コールセンターにマニュアルは必要?目的や作成方法を徹底解説
「オペレーターの案内にばらつきがある」「スキルの差が大きい」などの理由により、コールセンターのマニュアルの見直しを検討している企業は少なくありません。本記事では、コールセンターでのマニュアルの必要性をはじめ、必要なマニュアルの種類と記載内容、マニュアル作成の流れとポイントを詳しく解説します。
目次
コールセンターにおけるマニュアルの必要性
コールセンター業務は、各オペレーターのスキルに大きく依存するため、適切なマニュアルを作成することは非常に有効です。
顧客満足度の向上
コールセンターは、カスタマーと直接かかわる重要な部門であり、適切なマニュアルの作成・運用が欠かせません。
マニュアルが用意されていない環境では、「以前はAさんに〇〇と言われたのに、今回はBさんに△△と言われた」など、矛盾やちぐはぐが発生しがちです。適切なマニュアルを用意することで、各オペレーターが自己判断せずに済むので、カスタマーがコールセンターに対する不満を抱く機会を減らせます。
さらに、各オペレーターが一貫した行動を取ることは、カスタマーが安心感と信頼感を得られる要素であり、顧客満足度の向上が期待できます。
オペレーターの離職率の低下
コールセンターで働くオペレーターは、人物像がまったくわからないカスタマーに対して、常に「会社の顔」として適切な案内をしなければなりません。それだけでも緊張を伴いますが、それに加えて、時には理不尽なクレームを受ける場面もあります。
このような事態から、ストレスが溜まりやすくなるのは無理もありません。マニュアルを作成し、よくある問い合わせ内容とそれに対するベストプラクティス、エスカレーションするタイミングなどを共有すれば、オペレーターの業務負荷を減らせるため、離職率の低下につながります。
生産性の向上
マニュアルの作成・運用を通して、可視化した3M(ムリ・ムラ・ムダ)を削減することにより、業務効率化と生産性の向上が実現します。
ここで言う「ムリ」はオペレーターが対応できる業務のキャパオーバー、「ムダ」は不必要な業務や人員による時間や労力の浪費、「ムラ」は業務の不均一性やサービス品質のばらつきを指します。
コールセンターに必要なマニュアルの種類と記載内容
コールセンターのマニュアルとして、一般的には次の種類が挙げられます。
会社の基本知識に関するマニュアル
オペレーターが業務にあたる上で重要なものが、会社の基本知識です。カスタマーに尋ねられた際にすぐに答えられるよう、次の見本にあるような項目を網羅的にまとめることをおすすめします。
【会社概要】
本社と拠点の住所、経営層の名前など、知っておくべき基本情報を箇条書きなどでまとめます。
【企業のビジョン】
会社の歴史や中長期的な目標、企業理念、事業戦略、価値観なども、一貫性のある対応のために欠かせない情報です。
【製品・サービスの情報】
最も多く問い合わせが入ってくることが予想されます。常に最新かつ正確な情報を、わかりやすく伝えられるようにしましょう。
【社内規定(コールセンターのルールなど)】
顧客情報の取り扱い方法やリモートワークのルールなど、業務遂行上の注意事項とルールをまとめます。
ビジネスマナーに関するマニュアル
企業としての信用を損ねないために、ビジネスマナーに関するマニュアルもまとめましょう。誰をマニュアルの対象者にするかにもよりますが、未経験者が入社する可能性も考慮して、初歩的なビジネスマナーも網羅させるとよいです。
【受電・架電のマナー】
- 声のトーンは高めに
- 早口にならないように
- 待たせた場合は「お待たせしました」と言う
- 相手の声が聞こえない場合は、「少々お電話が遠いようなのですが」と言い換える
- NGワード(「もしもし」「でも」「うん」「一応」「あの~」など)
- 相手の話を遮らない、間違いを指摘しない
- 断定しない
- 差別的な表現を避ける(「外人」→「外国人」) など
【敬語】
よく使う表現を箇条書きにしておくと便利です。
- 尊敬語・謙譲語・丁寧語などの違いを理解する
- 二重敬語に注意する
- 間違った敬語に注意する
例:「おっしゃる(尊敬語)」「申し上げる(謙譲語)」「言います(丁寧語)」など
