AI(人工知能)活用によってできることは? 活用事例や導入メリットを解説

最終更新日: 2024.03.15 公開日: 2024.03.07

AI(人工知能)活用によってできることは? 活用事例や導入メリットを解説

ChatGPTを始めとする生成AIの自社への導入を検討するにあたり、何から始めてどのように進めればよいかと悩んでいませんか。本記事では、AI活用でできることと期待できないことについて解説し、その上で企業の導入事例を業種別に紹介します。また、AIをビジネスに導入するメリットについても取り上げます。

AI活用によってできること

人工知能であるAIは、人間の思考・判断能力の一部をコンピューターで模倣したプログラムです。AIを活用すると、これまで人が行ってきたさまざまな作業や仕事をカバーしてくれます。AI活用でできることをまとめて紹介します。

画像の認識・生成

画像の認識は、画像データを分析して何が映っているのか識別する技術です。画像の種類により、人物と物体情報を見分ける物体検知、顔の画像の特徴を抽出する顔認識、手書きや印刷文字を判別する文字認識に分けられます。どの場合も対象物の形や色など特徴をパターンとして認識し、画像を判別します。事前に大量の画像をAIにインプットする機械学習や、ディープラーニングなどの技術で、画像認識の精度を高められるようになりました。

画像認識により、AI OCRと呼ばれる文字認識やセキュリティ対策の顔認証、建設業での点検や異常検知、医療現場におけるがん細胞の検知などに役立てられています。
さらには、テキスト入力や写真の取り込みにより、イメージした画像やイラストをAIが新たに生成する画像生成技術も進歩しています。プロの写真家やイラストレーターに依頼するコストを抑え、品質の高い画像やイラストを生成することも可能です。

音声の認識・合成

音声の認識は、人間の発声や会話を解析してテキストデータに変換し、出力する技術です。ノイズの除去を行う音響分析から始め、過去の学習データと照らし合わせた音響モデル、単語を文章化する言語モデルのプロセスを経て、テキストとして出力されます。音声認識の技術は会議の録音データから文字起こしをしたり、議事録を作成したりする作業のほか、身近な例ではiPhoneの操作アシスタントアプリ「Siri」やAmazonの「Alexa」に搭載されています。

また、AIで音声を人工的に合成することも可能です。これは、電話のカスタマーサービスの自動化や、電子機器の音声対応サービス、施設の構内放送などで使われています。音声の合成技術はニュースのアナウンスでも使用されるなど、人の音声に近いレベルまで精度が上がっており、顧客サービスの向上に役立てられています。

自然言語の理解・生成

自然言語とは、人間が日常的に使用している話し言葉や書き言葉を指します。これに対し、プログラミング言語や人工言語は人為的に作られた言語です。自然言語をコンピューターなどが正しく理解するための技術を自然言語処理(NLP)といいます。これは言葉の意味や文脈を解析・理解できる技術で、文脈を判断できる検索エンジンや文字入力の予測変換機能、Googleの機械翻訳などに使われています。

スマホやパソコンのサービスでよく目にする対話型のチャットボット、あるいは前述した「Siri」や「Alexa」も自然言語処理を使用したサービスです。2022年に登場したChatGPTは対話に特化したAI言語モデルとして話題となりました。対話式でこちらの質問に的確に回答し、文章の要約や構成案、キャッチコピーのアイデアなどを考えてくれて、記事作成も可能です。

予測分析

AIの特徴として、過去データを元に事象が発生する傾向を分析し、将来に備えて正確に予測できるメリットがあります。過去に発生したことが将来再び起きる可能性や、生じ得る変化を把握するのがAIによる予測分析です。事業や経営を行う上で事業計画や売上予測、商品の需要予測、原材料のコストや経費の予測などを立てておくことは欠かせません。経営者やベテラン担当者の経験や勘に頼って予測する方法だと属人化しますが、AIによる予測分析はデータに基づき、誰でも同じ基準で理論的に予測できます。

予測分析は製造業で想定される機械の故障や顧客との商談成立の確率、イベント開催日の天気による売上など、さまざまな分野で活用されています。一方でより精度の高い予測をするには大量の過去データの蓄積が必要です。また、データを活用するにはデータ分析の知識が必要となり、人材コストもかかります。

