HACCP(ハサップ)とは?概要をわかりやすく解説

最終更新日: 2022.05.13 公開日: 2021.09.01

HACCPとは衛生管理の国際的なメソッドであり、危険分析と衛生管理の実行と記録化に重点が置かれています。日本でも2021年6月から「HACCP完全義務化」となりました。

今回は、HACCPとは何であるのか、その概要や導入方法、メリットや問題点について詳しくご紹介します。

マニュアルの整備によってHACCP対応にも迅速に対応することができた魁力屋様の事例をご視聴いただけます。ぜひあわせてご覧ください。

魁力屋様

HACCPとは?

HACCPとは「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の5つの単語の頭文字を合わせた衛生管理方法です。

日本語訳は「危害要因分析重要管理点」で、「Hazar Analysis」が「危害要因分析」、「Critical Control Point」が「重要管理点」を意味します。

HACCPは原料の入荷から出荷までのあらゆる工程において、発生しうる可能性のある危険は何かを分析し、危険を防ぐ衛生計画を立て、それを実行・記録する方法です。

簡単に記すと、このような順番で行われる衛生管理方法です。

  1. 危険を分析する
  2. 衛生計画を立てる
  3. 衛生計画を実行・記録する

「HACCPとは何か?」と問われることがあれば、まずこの3つを思い出していただければ良いでしょう。ただ、食品事業者であればもう少し詳しく把握しておいたほうが良いかもしれません。

HACCPに該当する工程は「入荷」「受入」「製造工程」「製品の出荷」です。ほぼすべての食品事業者が関わる工程であると言えるでしょう。

すべての工程において、まず発生する恐れのある生物的・科学的・物理的な危害要因をあらかじめ分析します。次に危害要因を管理するための対策を講じます。
そして、どの工程で対策を講じれば危害要因管理が可能であるかを検討・実行したのち、管理基準や基準の測定法を定め、それにのっとった測定値を記録します。

この一連の流れを継続的に実施することで、食品事業者は「製品の安全を守るために科学的な衛生管理を行っている」=「HACCPを遵守している」と認められます。

食品事業者のHACCP遵守は、取りも直さず食品を口にする人々の衛生環境の向上に大きく貢献しています。HACCPとは多くの人々の食卓へ安心を運んでくれる大切なメソッドなのです。

HACCPの導入は食品事業者の義務

2018年の食品衛生法の改正に伴い、原則としてすべての食品事業者がHACCPに沿った衛生管理を義務づけられました。もともと食品事業者はHACCPの義務化以前から一般衛生管理を行っていましたが、それよりもさらに詳細な管理が必要だと考えられるようになったためです。

HACCPの実施そのものは改正後すぐに行われたわけではなく、法律公布日(2018年6月13日)から起算した2年以内に施行され、施行後さらに1年間の経過措置期間を設けました。結果として、完全実施されたのは2021年6月からになります。

HACCPを含めた食品衛生法改正が行われた背景には、以下の3つの理由が挙げられます。

  1. 前回の食品衛生法改正から約15年が経過しており、食品・食文化を取り巻く環境やグローバリゼーションに変化が起きていた
  2. 国内における広域的な食中毒の発生率が下げ止まっており、食品による健康被害へのより強固な対応の必要性が生じた
  3. 年の東京オリンピック・パラリンピックの開催や食品の輸出促進の視点から、国際標準に整合的な食品衛生管理が意識されるようになった

この3つの理由は食品衛生法の改正に大きな影響を及ぼし、結果としてHACCPの導入が義務づけられました。そのため、HACCPとは唐突に生まれたものではなく、日本が参加しているグローバリゼーションの中では必然の変化であったと言えるでしょう。

現状におけるHACCPの導入状況とは?

農林水産省では食品事業者のHACCP導入状況の追跡調査を行っています。それによると、2020年度には食品事業者のうちの42.7%がHACCPの「導入を終えた」という結果がでました。

また、「導入途中である」を含めると導入率は60.4%になります。「導入を検討している」と答えた企業は17.3%に及び、関心の高さがうかがえます。

2021年6月からの実施であり、かつ新型コロナウイルス感染症対策によって食品事業者が大混乱していた時期であったにもかかわらず、この割合をマークしていることは快挙と言っても過言ではないかもしれません。

しかし「導入については未定」が11.5%、「HACCPをよく知らない」が10.8%認められます。HACCPが義務化されているのは事実であるため、今後の推進や啓発が必要です。

企業規模別に見るHACCPの導入状況とは?

