タスク・シフト/シェアとは?課題を解決し効率的に導入するヒント

最終更新日: 2023.01.27 公開日: 2022.08.30

タスク・シフト/シェアとは?

医療業界で推進が求められているタスク・シフト/シェア。現在は働き方改革の動きもあいまって、取り組みがより一層加速しています。一方で、まだまだタスク・シフト/シェアの準備ができていない、なかなか浸透も進まないという医療機関も多いのではないでしょうか。

本記事ではどんな業務をタスク・シフト/シェアできるのかといった基礎知識に加えて、現状のタスク・シフト/シェアが抱えている課題とその解決策について、「マニュアル化」をキーワードにヒントをご紹介します。


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タスク・シフト/シェアとは?

タスク・シフト/シェアの意味

タスク・シフト/シェアとは、文字通り一定の業務を他者に移管する、あるいは共同実施することです。主に医療業界において、医師にしか行えなかった業務の一部を看護師や薬剤師に分担する仕組みを指します。
近年、欧米諸国では「ナース・プラクティション(NP)制度」といった公的制度によって看護師は一定以上の診断・治療が可能となっており、タスク・シフト/シェアが急速に浸透しています。

「医師の働き方改革」とタスク・シフト/シェアの関係

日本のタスク・シフト/シェアは「医師の働き方改革」の文脈で推進が求められています。令和3年時点で、働き方改革による医療法等の改正の動きは大きく以下の通りです。

  1. 長時間労働の医師の労働時間短縮及び健康確保のための措置の整備等
  2. 各医療関係職種の専門性の活用
  3. 地域の実情に応じた医療提供体制の確保

特に注目すべきは、1の項目です。時間外労働が問題視されている医師に対して、2024年から上限規制が適用されます
時間外労働の上限は原則1ヶ月45時間、年間で360時間まで。診療従事勤務医に関しては、1ヶ月100時間未満、年間960時間(例外あり)という上限が設けられます。

上限があるといってもまだまだ過酷な数字ではありますが、規制がスタートするのは大きな変化です。2024年度からの実施に向け、労務管理の最適化の手段としてタスク・シフト/シェアの取り組みが加速しています。

タスク・シフト/シェアが今、注目される理由

制度面以外にも、タスク・シフト/シェアが求められる大きな理由があります。それは、超高齢化社会による医療人材の不足です。
厚生労働省の厚生労働白書(2020年版)によると、日本社会の高齢化は2040年にピークを迎え、人口全体の35.3%(3,921万人)にまで達する予想です。2040年の超高齢化社会に対して必要とされる医療・福祉の就業者数の想定は1070万人。しかし、確保できる人材の見通しは974万人で、実に96万人もの人材が不足するとされています。

この深刻な人手不足に対応するためには、タスク・シフト/シェアが欠かせません。限られたリソースを最大限有効活用し、業務の効率化を図らなければならないのです。

タスク・シフト/シェアによる効果

では具体的に、タスク・シフト/シェアによってどのような効果が得られるのでしょうか。改めて整理してみます。

人材不足の解消

前述した通り、タスク・シフト/シェアは法定上これまで医師だけが担っていた仕事を、ほかの職種の人材でも担えるようにするものです。これによって期待できるのが、業務の効率化です。
例えば従来、医師、看護師、薬剤師が連携して別々に行っていた業務をタスク・シフト/シェアできれば、より少ない人員で多くの業務をこなせます。これは医療機関での治療行為以外に、在宅医療でも効果を発揮すると考えられます。

長時間労働の是正

医師に集中している業務負担を軽減するのも、タスク・シフト/シェアに期待される大きな効果です。長時間労働が慢性化している医師の業務を他の職種へと移管できれば、その分労働時間の短縮につながると考えられています。

医療の質の向上

タスク・シフト/シェアのもう一つの効果が、医療の質の向上です。薬剤師や看護師の担える業務が増えれば、医師は医師にしかできない業務に集中できます。また前述したように長時間労働が是正されれば、「医師が常に疲労している」状態を回避し、より質の高い治療にあたれます。