最適化

AIによる最適化では、過去のデータを元に業務方針や計画の最良な選択肢を見つけるアルゴリズムを使用します。業務上の制約は変えずに目標を達成するためのもっとも相応しい方法を探すことにより、業務の効率化や利益の最大化が可能です。例えば物流業務でトラックの台数を減らし、3時間以内に配送をすべて完了させるという目標を立てた場合、積載重量や法令速度という制約を守った上で、目標を達成する方法を検討できます。

ほかにはパートやアルバイトのシフトの作成で、繁忙時期に必要人数を確保しつつ、休業希望日の出勤を均等に負担してもらう、スーパーやコンビニエンスストアで商品の廃棄や返品を極力減らし、ムダのない在庫管理を行うといったケースに有効です。あるいは、オフィスの空調の調整、商業施設におけるエレベーターの混雑防止に向けた制御などにも活用できます。

異常検知

異常検知は、製造や生産現場で機械や設備の異常を事前に捉え、トラブルを未然に防ぐ、または故障や停止を検知することです。これまではセンサーなどで閾値を定め、基準を超えるとアラームなどで知らせたり、設備や機械に精通しているベテラン作業員の目視や判断に頼ったりするのが一般的でした。それらに対し、AIを活用した異常検知では、生産や機械設備の正常な稼働データを学習させることで、閾値の範囲では判断できなかった異常やトラブルを発見できる可能性があります。

設備だけでなく正常な製品の異常も検知できるので、目視による検査で見逃してしまう人的ミスを防ぐことができます。それにより安定したレベルの異常検知が実現するため、全数検査を行ったり、製品検査にかかる人件費を削減したりすることが可能です。

AIが苦手とすること

AI活用によりできることは広がりますが、人工知能という特性上、苦手なことや対応できないこともあります。AIでの対応が難しいことをいくつか挙げます。

感情の理解

AIは人間のように思考や判断ができたとしても、感情があるわけではなく、人の気持ちを理解したり、共感したりするようなことはできないとされます。あくまで過去のデータに基づき、こういう会話のときはどのように返信したら良いかを学習し、最善と判断した返答をしているだけです。自然な返答だったとしても、AI自体が感情を共有し、理解したわけではありません。

ビジネス上のコミュニケーションでは、相手の気持ちを察したり、その場の空気を読んだりといった行動が必要ですが、AIではそれが難しくなります。相手が伝えた内容の意味や意図を正しく汲み取り、その人の真意がどこにあるのか理解して、適切な返答や作業をすることは、AIには向いていません。

学習データ領域範囲外の対応

AIは過去のデータを学習し、分析を行って新しいものを生み出すことはできますが、何もないゼロの状態からは生み出せません。文章や画像、動画、作曲などができるAIもありますが、あくまで過去のデータの中から使用者の希望に合うように組み合わせただけです。また、学習に使用したデータの範囲外で推論したり、予測したりすることはできません。過去データから景気の変動を一定レベルで把握できたとしても、リーマンショックのような大きな経済危機を予測することは難しくなります。

AIの予測や推論においては、過去データを分析して共通点や法則性を見出す必要があるため、前例がない分野、もしくは過去データが少ない場合の予測や推論だと精度が下がります。同様に、一人ひとりの個性に合わせたパーソナライズ化も、正確な判断ができず、AIの苦手な分野です。

非合理的な判断

AIは過去データから共通項やルールを論理的に導きだし、もっとも合理的とされる判断をしてくれます。反面、合理的でない判断を下すことは苦手です。例えばお客様と商談したり、プレゼンをしたりしている場面では、厳格で合理的なルールに沿って判断することは、あまりありません。どちらかというとお客様の反応や関心度合いに合わせた臨機応変な対応が求められます。

事前にこの内容で商談やプレゼンを進めるのが最適だと予測していても、実際にその場の雰囲気で判断を変えたり、さまざまな事情でやむを得ず、相手に忖度したりする必要性もあります。数値化されない、しづらい事柄は合理的な判断が難しいため、AIには向きません。

ビジネス・経営にAIを活用した事例10選

現在、さまざまな業種でAIを活用した業務の効率化や自動化、省力化が進んでいます。ビジネスや経営に活用されている事例を業種ごとに紹介します。

【小売業】過去の販売実績と気温などを用いた予測・発注

23店舗のスーパーマーケットを展開する(2024年2月現在)小売業会社で、鍋の食材7品目を対象にAIで需要を予測し、発注業務の自動化を行いました。使用したデータは過去の販売実績と気温情報、店舗のキャンペーン情報、年末年始など購買行動が変わる特定日です。試験的な検証プロセスでは全店舗中9店舗で約130万円の削減効果がありました。今後は業務を集約し、自動化を実現すれば、月間で18時間、年間40万円の工数削減効果が期待できるため、7品目だけで約380万円の削減効果が見込まれています。今回の7品目は野菜や水産物を扱ったため、予測は難しいと思われましたが、精度はかなり高いと評価を受けています。

