入社手続き、何をすればいい? 会社側の準備や必要書類まとめ
新入社員を迎える前に、会社として準備や手続きを整えておくことは非常に重要です。これらの準備を怠ると、スムーズな業務開始が難しくなり、従業員の早期離職を招くリスクがあります。企業の入社手続きの担当者に向けて、入社前の準備から初回給与支払日までに行う手続きまで、円滑な入社プロセスを進めるためのポイントをまとめています。
目次
入社前に必要な準備と書類
採用が決まった新たな従業員を迎えるにあたり、入社前の準備と必要書類の確認は、スムーズな手続きを行うために欠かせません。特に中小企業では、効率的な対応が求められます。
以下より、必要な準備や提出書類について確認しましょう。
備品やネット環境の整備
新たな従業員を迎える前に、業務に必要な備品やネット環境を整えておくことが大切です。まず、デスクや椅子、ロッカー、パソコンなどの基本的な備品のほか、必要に応じて社員証や名刺、制服などを用意しましょう。
次に、業務用メールアドレスの作成や社内システムのアカウントの設定など、ネットワーク環境の整備も忘れずに行います。また、オフィスビルへの入退室でICカードや指紋・顔認証を使用する場合は、早めに管理会社に申請し、発行や登録を依頼する必要があります。
これらの準備を入社日までに完了し、必要なものをすぐに渡せる状態にしておくことで、スムーズな業務開始のサポートが可能です。
内定者に交付する各書類
内定者には、入社前に以下の書類を交付します。これは、入社手続きを円滑に進めることと、入社後のトラブルを防ぐことが目的です。
・採用通知書
会社が内定者に対して、採用を決定したことを伝える書類です。内定通知としての役割を果たし、内定者に採用の意志を明確に伝えます。
・入社承諾書
内定者の会社への入社意志を確認するための書類です。誓約書としての意味合いを持ち、内定者が署名・捺印し提出すれば、会社が理由なく内定を取り消すことはありません。
・労働条件通知書
会社が内定者に対して、労働条件を明示する書類です。労働基準法に基づいて、雇用契約の内容を記載し、内定者に伝える義務があります。
・雇用契約書
会社と内定者が労働条件に合意したことを記録する契約書です。署名・捺印を行い、双方が保管することでトラブルを防ぎます。
一般的に、返信用封筒を添付し、内定者に記載内容の確認と署名・捺印、返送を依頼する流れです。返送された書類を受け取った後に、入社手続きを進める準備が整います。内定者との信頼関係を築くためにも、これらの書類は慎重に取り扱い、厳重に管理しましょう。
【入社日から】入社手続き 1. 法定三帳簿の作成
入社手続きの一環として、「法定三帳簿」の作成は非常に重要です。法定三帳簿とは、労働基準法で定められた「労働者名簿」「出勤簿」「賃金台帳」を指し、従業員を雇用する会社は、これらの作成と保存が義務付けられています。従業員の労働条件や労務の管理に必要なものであり、労働基準監督署による臨検監督で提出が求められることが多い書類です。
労働者名簿
労働者名簿には、従業員の氏名や生年月日、性別、雇用開始日、業務の種類、退職や死亡の理由・原因などの情報が記載されています。人事や労務の管理に扱うものであり、各従業員の入社時に作成し、その後は記載内容の変更があるたびに改訂が必要です。
保存期間は元々3年でしたが、法改正により5年となり、その間は情報の正確な更新と管理を行わなければなりません。経過措置として、しばらくは3年間の保存が認められていますが、5年間保存しておくことが望ましいです。
出勤簿
出勤簿は、労働基準法に基づいて、会社が従業員の労働日数や労働時間を記録する書類です。記載内容には出勤日や始業・終業時刻、時間外労働、休日労働、深夜労働などが含まれます。
保存期間は労働者名簿と同様、法改正により5年と定められていますが、現時点では経過措置として3年間の保存も認められています。
出勤簿を適切に管理しなかった場合は、法令違反として罰則が科される可能性があるため、会社は正確な記録と適切な保存を徹底しましょう。
賃金台帳
賃金台帳は、会社が従業員への賃金支払いに関する詳細を記録するための帳簿であり、これも労働基準法により、5年間の保存が義務付けられています。記載内容は従業員の氏名や性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間、基本給、手当、賞与などです。
正社員や契約社員、パート・アルバイト、日雇い労働者を含むすべての従業員が対象で、事業場ごとに作成します。不備や廃棄など、適切に管理されなかった賃金台帳も、法令違反として罰則が科される可能性があるため、出勤簿と同様に正確な記録と適切な保存が求められます。
【入社から5日以内】入社手続き 2. 社会保険関連
入社後5日以内に行う社会保険の手続きは、従業員が健康保険や厚生年金に加入するために必要です。手続きには、管轄の年金事務所または健康保険組合への「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」の提出が含まれ、これにより従業員は保険加入者として登録されます。この届出は、入社日から5日以内に提出しなければなりません。
