スキルマップとは? 作成メリット、作り方を解説【テンプレートあり】

最終更新日: 2024.09.18 公開日: 2024.05.14

スキルマップとは?

スキルマップとは、組織にいる従業員のスキルを一覧化した表のことです。これを活用すれば企業は個々の従業員の能力を可視化でき、人材育成の品質向上や従業員のスキルアップにも役立てられます。本記事を通して、スキルマップの作成で企業と従業員が得られるメリット、作り方の手順、作成時の注意点などがわかります。


業務効率化の第一歩「業務棚卸し」の方法とは資料ダウンロード

スキルマップとは「各従業員のスキルを一覧にしたもの」

スキルマップとは、業務で必要なスキルと従業員それぞれが持つスキルを一覧化した表です。組織にとっては従業員の保有スキルやその習熟度を確認する手段として便利なため、もっぱら人材育成に利用されます。企業によっては、このスキルマップを「力量管理表」「力量表」「能力マップ」、また英語で「Skills Matrix」と呼ぶことがあります。

こうした表の作成は、個々の従業員に自身のスキルレベルの正確な理解を促し、キャリアパスを計画してもらうのに便利です。また、組織にとっては人材を適切なポジションに配置する際の参考データとしても役立ちます。

スキルマップ作成で得られる7つのメリット

主なメリットは、以下の7つです。

  • 従業員が持つスキル・能力の可視化
  • 従業員のモチベーション向上
  • 事業の維持・業務改善の効率化
  • 人材育成の効率化
  • 人員配置の適正化
  • 公正な人事評価の構築
  • 人材採用の効率化・定着率の改善

これらのメリットを詳しく解説します。

従業員のスキル・能力の可視化

スキルマップを活用すると、企業が求めるスキルと従業員が持つスキルのギャップを特定できます。このギャップを放置すると生産性や競争力が低下するリスクがありますが、スキルマップを作成することで不足しているスキルを把握し、適切な研修や教育プログラムを計画できます。また、これにより隠れたスキルを発見し、適切なプロジェクトに割り当てることも可能です。

従業員のモチベーション向上

スキルマップの作成は、従業員のモチベーション向上にも寄与します。従業員のスキルセット(業務遂行において必要となる技術や知識の組み合わせ)が可視化されることで、従業員は自分の能力を客観的に評価しやすくなり、成長が求められる分野も明確になります。また、スキルマップのデータが人事評価に反映されれば、努力が正当に評価されていると感じ、モチベーションが向上します。これにより、キャリアアップへの意欲も高まります。

事業の維持・業務改善の効率化

スキルマップは、業務に必要なスキルの不足を可視化します。これを基に従業員のスキル向上を図ることで、組織全体の生産性を高める手助けとなります。さらに、企業の成長戦略や将来の事業活動とスキルマップを照らし合わせることで、今後必要となるスキルを見極めることができます。将来的な経営リスクを回避し安定した事業運営を続けるためにも、従業員に何のスキルを身に着けてもらい、社内でどういう技術継承が必要なのかを確認しておくことは重要です。

人材育成の効率化

スキルマップを活用することで従業員全体のスキルが明確になるため、育成計画を検討しやすくなります。例えば、部署全体で特定のスキルに課題がある場合は、そこを補強できる集中研修の実施がひとつの解決方法となります。
また、特定のスキルを一部の人材だけが保有している場合、その人材の休暇取得や退職によって組織全体のスキル不足につながりかねません。他の従業員にも同様のスキルを習得させることで、組織全体のスキルレベルを効率的に引き上げられます。

人員配置の適正化

勘や経験に頼らない根拠のある人員配置の実現も、スキルマップの利点です。データを参照することで、適材適所かつ従業員が伸ばしたいスキルを踏まえた配置を行いやすくなります。ローテーションによる配属転換や臨時的なイベントの開催、あるいはスキル不足の部署に人材を追加したい場合にも、的確な人材を選択可能です。

公正な人事評価の構築

年齢や勤続年数を重視する年功序列型の人事評価では、向上心がある社員と受け身の社員が同じ評価を受けやすくなります。これにより、意欲的な従業員の不満を招き、退職の原因となる可能性があります。
これに対して、スキルマップを活用すれば、評価基準や上司の判断理由が明確になるため、従業員の納得感が高まります。また、全社的に評価基準を公開することで、公平性と透明性の高い人事評価体系の構築にも役立ちます。

