タイ進出戦略における形態別特徴
日本企業のアジア市場への進出が進む中、タイは依然として重要な投資先として位置づけられている。本記事では、タイへの進出形態を改めて整理し、各形態の利点、課題について解説する。各進出形態の詳細を理解し、自社に最適な戦略を検討するための参考にしてほしい。
日本のアジア投資動向とタイの位置づけ
2023年の日本のアジアへの投資額は33,159百万米ドル(約4兆8,940億円)に上る。図表1に示す通り、近年はベトナムやインドへの投資が拡大しているものの、タイも依然として重要な地位を占めており、2023年の日本からタイへの投資は3,704百万米ドル(約5,467億円)となっている(レートは2024年8月18日現在)。
これを反映するように、多くの日本企業が東南アジアに進出しており、その数は5,800社以上とされている。タイにおいても、2022年にタイ投資委員会で認可された日本からタイへの投資額は49,960百万バーツ(約2,120億円)であり、これはトップの額である。また、バンコク商工会議所の2024年8月現在の登録企業数は1,646社である。
上記のように、引き続きタイは日本にとって重要な地位を占めることが予想され、日本からのタイへの投資や事業展開は継続されると考えられる。そのため、タイへの進出形態を改めて整理したい。
日本企業のタイ進出形態とその特徴
日本企業がタイの顧客をターゲットとする場合、またはタイで事業を行う場合の形態としては、概ね以下のようなものが考えられる。
①タイで拠点を設立せず、日本からタイのマーケットに対し事業を行う
②タイのパートナー、代理店を利用して物の売買やサービスを提供する
③タイで拠点を設立・獲得して、自らタイで業務を行う
このうち、③については、(1)駐在員事務所、(2)支店、(3)現地拠点を設立する場合、(4)他社の現地拠点を取得する場合がある。それぞれの大まかな特徴は図表2のとおりである。どの形態を選択するかは、業種やマーケット、自社の状況によって異なる。
次回以降は、各項目における具体的な態様について紹介する。