タスク・シフト/シェアが可能な職種と内容

医師から医療関係職種へのタスク・シフト/シェアが可能な業務についても簡単にご紹介します。

職種にかかわらず可能な業務

看護師や薬剤師といった医療関係職種のほか、医師事務作業補助者や事務職員でも行える業務は以下の通りです。検査や入院に関する定型的な説明や、書類・データの取り扱いなどが主な内容です。

  1. 診察録などの代行入力
  2. 各種書類の記載
  3. 医師が診察をする前に、医療機関の定めた定型の問診票等を用いて、診療する医師以外の者が勘者の病歴や症状などを聴取する業務
  4. 日常的に行われる検査に関する定型的な説明、同意書の受領
  5. 入院時のオリエンテーション
  6. 院内での患者移送・誘導
  7. 症例実績や各種臨床データの整理、研究申請書の準備、カンファレンスの準備、医師の当直表の作成等の業務

看護師に関する業務

看護師に関しては、特定行為を含む以下の7項目とタスク・シフト/シェア可能です。

  1. 特定行為の実施
  2. 事前に取り決めたプロトコルに基づく薬剤の投与、採血・検査の実施
  3. 救急外来における医師の事前の指示や事前に取り決めたプロトコルに基づく採血・検査の実施
  4. 血管造影・画像下治療(IVR)の介助
  5. 注射、採血、静脈路の確保等
  6. カテーテルの留置、抜去等の各種処置行為
  7. 診察前の情報収集

特に医師の負担軽減、そして医療の質の向上の要として期待を寄せられているのが1の「特定行為の実施」です。
特定行為の内容は、人工呼吸管理や持続点滴中の薬剤の投与量の調整など38項目21区分にのぼります。「特定行為研修制度」を受講することによって、看護師が自らの判断で患者の状態を判断し、迅速な対応が可能になります。

というのも、これまでは医師が患者の対応に関して看護師に指示を出しても、看護師は自らの判断では治療行為ができませんでした。
例えば「脱水症状を起こした場合に点滴を打つ」処置が必要だった場合に、看護師は脱水症状に関して患者の状態を判断した後、医師へと報告し、医師の指示を受けてから初めて点滴を打つことが可能になります。
しかし特定行為研修を受講していれば、看護師の判断で「脱水症状を起こした場合に点滴を打つ」という判断を実行できるのです。

参考:日本看護協会「看護師の特定行為研修制度 ポータルサイト」

薬剤師に関する業務

薬剤師に期待されているのは、薬学管理全般や医師の処方の見直しの提案などです。医師のサポートを行うのと同時に、より安全性と効果の高い投薬の実施が見込めます。

  1. 周術期における薬学的管理等
  2. 病棟等における薬学的管理等
  3. 事前に取り決めたプロトコルに沿って行う処方された薬剤の投与量の変更等
  4. 薬物療法に関する説明等
  5. 医師への処方提案等の処方支援
  6. 糖尿病患者等における自己注射や自己血糖測定等の実技指導

そのほか

助産師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、義肢装具士、救急救命士に関しても、看護師・薬剤師と同様にそれぞれ業務範囲が拡大されています。
基本的に各職種が行う業務プロセスのシームレスな実施が期待されています。

参考:厚生労働省「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」(令和3年度)

タスク・シフト/シェアの課題

以上のようにタスク・シフト/シェアにはさまざまな視点から大きな期待が寄せられていますが、実践・浸透のためにはいくつかの大きな課題も存在します。

人材育成の課題

第一の課題は、業務を移管・共同実施する医師以外の職種の育成です。医療行為である以上は厳密な指導が求められるため、指導方法や研修のあり方はしっかり統一しなければなりません。
育成の結果、人によって業務品質のバラつきが生まれてしまっては、タスク・シフト/シェアへの不安感を生むことにもなってしまいます。

人手不足の課題

医療人材の人手不足を解消するためのタスク・シフト/シェアの導入ですが、そもそもタスク・シフト/シェアできる人材自体が不足しているという、矛盾した状況も大きな問題となっています。