人材採用の効率化・定着率の改善

採用活動において、スキルマップがあれば、自社に不足しているスキルをひと目で把握でき、必要なスキルを持つ人材を効率的に採用することが可能です。求める人材像が明確になることで、採用時のミスマッチも減らせます。また、スキルマップによる明確なデータを参照することで、人材の能力に合った配属先を決定できるため、定着率の向上従業員のモチベーション向上にもつながります。

【7ステップ】スキルマップの作り方

自社に合った的確なスキルマップを作るには、目的を定めて業務に必要なスキルを調査し、項目に落とし込むことが重要です。また、運用の中で改善を繰り返していく必要もあります。以下ではスキルマップの作成手順を7つのステップに分けて解説します。

ステップ1. 目的を定める

まず最初に、スキルマップの作成目的を明確にすることが重要です。目的が明確でなければ、中途半端な内容のものが完成してしまう恐れがあります。スキルマップを作成する理由やどのような点を改善したいのかを、あらかじめしっかり考えておきましょう。

例えば、人事評価を目的とするのであれば、業務遂行能力を正確に評価するための項目設定が求められます。一方で、人材育成を目的にする場合には、従業員の現在の能力だけでなく、その適性や将来的なポテンシャルも考慮する必要があります。

ステップ2. 業務に必要なスキルを洗い出す

目的を定めた後は、業務で求められるスキルを具体的に洗い出します。その際、使用されているマニュアルや業務フローをチェックするなど、業務の流れを細かく観察し、現場の状況を理解することが重要です。
洗い出したスキルは、業務にどのように貢献するか、自社においてどれだけ有効かを多角的に検討したうえで、スキルマップに掲載するかどうかを決めます。客観的な視点で検討することで、実務に役立つ実用性の高いスキルマップが作成できます。

ステップ3. スキルマップの項目を決める

スキルを洗い出した後には、それをどのような項目でマップに反映させるかを検討します。項目を決める際は階層で整理するのがおすすめです。第1階層に業務項目、第2階層にスキル項目を設定しましょう。階層は多すぎると管理しにくいため、3~6階層までに留めます。また、スキル項目の粒度は統一することが重要です。表現が粗すぎると解釈に差が出やすくなり、細かすぎると評価が難しくなるためです。

例えば、カスタマーサポート業務のスキルマップを作成する場合、まず第1階層に「電話対応力」というカテゴリーを作成し、その下に「状況把握能力」「顧客対応力」「問題解決能力」「傾聴能力」「クレーム対応力」などの具体的なスキルを第2階層として細分化します。
第1階層に「メール対応力」を置く場合は、第2階層には「文章作成能力」「問題解決能力」などが含まれます。

項目はスキル以外にも、技術の種類や製品単位で分類する方法もあります。自社で求めるスキルをよく検討し、スキルマップの項目に反映させることが重要です。

ステップ4. 評価基準を決める

スキル項目を決定する際は、各項目の評価基準を明確にしておくことが重要です。資格の有無など簡易な判定には「◯」や「✕」などの二択が適していますが、習熟度を評価する場合は一般的に5段階評価が用いられます。

    5段階評価の例:

  • レベル1:業務のサポートが可能
  • レベル2:指導を受けながら遂行可能
  • レベル3:一人での遂行が可能
  • レベル4:他者への指導が可能
  • レベル5:現場の責任者としての意思決定・業務遂行が可能

また、評価の表示方法も「1~5」「A~E」「◯△✕」などが挙げられます。特に数字は合計値の算出などに便利です。このように評価基準と段階を明確に設定することで、スキルの習熟度を可視化し、従業員が次の目標を設定しやすくなります。

ステップ5. スキルマップを作成する

スキル項目や評価基準が決まったら、それをスキルマップに反映させましょう。階層で整理したスキル項目と評価基準を設定し、従業員ごとに評価を書き込めるように表を作成します。
しかし、スキルマップをわかりやすく作成するのは、ノウハウがないと難しい場合があります。エクセルがよく使用されますが、作成に時間がかかることや、人数が多いと管理が煩雑になることもあります。スキルマップ作成に役立つテンプレートを後述するので、ぜひ活用を検討してください。

ステップ6. テスト運用を行う

スキルマップが完成したらテスト運用を行います。全従業員がスキルマップを活用できるよう、マニュアルの準備も不可欠です。マニュアルには、スキルマップの活用方法や見方だけでなく、導入の経緯や目的も記載すると背景と意図が明確になり、従業員が利用しやすくなります。

