小売業が抱える経営課題とは? 解決の具体策や業種別の現状
デジタル化の進展や消費者行動の変化により、小売業はこれまで以上に変革を求められています。また、人手不足や市場環境の変動など、経営に影響を与える要因も多様化しています。こうした環境のなか、小売業が持続的に成長するためには、最新のトレンドを踏まえた戦略が必要です。
そこで本記事では、小売業が直面する主な課題、業種別の現状、そして課題解決のためのアプローチについて分かりやすく解説します。
目次
小売業が抱える経営課題とは?
デジタル技術の進化やライフスタイルの多様化により、消費者の購買行動は大きく変化しています。以下では、小売業者が直面する3つの主な課題について詳しく解説します。
商品が売れにくくなっている
現在、小売業では商品が売れにくい状況が続いています。その背景には、消費者の節約志向の高まりや、購買行動の変化が影響しています。
物価の変動も要因の一つです。近年、エネルギー価格や原材料費の高騰により、さまざまな商品やサービスの価格が上昇しています。一方で、賃金の伸びが追いついていないため、可処分所得が限られ、消費者が支出を抑える傾向が見られます。
消費市場・消費者行動が変化している
消費者の購買行動に従前との変化が起こっています。
スマートフォンの普及やキャッシュレス決済の拡大などに伴い、実店舗へ足を運んでいた顧客がオンライン上で購入できるECサイトに流れていることが原因と見られます。
これまで実店舗での販売をメインに行ってきた場合には、オンラインでの事業展開も視野に入れなければならないでしょう。
人手が足りない
小売業界は人手不足に陥っています。農林水産省による「卸売業・小売業における働き方の現状と課題について」の調査では、小売業の長時間労働や労働力不足が問題視されています。
参考:農林水産省 食料産業局「卸売業・小売業における 働き方の現状と課題について」
小売業は労働時間が長い上、休みも取りづらく、低賃金でもあるため、ワークライフバランスを充実させづらいという理由から、求職者が集まりにくい状況にあります。この問題に対しては、デジタル化を促進し省力化することによる生産性の向上が、解決の糸口だとされています。
また賃金の引き上げも、労働力不足を改善するためには必要です。
【業種別】小売業の現状
ここからは、経済産業省で発表している「小売業販売」のデータをもとに、小売業の現状について業種別に紹介します。
百貨店
百貨店においては、2024年上期は前年同期比で10.7%増加しています。また、1店舗あたりの販売額も上昇しています。ただし、店舗数が引き続き減少傾向にあります。
スーパーマーケット
スーパーマーケットに関しては、2024年上期の販売額は前年同期比3.4%増加しました。1これは、店舗数と1店舗あたりの販売額の両方が増加したことによります。
コンビニエンスストア
コンビニエンスストアの2024年上期の販売額は、前年比1.7パーセントの増加です。また、1店舗あたりの販売額、店舗数ともに増加しています。
家電販売店
家電量販店においては、情報家電やAV家電の販売額が減少していますが、生活家電やカメラ類などの売り上げが増加しています。前年同期比では、2.2%の増加です。
ドラッグストア
ドラッグストアに関しては、⾷品、ビューティーケア(化粧品・⼩物)、家庭⽤品・⽇⽤消耗品・ペット⽤品などの売り上げが増加し、前年同期と比較して販売額が7.9%増加しています。
ホームセンター
ホームセンターについては、家庭⽤品・⽇⽤品、ペット・ペット⽤品などの売り上げが増加しました。前年同期比では1.6%増加になっています。
小売業の課題解決に向けた具体策
人々の生活スタイルが変化するなかで商品が売れにくくなり、人手も不足している状況において、どのように小売業の課題を解決していけばよいのでしょうか。
ここからは、小売業の抱える課題を解決する具体的な2つの方法について解説します。
DXの推進による業務効率化
まずはDXの推進によって、業務効率化を図ることが解決策として挙げられます。
そもそもDXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称であり、デジタル技術を利用して、より便利な生活を目指す取り組みを指します。DX化を図ることで、組織や業務などのビジネスモデルを革新することが目的です。
常に変化する環境のなかで、競合他社よりも優位性を保つためには、DX化の推進によりIT、デジタルを活用して、業務・サービスの品質向上を目指す必要があります。
例えば、顧客管理や在庫管理、勤怠管理、受発注、キャッシュレス決済などのDX化が進めば、店舗の運営を効率化できたり、顧客の満足度向上につなげられたりするでしょう。
その他にも、従業員にかかる負担が少なくなるので、人材不足や人件費の高騰、職場環境の悪化といった問題を解決する上でも、プラスに働くことが期待できます。
なお、DXの体制構築は、会社の課題を洗い出すことから始まります。
実際にDXの施策を行う際に、自社でのノウハウがなければ、スムーズには取り組めません。その場合には、専門技術や知識を持った外部の企業の力を借りることも検討しましょう。
店頭の「今」を可視化し、わかりやすく指示配信を行い売場作りを強化できます。店頭に早く・確実に陳列する事により売上向上が可能になります。
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ECサイトの強化
スマートフォンの普及キャッシュレス決済の拡大といった事情の変化により、実店舗で購入をしていた消費者のなかにも、ECサイトで購入する機会の増えた人が多くなっています。そのため、小売業においても、今後はECサイトへの強化に力を入れていくことが重要です。
新たな生活スタイルが定着していくなか、人と接触する機会を抑えらえるオンラインでのサービスが成長していく可能性は高いと見られます。
また、ECサイトが広まっている背景には、以前に比べてオンライン上でショップを開くこと自体が容易になったことも理由としてあります。かつてはECサイトや決済システムの構築、サーバーのレンタルなどの手間がありましたが、現在では容易にECサイトを作成できるサービスが多数展開されているためです。