また、扶養家族がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」を提出し、配偶者が国民年金第3号被保険者に該当する場合は「国民年金第3号被保険者関係届」も併せて提出します。これらは、従業員が適切に社会保険に加入し、必要な保障を受けられる形にすることが目的です。
社会保険の手続きは期限が非常に短いため、遅延が発生しないよう早めに対応しましょう。
【入社日の翌月10日まで】入社手続き 3. 雇用保険関連
雇用保険の加入手続きとして、入社日の翌月10日までに、「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄であるハローワークに提出します。対象となるのは、31日以上の雇用が見込まれ、かつ週の所定労働時間が20時間以上ある従業員です。この条件を満たしていない場合は、雇用保険に加入できません。届出には、賃金台帳・労働者名簿・出勤簿の法定三帳簿や労働条件通知書の添付が必要です。
また、雇用保険加入後は、ハローワークから発行される「雇用保険被保険者証」や「雇用保険資格取得等確認通知書」を、従業員に交付しましょう。
手続きには、従業員の個人番号や被保険者番号を記入するため、マイナンバーカードや雇用保険被保険者証を確認しながら進めます。これらの書類は事前に従業員に提出を依頼し、余裕を持って手続きを進めることが大切です。
【初回給与支払日まで】入社手続き 4. 税金関連
税金関連の手続きは、初回給与の支払日までに完了させましょう。これには、源泉徴収に必要な「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出や、社会保険料の控除手続きなどが含まれます。
所得税
所得税の手続きは、従業員が提出した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に基づいて、源泉徴収簿を作成することから始まります。この申告書から、扶養控除などの適用を確認し、月々の所得税額を算出します。
また、転職者の場合は、前職の源泉徴収票も回収することで、年末調整時に正確な税額が確定します。適切に手続きを行えば、給与から所得税が正しく控除される仕組みです。
住民税
住民税の納付方法は、「普通徴収」と「特別徴収」の2種類です。普通徴収は、従業員が自身で納税手続きを行う方法であり、主に個人事業主やフリーランスが該当します。一方、特別徴収は、会社(雇用主)が従業員の給与から住民税を天引きし、代わりに納付する仕組みです。給与所得者は、原則として後者の方法が適用されます。
特別徴収の開始にあたり、会社は従業員に対して「給与所得者異動届出書」を提出し、従業員が普通徴収から特別徴収へ変更する手続きを実施します。この届出書は、従業員が住民税の特別徴収を希望する場合に必要となります。特別徴収が適用されると、会社は毎月の給与から住民税を控除し、その住民税を指定された期日までに納付しなければなりません。
入社手続きでよくある質問
入社手続きは、初めて行う場合やイレギュラーな事情がある場合などに、不明点が出てくるものです。特に、「前職の源泉徴収票がもらえない」や「雇用保険被保険者証を紛失した」が、よくある質問として挙げられます。これらに対する、スムーズに手続きを進めるためのポイントをまとめました。
前職の源泉徴収票がもらえないときは?
前職から源泉徴収票がもらえない場合、まずは支払元に再発行を依頼します。それでも発行されない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することで対応可能です。この手続きを行うと、税務署が介入し、通常は支払先から源泉徴収票が発行されます。
特に、会社が倒産した場合や連絡が取れない場合も、この手続きを通じて解決できます。年末調整や確定申告に必要な源泉徴収票が手に入らない場合は、迷わず税務署に相談しましょう。
雇用保険被保険者証を紛失したら?
雇用保険被保険者証を紛失した場合、最寄りのハローワークで再交付を申請できます。本人が窓口で手続きを行うほか、代理人による申請や郵送での申請も可能です。必要書類として、免許証などの本人確認書類が求められます。
代理申請の場合、委任状と代理人の身分証明書も提示しなければなりません。窓口で手続きを行うと、即日再交付が可能ですが、郵送申請の場合は交付までに約2週間かかります。申請時には、申請書や必要書類の確認を十分に行い、漏れがないよう注意しましょう。
また、雇用保険の加入期間が過ぎていたり、7年以上経過していたりする場合は、新たに加入申請が必要です。
まとめ
新たな従業員の入社手続きは、円滑な業務開始に欠かせない重要なプロセスです。必要書類や備品の準備から、法定帳簿の作成、社会保険・雇用保険の加入、税務関連の手続きまで、幅広い業務を正確かつ効率的に進めることが求められます。しかし、これらの業務は複雑で時間がかかり、担当者に大きな負担をかけることが現状です。
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