食品事業者全体を見れば前述の結果ですが、食品事業者の企業規模で比較すると以下のような結果です。

  • 販売金額が50億円以上の企業では9割以上が導入済みである
  • 一方、販売金額が1億円未満の企業では約3割の導入にとどまる

販売金額規模が大きくなるほど、HACCPの導入割合が上昇していることが顕著になっています。

HACCPとは食品管理において非常に優れているメソッドと言えるものなのですが、迅速な導入には多少ならずともコストが必要です。そのため、事業者の規模によって導入割合に差が見られることはやむをえない一面でしょう。

HACCP導入の手順とは?

「7原則12手順」が基本

HACCPは次の「7原則12手順」で導入が行われます。7つの原則の実行準備のために5つの手順が進められ、準備ができれば7つの原則と残り7つの手順が同時に実行されます。

  • 手順1:HACCP チームの編成
  • 手順2:製品についての記述
  • 手順3:意図する用途の特定
  • 手順4:製造工程一覧図の作成
  • 手順5:製造工程一覧図の現場での確認
  • 手順6(原則1):危害要因の分析
  • 手順7(原則2):重要管理点の決定
  • 手順8(原則3):管理基準の設定
  • 手順9(原則4):モニタリング方法の設定
  • 手順10(原則5):改善措置の設定
  • 手順11(原則6):検証方法の設定
  • 手順12(原則7):記録の保持

また、HACCPには以下に示す2つの基準が設定されています。手順は「HACCPに基づく衛生管理」の方が複雑となっており、一方で「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」は比較的簡素な内容です。これまでは基準A、基準Bと呼ばれていましたが、より関係性がわかりやすいようにこのように名称が変更されました。

HACCPに基づく衛生管理 HACCPの考え方を取り入れた衛生管理
コーデックスのHACCP7原則に基づき、食品等事業者自らが、使用する原材料や製造方法などに応じ、計画を作成し、管理を行う。 各業界団体が作成する手引書を参考に、簡略化されたアプローチによる衛生管理を行う。
<対象業者>
・大規模事業者
・と畜場
・食鳥処理場
<対象業者>
・小規模な営業者等

「HACCPに基づく衛生管理」はHACCPの7原則が完全適用され、対象は事業者の規模が考慮されており、主に従業員50名以上の大規模事業者が対象です。また、と畜場や食鳥処理場も対象です。

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」は「HACCPに基づく衛生管理」ほど7原則12手順が重視されておらず、飲食店を中心とした小規模事業者が対象です。

HACCPの手引書

厚生労働省では食品等事業者団体が作成した業種別HACCPの手引書を公開しているのをご存知でしょうか。

小規模な一般飲食店向けの手引書から食品別の製造者向け手引書まで、多岐にわたる手引書が公開されています。

手引書には衛生管理計画策定のポイントから記載例までわかりやすく紹介されているため、HACCPの導入の際にはぜひ参考にしてみてください。

HACCPの導入メリットとは?

コストがかかり、いまだ100%の導入には遠いHACCPですが、導入すれば大きなメリットを享受できるメソッドです。HACCPとは決して食品事業者を締め付けるものではなく、むしろ導入によってメリットを生じさせるものなのです。

調査で見えるHACCP導入のメリット

農林水産省の調査において「導入済み」「導入の途中」「導入を検討している」の回答を選択した企業では、HACCP導入によって生じたメリットを体感しています。

  • 品質・安全性の向上…82.4%
  • 従業員の意識の向上…65.9%
  • 企業の信用度やイメージの向上…48.9%

いずれも食品事業を営む企業にとって好例と言えるメリットであり、HACCPの導入は成功だと考えられます。

「Café&Meal MUJI」に見るHACCP導入事例

たとえばHACCPを導入した「Café&Meal MUJI」では、衛生管理計画と記録の作成により、衛生管理の重要点の明確化に成功しました。重要点の明確化は効率的な衛生管理を実現し、保健所や顧客の問い合わせに対する説明が容易になるという大きなメリットを立て続けに獲得しています。

公的機関や顧客への正確な情報の伝達は、その食品に関わる誰にとっても、安心できることです。HACCPとは多くの人に安心感を与えるものですので、今後の導入の広がりが期待されるところです。

HACCP導入の問題点とは?