経済産業省 中小企業とAI人材の協働による課題解決事例を公開

【小売業】AI総菜会計システム導入でレジ業務を簡略化

コンビニエンスストアやセレクトショップ、観光物産館など12店舗を運営する小売会社は、総菜の量り売りにAI画像認識を導入しました。運営するコンビニエンスストアでは総菜の量り売りが売り上げの約6割を占めています。それまでは、スタッフが総菜約70種類の名称を覚え、価格と重さをレジ打ちする手間が大きな負担となり、新人が離職する一因となっていました。そこで、スタッフの負担を軽減するため、他社と共同開発したAI連動はかりを開発したという経緯です。AI搭載カメラが総菜の見た目で種類を判別し、価格と重さのデータをレジに送信します。スタッフは間違いないかをチェックするのみで、レジ業務の省力化を実現しました。これにより客単価の上昇や高齢者雇用の推進にもつながっています。

経済産業省近畿経済産業局 AI導入・活用事例集と契約実務・知的財産の手引き

【小売業】AI音声自動応答システムの導入で夜間受付を開始

大手家電量販店で、AI音声自動応答システムによる夜間出張修理受付を開始しています。事前にコールセンターにて実証実験を繰り返し、音声認識率と実用性の高さが認められたため、夜間も出張修理電話受付を行えるよう、会員向けにAI音声自動応答システムを導入した形です。これまでのWEB上やアプリでの24時間受付を補完できるため、顧客のライフスタイルやニーズに合わせた体制が取れるようになりました。また、受付時間内の回線混雑時への対応も検討し、繁忙期に電話がつながりにくい問題の解消を目指しています。

株式会社ヤマダ電機 AI音声自動応答システムによる夜間出張修理受付業務開始のお知らせ

【製造業】AIデバイスを取り入れたスマート工場化

機械加工会社では3DシミュレーションによるAIデバイスを導入し、自社のスマート工場化を実現しています。精密加工の工具の破損を予知・検知できるため、適切なタイミングで工具を交換し、生産工程の最適化を達成しました。熟練工の整備工数を40%削減したほか、熟練工でなくても難しい加工が可能となり、生産性向上につながっています。さらに、自社の実績を元に同社エンジニアが加工現場のDXを支援するサービスも展開し、事業に発展しています。

経済産業省近畿経済産業局 AI導入・活用事例集と契約実務・知的財産の手引き

【製造業】受注先の内示数と受注数量を予測

自動車サプライチェーンの製造会社は、受注先の内示数と受注数量を予測するAIモデルを導入しています。それまでは顧客企業から事前にもらう発注内示数と最終的な納入数に差異があるため、余剰在庫を抱えたり、欠品が生じるリスクが発生したりしていました。短時間で計算が可能な高い予測精度が期待できるAIモデルを採用し、製品ごとの受注・発注予告数を学習させ、受注見込みの精度向上を図りました。その結果、改善幅が大きいもので誤差率52%から24%に改善しています。

経済産業省 中小企業とAI人材の協働による課題解決事例を公開

【製造業】図面から自動見積もりを作成

プラスチック精密機械加工会社では、加工図面からAIによる自動見積もりを作成しています。図面から読み取ることが難しい加工難易度の判断・判定にAIを利用し、自動算出を可能にしました。加えて、見積もり業務をAIで自動化することで属人化を解消し、営業担当以外も算出できるようになりました。また、見積もり回答時間も1時間から20分まで短縮可能となっています。短縮した時間は担当営業の新規開拓など、営業活動に充てられるようになりました。

経済産業省 中小企業とAI人材の協働による課題解決事例を公開

【製造業】AIを活用した原料検査の自動化

大手食品製造グループ会社では、自社開発によるAIを活用した原料検査装置を導入しています。惣菜の製造・販売を行っている工場で、原料となるカット野菜の目視検査の代わりとして導入したことにより、スタッフの作業負担が大きく改善され、作業効率の向上、業務の自動化を実現しました。生産現場の声を元に改良を重ね、簡単に使える操作性、場所を取らないコンパクトさ、シンブルな構造などの実現に努めています。

