タイFDA輸入許可取得の留意点
タイで製品の輸入販売を始める際、「御社製品はFDA輸入許可が必要です」と指摘された経験がある方もいるでしょう。タイでは食品や化粧品、医療機器などの輸入時に、輸入者がFDAへ登録申請を行い、認証を受ける必要があります。本記事では、その煩雑なライセンス取得における留意点を説明します。
目次
FDAの許認可が必要な製品
FDAとは「Food and Drug Administration(タイ国保健省食品・薬品委員会事務局)」の略称です。その名称から、食品および薬品を主に管轄しているという印象を持たれがちですが、管轄製品には、食品、美容・化粧品、医療機器、医薬品、有害物質、および麻薬などが含まれます。今後の規制状況によっては変動する可能性もありますが、執筆時点(2024年8月時点)では大麻製品も管轄対象で、これら各カテゴリーの製造および輸入販売時には、FDAからの許認可が必要です。
弊社では食品または美容・化粧品に関するご相談が多く、その中でも近年、加工食品やサプリメント製品に関するお問い合わせが増えています。
FDAの申請手続きと留意点
FDAの所在地はバンコク都内中心部から車で約40分の場所にあり、OSSC(One Stop Service Center:ワンストップサービスセンター)という総合窓口で、各種申請や料金納付の受付などの対応を行っています。OSSCでは、FDA管轄製品に関する相談窓口も設けられており、製造または輸入予定の製品がFDAの管轄対象であるかどうか、または各許認可取得に必要な手続きや書類について説明を受けることが可能です。
近年、タイの官公庁ではオンライン申請が主流となり、FDA関連の申請も原則としてオンラインシステムで行われるようになりました。ただし、オンラインシステムの登録にはタイ人名義が必要です(輸入事業者および製品登録時にはタイ法人名義でも可)。申請にあたっては、以下の点に留意する必要があります。
1. FDAの管轄確認
各種申請の準備や必要書類の収集に取りかかる前に、まず確認すべきは「製造または輸入予定の製品がFDAの管轄に該当するか」です。製品仕様や用途によっては、他の官公庁が管轄する場合もあるため、事前に確認が必要です。
2. 製品カテゴリーと管轄部署の照合
FDAの管轄である場合、最も重要なのは「どの部署の管轄に該当するか」を製品カテゴリーと照合することです。日本や他国で美容・化粧品とされる製品が、タイでは医療機器として分類されるなど、タイ独自の定義や解釈が適用されることが多々あります。特に、新技術や新成分を含む製品で、タイでの製造や輸入実績がない場合、担当官によって異なる見解が示されることがあります。類似製品が既にタイ国内で流通していても、成分の含有量が異なるなどの理由で、FDAの許認可取得ができない場合もあります。
3. 法令改定による管轄部署の変更
過去には、医薬品として許認可が必要だった製品が、法令改定により医療機器に分類されるなど、管轄部署が変更されることもあります。申請時点での最新情報を確認することが非常に重要です。
4. 必要書類の収集と情報開示
申請時には、必要書類の収集や情報の全開示が必須です。日本で美容・化粧品とされる製品が、タイでは医療機器として定義される場合、医療機器としての書類収集ができず、申請が不可となることがあります。具体的には、成分・配合表の100%開示(含有率及び配合量等)や製造工程表の提出などが求められます。
まとめ
日本や他国で関連許認可を取得しているからといって、タイでも同様に取得できるとは限りません。タイ独自の定義や解釈により、申請時の必要書類収集や情報開示が不可能となり、許認可取得を断念するケースが多く見受けられます。タイ特有の要件を理解した上で、FDA管轄製品の製造および輸入について検討することをお勧めします。