対応を人的リソースが限られるシステム部門だけで請け負うのは難しい。システム上の事故やトラブルについては本社でクイックに対応できる用意をしつつ、店舗スタッフが自己解決できる環境については今後も(Teachme Bizを通じて)強化を図っていきたい」(和田氏)

世の中のデジタルシフトは不可逆であり、過去に戻ることはないといわれている。顧客の価値観や購買行動が大きく変化する中で、小売は常に変革が求められる業界であり、そこにテクノロジーの活用はもはや欠かせない。Teachme Bizを活用し、人材育成の標準化による効率化、そしてオープンな情報共有を実現したレリアン。同社の店舗、そして本社が足並みをそろえたデジタル変革の行く先を、今後も楽しみに見守りたい。

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