例:「承らせて頂きました」「拝見させて頂きました」など
例「~でよろしかったでしょうか?」 など
【クッション言葉】
言いにくい内容の前置きとして使い、印象を和らげる「クッション言葉」を一覧にしておくとわかりやすいです。
- お手数をおかけしますが
- 差し支えなければ
- 恐れ入りますが
- 申し上げにくいのですが
- もし可能であれば
- ご期待に添えず申し訳ありませんが など
電子機器やシステムに関するマニュアル
コールセンター業務で使用する電子機器やシステムに関するマニュアルも重要です。初めて使用する際にスムーズに操作できるよう、各種デバイス(パソコンやタブレット、スマートフォン、ヘッドホンなど)をはじめ、業務用の各種ツール(CRMシステムやマニュアル支援ツールなど)の操作手順や設定方法、FAQなどを、わかりやすくまとめておきます。
これにより、新しく配属されたオペレーターもマニュアルを見ながら自己解決できます。わからないことが発生するたびに質問しなくて済むので、質問する側とされる側のどちらも負担軽減が可能です。
トークスクリプト・トークフローに関するマニュアル
実践的な会話やスムーズな案内・説明などを詳しく記載した、「トークスクリプト」と「トークフロー」も欠かせません。
【トークスクリプト】
あらゆるカスタマーの質問に対して、どのように答えるのかを具体的にまとめたものです。よく使うフレーズなどを一覧にしておけば、実際の顧客対応にすぐ活かせます。
【トークフロー】
会話の流れが視覚的にわかる図を見ながら会話することで、進行具合を把握しやすくなります。問題の特定や情報収集、手続きを行う場合などに有効です。
コールセンターのマニュアル作成の流れ
次の流れに沿ってマニュアルを作成すると、工程の後戻りなどが少なくなりスムーズです。
記載する情報の収集・洗い出しを行う
まずは、マニュアルを作成する目的を明確化した上で、記載すべき内容を洗い出します。その際は記載する情報の抜け漏れを防ぐために、複数のオペレーターや現場の責任者、関連部署なども交えて、しっかりと話し合いましょう。
異なるポジションの意見を取り入れることで、より実用的なマニュアルが完成します。マニュアルの作成が途中でストップしないように、進行状況も含めて、全体の管理を行う責任者を選定することもおすすめです。
マニュアルの使い方やレイアウトを決めて作成する
紙の資料・冊子として配布するのか、各種ツール(WordやExcel、マニュアル作成ツールなど)でデータを格納・共有するのかを検討します。どれも一長一短ですが、作成・共有・管理における容易さや操作性などを踏まえると、マニュアル作成ツールがおすすめです。タブレットなどの端末でも確認できるので、多様な働き方の推進にもつながります。紙の資料のように紛失の心配もなく、更新するたびに印刷・配布し、旧バージョンを破棄する作業も不要です。
その後、見やすさを最優先して、マニュアル全体のレイアウトを決定します。カテゴリー別や項目別、時系列順など、対象となる業務に合った情報の配置を選びましょう。画像や図(フローチャートなど)、箇条書き、FAQなども活用すると、さらに読みやすくなります。
ロールプレイングで改善点を探して修正する
マニュアル完成後、作成したトークスクリプトに沿って、ロールプレイングを行うことが重要です。違和感があったり不明瞭な部分、企業のビジョンや戦略と合っていない部分などがないか確認します。
改善点が見つかったら、適宜マニュアルを改訂しましょう。その後もPDCAサイクルを回し、精度を上げていくことが欠かせません。
コールセンターのマニュアル作成・活用のポイント
次のポイントを押さえることで、より内容の濃いマニュアルになります。
ペルソナを意識した内容にする
ペルソナ(架空の顧客)を意識した内容にすると、現実的なトークスクリプトを作成できます。ペルソナの設定にあたっては、次のような情報を盛り込むとよいです。
- 居住地
- 年齢
- 性別
- 職業
- 性格
- ライフスタイル
- 家族構成
- 価値観
- 利用している媒体
- 置かれている状況や心情 など
また、ペルソナが抱える課題を複数想定しておくことで、ケース別のマニュアル作成をスムーズに進められます。