小売業でも、時代の変化に応じて、オンラインでのサービス・マーケティング手法を取り入れていくのがおすすめです。ECサイトと実店舗との両立を実現できれば、より多くの顧客のニーズに応えられます。
小売業における課題解決の成功事例
近年、DXの推進やECサイトとの連携などにより、小売業の新たなスタイルを確立して成功に導いた例も存在します。代表的なものとしては、OMOやサブスク、無人店舗などが挙げられます。従来の小売業のスタイルにこだわらないこれらの業態は、今後の小売業を考える上で重要なヒントを与えてくれるでしょう。以下にそれぞれについて詳しく解説します。
OMO
「OMO」とは「Online Merges with Offline」の略で、日本語に訳すと「オンラインとオフラインの融合」という意味です。ECサイトと実店舗の垣根を設けず、購入から消費まで顧客体験の最大化を図るマーケティング戦略を指します。
オンラインとオフラインの関わりを示す言葉としては、ほかに「O2O」や「オムニチャネル」があります。「O2O」とは、SNSなどのオンラインを駆使して実店舗での購入につなげるもので、「オムニチャネル」はオンラインに限らず電話、カタログなど含めて消費者との接点を増やすことで、最終的に商品の購入につなげる販売方法です。この2つはあくまで販売者側の視点に立った戦略で、最終的な目的が商品やサービスの購入であることが、OMOとは異なります。
OMOの具体的な事例としては、最近飲食店でも取り入れているところが多い「モバイルオーダー」が挙げられます。事前にスマートフォンなどで注文を済ませ、出来た頃に取りにいけば、店舗で行列に並ぶ時間や商品ができるまでの待ち時間が短縮可能です。
ほかにもECサイトの商品を実店舗で試着・購入できるサービスや、近隣の実店舗の商品をオンラインで購入し自宅に届けるサービスなども登場しています。OMOはオンラインとオフライン、片方のみではそれぞれ不便に感じている部分を補いあうことで、課題を解決した成功事例のひとつです。
サブスク
「サブスク」とは、英語の「Subscription」の略で、一定期間ごとに定額の料金を支払うことでサービスや商品の提供を受けられるビジネスモデルのことです。動画や音楽の定額配信サービスが有名ですが、近年は食品や日用品、生花などの定期購入、ブランドバッグや家具、ウォーターサーバーなどのレンタル、家事代行やオンライン英会話など、あらゆるジャンルにサブスク形態のサービスが登場しています。
消費者側のサブスクのメリットのひとつは、気軽に始められることです。高級家具やブランドバッグなど購入を躊躇する高額なものでも、初期費用を抑えながら色々な種類を試せます。また、定額制のため毎月の出費が決まっていることも魅力です。動画配信サービスなどは見放題のものが多いため、たくさん視聴すればお得感もあります。
一方、サービスや商品を提供する側にとっては、長期的に顧客の囲い込みが可能なメリットがあります。サブスクは消費者側のニーズと提供者側のメリットをうまくマッチングさせ、小売業の新たな可能性を切り開いたビジネスモデルと言えるでしょう。
無人店舗
「無人店舗」とは、その名の通り従業員を配置せずに運営する店舗でのことです。近年急速に拡大が進んでおり、大手コンビニチェーンやホテル、スーパーなどでも無人店舗が展開されるようになりました。
無人での運営を実現するのは、AIや顔認証、監視カメラやスマートフォン決済といった高度なIT技術です。例えば大手コンビニの無人店舗では、カメラによって入店客と購入しようとしている商品をリアルタイムに認識し、決済端末で支払いを行います。無人店舗により企業は人手不足を解消でき、24時間営業なども容易になるため売上の向上も期待できます。
また、消費者側にとっても常時店舗が開いていることで利便性が高まるのがメリットです。企業の人手不足が深刻な昨今、今後もこの形態の店舗は増加していくと考えられます。ただ、無人店舗のため盗難や不正利用を防ぐには、十分なセキュリティ対策が必要です。また、システム障害が起こった際の対応策なども考えておかなければなりません。
マニュアルの整備も小売業の課題解決に有効
マニュアルを導入・整備することで、生産性の向上やコスト削減、人手不足の解消につなげられます。時代の流れにあわせ、新たな取り組みにチャレンジしていくことで、小売業の課題を解決することも大事です。しかし、その前段階として、企業内にある既存の問題を根本的に解決しておくことも忘れてはなりません。
現在マニュアルがない企業はもちろん、ある企業の場合にも、マニュアルを今一度見直すことで運営がスムーズになり、問題を一つひとつ解決できる可能性が高いでしょう。整備されたマニュアルによって、業務・サービスのクオリティを一定に保つことができ、顧客の満足度向上につながります。
整備されたわかりやすいマニュアルの存在は、従業員の業務に対する理解度を上げるので、従業員一人ひとりが自信を持って業務にあたることができます。顧客の購買意欲を上げるために、接客の質の向上は、非常に有効な策のひとつです。
また、マニュアルを整備することで従業員の教育を効率化できるという側面もあります。
マニュアルがない場合には、すべての業務を人伝いに行わなければならないため、教育に大幅な時間を割かなければなりません。新しい職員が入るたびに、研修などの時間をしっかり取っている企業もあるでしょう。しかし、そのままでは教育にあたる職員の業務時間がとられ、店舗運営において優先すべき業務に取り組む時間が減ってしまいます。
整備されたマニュアルを用意しておくことで、従業員は効率的に業務の学習を行えます。付きっきりで教育担当者が面倒を見たり、新人研修へ時間を大幅に割いたりする必要がなくなるので、重要なコア業務にも力を入れられます。
加えて、マニュアルがあれば自主的に学習も可能であり、教育がいきわたれば人手不足の防止にもなります。
小売業の課題解決を実現する「Teachme Biz」とは?