テスト運用は、いきなり全体に導入せず、限られたグループや部門で行いましょう。小規模で試すことで、スキルマップの有効性を検証し、本格導入するかどうか判断できます。効果測定や意見交換を通じて、作成段階で見落としていた問題点に気づくこともあります。こうしたテスト運用を行うことで、評価項目や難易度の妥当性を確認し、問題がないかを確かめられます。

ステップ7. 効果の測定を行い調整する

運用開始後はスキルマップ導入の効果を定期的に測定しましょう。運用開始後に修正点が見つかることもあるため、測定結果や現場の意見を踏まえつつ調整する必要があります。

効果測定のデータとして、スキルマップ活用時の従業員のパフォーマンス変化や研修の効果、人材配置を最適化した結果などを集めます。それらをもとにして、スキルマップの項目や評価基準を調整しましょう。このプロセスは定期的に実施し、組織の成長や事業の変化に合わせてスキルマップも進化させていくのが理想的です。

スキルマップ作成・導入時のポイント

スキルマップは、適切に作成・運用することで従業員の能力開発と組織の成長を継続的にサポートできます。その効果を最大化するためのポイントを以下で紹介します。

現場へのヒアリングを実施する

スキルマップを作成する際は、現場の従業員や管理職からの意見を積極的に採り入れることが重要です。現場へのヒアリングを怠ると、スキルマップの内容が実際の業務から離れ、現実的な運用が難しくなります。
ただし、個々人の意見を重視しすぎることがないよう、ヒアリング後は十分な議論を重ねて、スキル項目や評価基準として何を取り入れるべきかを判断しましょう。また、運用前だけでなく、運用後も定期的に関係者にヒアリングし、スキルマップを継続的に更新することが重要です。これにより、業務ニーズの変化に対応したスキルマップを常に活用できます。

業務に合った項目を作る

ヒアリング内容をベースとして、自社の業務実態に合ったスキル項目を作成しましょう。スキルマップに何の項目が必要なのかは職種や実際の業務の流れによって異なります。

例えば、事務職の場合は事務処理能力、資料作成能力、スケジュール管理能力などが必要です。経理職では、これに加えて税務知識も重要な項目となります。営業職なら、商品・サービスの知識やコミュニケーション能力、提案力などがスキル項目として考えられます。このように、業務に応じて必要な項目は異なるため、現場でのヒアリングを細かく行い、自社の実態に合わせて項目を設定することが大切です。

誰が評価するのかを明確にする

一般的には上司か従業員本人が自分のスキルを評価します。ただし、組織によっては他部署や直属外の上司が評価することも珍しくありません。直属外の上司という別の視点で評価することで、これまで気づかなかった従業員の強みやスキルが判明することもあるからです。そこで、評価者は直属の上司に限定せず、仕事の内容や社風、スキルマップの活用目的に応じて柔軟に決めるようにしましょう。

マニュアルを作成して運用する

スキルマップの導入を成功させるには、マニュアルの作成が欠かせません。マニュアルがないと運用が恣意的になってしまい、メリットのひとつである客観的な評価ができなくなる恐れがあります。マニュアルにはスキルマップの目的と使い方、評価基準などをしっかりと記載しておくことが重要です。明文化によって評価の一貫性と正確性が保たれて、すべての従業員を同じ基準で評価できるようになります。また、マニュアルはスキルマップが改定されるたびに更新を行い、常に最新の情報が反映されるようにしましょう。

定期的に見直して更新する

スキルマップは、一度作成した後も定期的な見直しと更新が必要です。業務の変化や市場の動向、技術の進展などにより、新たなスキルが求められる場合があります。あるいは、社員が大きく増減したり、新入社員が入ったりすると、必要なスキルが変化する場合もあります。スキルマップを常に現状に合わせて最新の状態に保つことが、その効果を維持するために重要です。
また、ISO9001(品質マネジメントシステムに関する国際規格)の認証や定期監査では、スキルマップが定期的に更新されているかがチェックされます。そのため、更新期間を半年や1年に設定し、適切に管理されていることを確認しましょう。

従業員に共有する

スキルマップは上層部だけではなく全社的に公開することで、その効果を最大限に発揮できます。全体と共有することで、各従業員は業務に必要なスキルやこれから伸ばすべきスキルを理解して、自主的にスキルの向上に取り組めるようになるからです。また、管理職は客観的な人事評価が可能になるほか、部下への指導もスキルマップに基づいて行えるようになります。