前述では、特定行為研修制度を受講した看護師の活用の期待が高まっていると記載しましたが、特定行為研修を終了した看護師数は令和4年3月時点でわずか2万7000人ほど。厚生労働省は2025年までに10万人以上の養成を目標として掲げていますが、まだまだ到達には遠い数字です。
これは、そもそも看護師の多くが激務かつ、人手不足であることが原因です。研修を受講しようにも、時間の捻出が難しいのが現実なのです。現状のまま無理にタスク・シフト/シェアをしようとしても、看護師の労働環境の悪化につながりかねません。

また地域や診療科によって、確保できる人材リソースの格差が大きいのも課題となっています。

意識的な課題

もう一つの課題が、そもそもタスク・シフト/シェアの導入の緊急性や重要性が、現場に充分伝わっていないことです。また必要性はわかっていても制度面への理解が不足しているために、なかなかタスク・シフト/シェアの実行に踏み切れないケースもあります。
もともとは医師にしか認められていなかった業務を本当に多職種にまで広げて問題がないのか、不安視する声もあります。

マニュアルの整備が課題解決の有効手段

以上のようにタスク・シフト/シェアには数々の課題が存在します。その全ての解決は即座に難しいものの、一部はマニュアル作成によって解消可能です。

スムーズな多能工化で人手不足をフォロー

限られた人員で業務を効率よく回すために必要なのは、手順のパターン化です。マニュアルで最適化された業務プロセスが浸透すれば、医療人材のスムーズな多能工化につながります
すでに業務マニュアルが存在している場合も、タスク・シフト/シェアの導入によって業務体制を変更するにあたっては、今一度マニュアルが最適な形で整備されているかどうか、しっかり見直してみましょう。

統一された方法で人材育成を最適化

タスク・シフト/シェアに特化したマニュアルが整備されていれば、人材育成も最短で行えます。指導方法の統一によって育成担当者の負担は最小限で済みますし、何よりOJTと異なり均一なクオリティで育成できるようになります。
また病院ごとに異なる規定やルールも反映しておくことで、人材が持つスキルを素早く現場に適用させられるでしょう。

業務の標準化で意識改革

マニュアルの整備によってスムーズにタスク・シフト/シェアが浸透すれば、「本当に業務を移管・共同実施して大丈夫なのか」という現場の不安感も払拭できます。このとき、マニュアルを参照することによって、誰が業務を担当しても同じような質でこなせるようになるのがポイントです。
そのほか緊急時の対応なども含めて網羅的なマニュアルを用意しておけば、安全面についても担保が可能です。

マニュアル作成で多能工化・育成・意識改革を行うならTeachme Bizがおすすめ

タスク・シフト/シェアの導入・実施に対してマニュアルは一定以上の効果を発揮しますが、忙しい医療現場の中でマニュアルの再整備をするのもやはり容易ではありません。特にワードやエクセル、パワーポイントなどを使って作成者がゼロからテンプレートを作らなければならない場合、膨大な手間がかかります。

そこでおすすめしたいのが、マニュアル作成ツールの活用です。Teachme Bizならあらかじめテンプレートが用意されているため、作成者は文字や画像を挿入するだけでOK。簡単に作成可能です。
また、マニュアルのデータはクラウドでシェアできるため、管理負担もほとんどありません。必要な情報を探せるだけでなく、いつでもどこでも手元の端末からアクセスが可能です。
マニュアルに変更があった際もすぐに更新・反映ができますから、現場への周知も一瞬で済みます。

現状の医療従事者の健康確保、そして将来的な人手不足に備えて、できるところから一歩ずつマニュアルの整備を進めるのが肝要です。

まとめ

迫る超高齢化社会に向けて、推進が進んでいるのがタスク・シフト/シェアです。しかし医療機関の規模によっては追加で人員を配置するのは難しいケースがあり、実施する際も多くの課題に直面します。タスク・シフト/シェアを導入するためには、課題を見越した工夫が必要です。

マニュアルの整備は、そのための手段の一つです。最適化されたマニュアルを用意してスムーズな人員育成を行えれば、医療人材の多能工化によって人手不足への対応が可能になるでしょう。
とはいえ、そもそも医療現場は業務負荷が高く、マニュアルを作成する時間も確保しづらいのが現状です。Teachme Bizなら簡単にマニュアル作成ができるため、ぜひ導入を検討してみてください。

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