メリットが多いHACCPですが、導入に踏み切れない食品事業者もいるようです。ClipLine株式会社が2021年に行った調査によると、HACCPを完全に導入できない事業者は以下のような問題点を感じているとのことです。

  • 管理する人材が足りない
  • 確認事項が多く、完全な対応が困難である
  • 人材を育成している余裕がない
  • 分析、管理部門、書類作成業務などに携わる人材の管理が困難
  • マニュアルがない。手引き書が難しい
  • コンサルティング費用の捻出が難しい
  • 難易度が高い
  • 現場が対応できない

対応可能な人材や資金の確保、知識の習得など、いずれも重要な問題点であることが分かります。このような問題点をクリアできる企業力を持たない食品事業者にとって、HACCPとは難易度が高い義務にあたると言えそうです。

実際のHACCP導入は低コストで可能

HACCPの導入にあたり、コスト面と人材育成面を大きな障害だと感じる食品事業者は少なくないようです。しかし、HACCPとはそこまで導入コストがかかるものではないと言われています。

実際には導入にあたり、高額な設備・機材の設置は不要であり、習得が必要なのは技術ではなく知識であり、手引書があるため厚生労働省は「HACCPとは比較的容易に取り組めるものである」と定義しています。

その理由として具体的には以下の3点が挙げられます。

  • 事業者団体が作成した手引書(厚生労働省確認済)が利用できる
  • 工程における温度管理や手洗いの手順は手引書に定められたとおりに行えば良い
  • 記録方法は簡便である

さらに厚生労働省は以下も表明しています。

  • HACCPとは工程管理(ソフト)の基準である
  • 必ずしも施設設備のようなハード面の対応を求めるものではない
  • 現行の施設設備での対応を前提としている

食品事業者によってはそれでもハードルの高さを感じるかもしれませんが、HACCPは義務でありいずれは導入しなくてはいけません。そのため、難しいことは考えずに「手引書をもとに監視・記録して改善するだけで大丈夫なんだ!」と納得して、HACCPの導入を前向きに検討していきましょう。

HACCP導入で効果を発揮した事例

HACCP導入済みの食品事業者の意見の中には、「手引き書(導入マニュアル)が役に立った」「HACCPの責任者・指導者の養成が功を奏した」というものが散見されました。

これより分かりやすいマニュアルや人材育成が重要であると分かります。また、人材育成にもマニュアルは大いに役立つため、マニュアルを最大限活かせるかどうかがHACCPの導入効果に大きな影響を与えます。

逆にHACCPの導入をためらう事業者の一部は「マニュアルがない」「手引き書が難しい」という理由を述べているため、「分かりやすいマニュアル」の作成は非常に重要だと言えるでしょう。

HACCP導入に欠かせないマニュアルは分かりやすく作成を

HACCP導入にはマニュアルや手引き書が有効であり、必要不可欠です。食品事業者の努力により、小規模な飲食店へ向けたHACCP導入マニュアルが作成され、厚生労働省のチェックを受けたうえで公開されています。

HACCPの導入に関する手間や管理の疑問・問題点は、HACCPの「7原則12手順」をマニュアル化することにより効率的な解消が期待できます。

マニュアルはテキストに頼りがちですが、テキストだけでは読みにくさや難解さを感じる可能性があります。特に文字量が多ければ、分かりにくい印象を抱く人が出てくるでしょう。

「分かりやすいマニュアル」の作成のためには、画像や動画を配置することが効果的です。文字で読むと同時に視覚的・聴覚的な学習ができるため印象に残り、より深い理解と習得に結び付きやすくなります。

画像や動画の配置はマニュアル作成において技術や経験が必要と言われますが、業務効率化のツールとしてリリースされている「Teachme Biz」であれば、専門知識や技術がなくても効率的なマニュアル作成が可能です。

「HACCPとは何か?」「その導入方法は?」というHACCP導入に伴う課題は全て、分かりやすいマニュアルを作成することですぐに解消することができます。食品衛生の管理メソッドとして非常に優れたHACCPのさらなる普及のため、見やすく理解しやすいマニュアルの作成を行いましょう。


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