テンプレートを活用する

スキルマップを作成する際は、テンプレートを作成しましょう。ただし、自社でゼロから作るのは時間がかかるため、外部で配布されているものを活用すると効率的です。

ただし、外部のテンプレートは自社の業務体制とマッチするとは限らないので、そのまま使用せずに使いやすい形に変更しましょう。現場のヒアリングで得られた情報をもとに、テンプレートの項目をカスタマイズすることが重要です。自社の状況と組織のニーズに合わせてテンプレートを調整し、実情に即したスキルマップの作成につなげていきましょう。

スキルマップ作成に役立つ2つのテンプレート

スキルマップの作成には、既存のテンプレートの活用がおすすめです。テンプレートを使用することで、作成の手間を大幅に削減できます。ここでは例として、厚生労働省が提供する職業能力評価シートと、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の情報システムユーザースキル標準を紹介します。

厚生労働省のテンプレート

厚生労働省提供のテンプレートは、職業能力の自己評価やキャリア開発に役立つ資料として公開されている、チェック形式の評価シートです。このシートは、事務職だけでなく、外食産業、介護業、電気通信工事業、ホテル・旅館業といった多様な業種・職種に対応しており、幅広い分野での人材評価に活かせます。
テンプレートのダウンロードは下記の厚生労働省のページから可能です。キャリアマップや職業能力評価シート、導入・活用マニュアルをダウンロードできます。

参照:厚生労働省|キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード

情報処理推進機構(IPA)のテンプレート

情報処理推進機構(IPA)提供のテンプレートは、情報技術関連職種に特化したツールです。情報システムの利用者として必要なスキルや知識を体系的にまとめたもので、情報技術を活用する職種でのスキルチェックに活用できます。IT人材に必要なスキルの明確化や人材育成などで悩んでいる場合に特におすすめです。
テンプレートのダウンロードは下記の独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)のページからできます。

参照:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)|情報システムユーザースキル標準(UISS)と関連資料のダウンロード

スキルマップ導入時の注意点

スキルマップを導入する際は、管理の手間がかかる点や効果が出るまでに長期的な取り組みが必要になる点を認識しておく必要があります。

すぐに効果が得られるわけではない

スキルマップを作成・活用したからといって、すぐに目に見える効果は出ません。例えば、各従業員のスキルデータを見て人員配置に反映させたり、必要な従業員に向けて研修を実施したりするなど、具体的な活動を継続して初めて変化が出てきます。短期的な効果は期待せず、長期的にスキルデータを活かした教育や育成などの活動・効果測定・改善というプロセスを繰り返していきましょう。

業務・職場によっては管理工数がかかる

業務や職場によっては、スキルマップの作成や管理に要する工数が予想以上に多くなる場合があり、注意が必要です。例えば、管理対象のスキル項目が多すぎたり、従業員数が多すぎたりしてスキル状況の把握と管理が煩雑になるケースが挙げられます。また、マニュアル化されてない業務があれば、スキルマップに落とし込む際の業務分解やスキルの洗い出しに工数がかかる場合もあります。スキルマップ作成後も、業務状況の変化に合わせて内容を更新するための定期的なメンテナンスが欠かせません。このように、スキルマップの作成や管理には多くの手間がかかることがあるため、導入する前にどれぐらいの工数が必要か見積もっておくようにしましょう。

まとめ

スキルマップは、従業員の能力の可視化や適切な人材配置、人材育成の効果的な実行などに役立つツールです。従業員のモチベーション向上やスキルアップを促すメリットも期待できます。スキルマップを作成する際は、目的を明確化し、現場の意見も反映しながら項目と評価基準を設定していく必要があります。そして、一度作ったら終わりではなく、効果を高めるためにも運用しながら効果測定と改善を繰り返し、定期的に内容を更新していくことが重要です。

この記事をSNSでシェアする

「ビジネス用語解説」の最新記事

マニュアルで生産性革命をおこそう

マニュアルは、上手く扱えば「単なる手順書」以上に大きな効果を発揮します。
生産性の向上はもちろん、「企業を大きく変える」可能性を秘めています。

Teachme Bizは、マニュアルであなたの企業にある課題を解決し、
生産性を向上するパートナーでいたいと考えております。
「組織の生産性を向上したい」「変える事に挑戦したい」と思う方は、
わたしたちと生産性の向上に挑戦してみませんか。

マニュアル作成・共有システム
「Teachme Biz」はこちら