現場の意見やベテランオペレーターの作業内容を参考にする
マニュアル作成には、企業のビジョンに合った適切な行動を見極めた上で、それを標準として設定することが重要です。そのためには、現場で活躍する各オペレーターの声を聞かないことには始まりません。各オペレーターが、実際にどのような手順で業務を進めているのかをしっかり理解しましょう。
ベテランオペレーターの顧客対応を録音して、トークスクリプトに活かすことも有効です。その際に、もしも疑問に感じる行動などがあれば、その行動を取った理由などを深掘りします。そうすることで、本質的な課題が見えてくる場合もあります。
業務別にマニュアルを作成する
さまざまな業務が多岐にわたるコールセンターでは、業務やケースごとにマニュアルを作成することで、オペレーターが求める情報をすぐに見つけられます。業務別に整理することで変更や更新も行いやすくなり、常に最新の状態を維持できます。
また、業務やケースごとにマニュアルが分かれていると、新しく配属されたスタッフの段階的なトレーニングにも便利です。ただし、その際は各マニュアル間で矛盾が発生しないように注意しましょう。
専門用語の多用に注意する
新しく配属されたスタッフが初めて読んだ場合でも、すんなりと意味を理解できるように、専門用語の多用に注意を払った書き方が理想です。
どうしても専門用語を使わなければならない場合は、欄外などに簡単な注釈を入れておくとわかりやすいです。トークスクリプトでも同様で、常に「顧客が聞いた際に意味が通じるかどうか」を念頭に置く必要があります。
本格的に運用する前に現場とすり合わせる
マニュアル完成後、運用を始める前にまずは現場とのすり合わせが必要です。マニュアルが実際の業務に適しているかどうか、現場のオペレーターが的確に評価します。オペレーターや管理者からフィードバックを受けたら、より適した形に修正・調整しましょう。
また、オペレーターの意見、いわゆる現場の声をマニュアルに反映させることで、「自分ごと」と捉えやすくなります。これにより、現場におけるマニュアルの積極的な活用が期待できます。
定期的にマニュアルを見直す
マニュアルは一度作成して終了ではなく、継続的に見直して、常に最新の状態を維持しなければなりません。また、定期的に関係者との話し合いの場を設け、マニュアルの効果や課題、改善案などを協議することも重要です。
オペレーターが実際にマニュアルを使用して業務を行うので、現場の声は必ずヒアリングして反映させましょう。これにより、マニュアルの精度が継続的に向上します。
マニュアル通りの対応になりすぎないように注意する
企業として一貫した行動を取るために、マニュアルは重要な指針となります。しかし、あらゆる状況や顧客ニーズに合わせて、柔軟な対応を求められる場面は少なくありません。このような場合は、マニュアルで定められていないアプローチが有効になることも十分にあり得ます。
とはいえ、各オペレーターが毎回「マニュアル外の行動を取ってよいのか」と悩むことは非効率です。そのため、あらかじめマニュアル外の行動を取る判断基準を設けておくことをおすすめします。
また、マニュアルの作成・運用と並行して研修を行い、トークなどのスキルを磨くことも望ましいです。それに加えて、各オペレーターが一貫した行動を取れるように、企業の価値観・倫理観の共有も欠かせません。
コールセンターの応対品質向上にマニュアルは役立つ!
コールセンター業務は属人化が進みやすいため、適切なマニュアルの作成と運用が必要です。マニュアルに沿って、オペレーターが一貫した行動を取ることで、顧客対応の品質向上につながります。
とはいえ、「マニュアルを作成する時間がない」という企業も少なくありません。その場合は、マニュアル作成システム「Teachme Biz」などの活用がおすすめです。Teachme Bizは、テンプレートにテキストと画像・動画を入れるだけで、マニュアルを作成できます。さらにAIを活用することでマニュアル作成・編集の工数を大幅に削減できます。動画の取り込みからわずか15分でマニュアルを完成できるなど、マニュアル作成の工数を90%削減することが可能です。
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