キユーピー株式会社 AIを活用した原料検査装置をグループに展開

【金融業】顔認証を取り入れた次世代ATMの導入

ATM運営を行う金融会社では、顔認証技術による本人確認や、二次元バーコード決済に対応した次世代ATMを導入しています。免許証など本人確認書類の読み取りや、スマートフォンに情報を発信するBluetooth機能も利用できます。また、ATMで金融犯罪行為が行われると、自動で検知し、コールセンターに通知されます。さらには、各ATMが現金の需要を予測したり、IoTによるATM各部品の故障を検知・予測したりすることが可能です。

セブン銀行 次世代ATMを導入開始 顔認証、二次元バーコード読取にも対応

【物流業】AIを活用した配送量予測と配車システムの導入

大手物流会社では、AIを活用した配送業務量予測と適正配車のシステムを導入しています。導入前は固定された配送ルートで荷物の配送に無駄、無理、ムラが発生し、顧客に荷物が届くまでの時間が長くなりがちでした。そこで販売・商品・物流・トレンドなどのビッグデータとAIを活用した、顧客別の配送業務量予測システムを元に、配車計画を自動で作成。物流・配送のノウハウや渋滞などの道路情報も活用し、効率的な配車計画を作成、実行しています。

ヤマトホールディングス ビッグデータ・AIを活用した配送業務量予測および適正配車のシステム導入について

【飲食業】老舗店の経営危機を脱却するAIシステムの導入

老舗飲食店は経営危機をきっかけにデータ経営を進め、現在はAIシステムを導入し、DXで経営を立て直しました。そろばんと食券利用をパソコンのExcel管理に移行し、データベース作成、POSレジを導入します。タイムカードのクラウド化などアウトソーシングを進め、機械学習や画像解析AIデータ収集なども導入した結果、売上高は7年で約5倍、食材ロスも約7割削減に成功しました。AI分析による来客予測は的中率91.3%と高精度です。現在はDX支援サービスも事業化しています。

経済産業省 創業100年以上の地域老舗店DX

AIをビジネスに導入するメリット

企業や店舗がAIを導入すれば、多くのビジネスメリットが得られます。主なメリットについて解説します。

業務の省人化による人手不足の解消

AIツールやサービスにより、作業を自動化できるため、大量作業も短時間で処理できるようになります。スタッフの労働負担が軽減し、業務の省人化が可能になるのみならず、人手不足を解消して、人件費の削減も可能です。例えば、農業分野ではAIを搭載したドローンによる農薬散布で労働力不足を補っています。また、夜間業務や危険な作業もAIに任せられます。

業務効率化による生産性の向上

AI活用によって単純な作業をAIに任せると業務が効率化され、ヒューマンエラーを防ぎます。手間がかかるマニュアルの作成もAIによって行えるため、最適な人員配置や費用対効果が高い施策を講じられ、生産性の向上が期待できます。また、企業の努力目標となった働き方改革では、実作業時間の不足が懸念されましたが、AI活用により、生産性を維持したままで残業時間を削減することが可能です。

製品・サービスの品質向上

製造業の場合、AIの画像認識などを利用すると不良品をムラなく検出し、製品トラブルを未然に防ぎ、品質向上につながります。また、顧客データを元に購買動向などを分析することで、ニーズに合った商品開発も可能です。さらに、カスタマーサービスにAIの自然言語処理を導入することで、24時間365日体制できめ細やかな顧客サポートができます。そうすることでサービスの質が向上し、顧客満足度の向上も期待できます。

EX(従業員エクスペリエンス)の向上

労働力不足や人材の流動化、働き方改革を背景にEX(従業員エクスペリエンス:従業員満足度)が注目されています。EXが向上すれば、離職率の低下や生産性の向上が可能です。AIを導入すると従業員の負担を軽減し、管理職が従業員のケアに注力できるようになる効果が期待できます。また、単純作業から解放され、よりやりがいのある仕事を行えるようになるため、従業員のモチベーションアップにつながります。

業務改善には積極的にAIの活用を

マニュアルを作成しておくと、業務手順の共有化に加え、1人で複数の業務を担当することも可能になり、人手不足の解消につながります。ただ、マニュアル作成・管理も手間がかかるため、ツールやAIの活用がおすすめです。
なかでもTeachme Bizが提供する『AIアシストプラス(β版)』は、AI技術を活用しており、業務・作業に関するキーワードを指定するだけで、ステップ化した作業手順の原案を整理し、各手順に関する説明文を自動生成できます。これにより、マニュアル作成の時間短縮、品質向上の実現が可能です。

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