小売業の課題を解決するためには、Teachme Bizのマニュアル作成・共有システムを活用することをおすすめします。
以下では、Teachme Bizがどういったサービスなのか、Teachme Bizで小売業の課題を実際にどのように解決できるのかなどを、事例を交えて詳しく解説していきます。
Teachme Bizで解決できること
Teachme Bizでは、マニュアルの作成から、実際の運用までをサポートし、あらゆる課題の解決に役立つサービスを提供しています。
Teachme Bizを活用すると、以下のような問題の解決が実現できます。
- DX化
- マニュアル化
- 業務標準化
- 業務効率化
- 品質向上
- お問い合わせ対応
- コスト削減
- 人材育成
例えば、DX化における懸念点のひとつに、デジタル技術に不慣れな従業員のフォローがあります。Teachme Bizを活用することで、どの従業員に対してもわかりやすく技術の活用方法を伝えられます。
ハードルが高そうなDXの導入も、Teachme Bizのサービスによってスムーズに行えます。
見やすくわかりやすいマニュアルを簡単に整備できることで、特定業務の属人化も防げて、業務の品質向上やコスト削減を実現可能です。
Teachme Bizの導入で課題解決につながった小売業の事例
ここからは、実際にTeachme Bizのサービスを導入して業務改善につながった2社の事例を紹介します。
【事例1】株式会社ビッグ・エー
株式会社ビッグ・エーは、日用品や食料品のハードディスカウントストアとして、東京都、埼玉県、神奈川県、茨城県に229店舗を構える企業です。
株式会社ビッグ・エーでは、年間におよそ1,000人の従業員が入社・退社をしています。そのなかで、新しい従業員が一人で業務をこなすようになるまでには、14日間の日数を要していました。
ところが、Teachme Bizのサービスを新人研修に導入したことにより、研修期間を10日間まで短縮することに成功しました。年間単位に換算すると、新人の従業員研修にかかっていた時間を合計で16,000時間もカットしていることになります。そのため、大幅なコスト削減にもつながっています。
参照:株式会社ビッグ・エー様 – Teachme Biz導入事例
【事例2】まいばすけっと株式会社
まいばすけっと株式会社は、小型の都市型スーパーを提供しており、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県にて1,100店舗以上(2024年2月時点)を展開しています。
まいばすけっと株式会社では、1,100店舗を超える店に在籍するスタッフへ紙のマニュアルを届けるにあたり、抜け漏れが発生していました。また、マニュアルに更新事項があった際には、その内容が確定してから配布が終わるまでに、約2か月もの時間がかかっていました。加えて、従来のマニュアルは、新入社員や外国籍のスタッフなどが見る際にわかりにくいものだったといいます。
Teachme Bizのサービスを導入したことにより、紙のマニュアルがデジタル化され、内容は充実し、従業員にとってわかりやすいマニュアルとなりました。
また、全店舗のマニュアルのクラウド化によって、1店舗につき毎月生じていた5分間の差し替え業務がなくなったため、全店舗で年間合計1,000時間分もの労働時間を削減することに成功しました。デジタル化されたマニュアルには、紙の印刷代などもかからないので、コストを抑えることにもつながっています。
参照:まいばすけっと株式会社 様 – Teachme Biz導入事例
まとめ
移り変わりの激しい時代のなかで、小売業はさまざまな問題に直面しています。市場の動きや消費者行動の変化にあわせて、小売業のビジネスのかたちも変革させなければなりません。
小売業の課題解決には、DX化やECサイト事業への参入、マニュアルの整備などが有効です。Teachme Bizのサービスを活用すれば、DX化やマニュアル化、業務効率化、品質の向上、人材不足の解消などにもつながるので、ぜひ利用してみましょう。