保育士・看護師は「本来の仕事」だけに。付随業務の切り出しと障害者雇用チームが生んだ6,000時間

  • 医療・福祉・介護
  • #500名以上1,000名未満
  • #マニュアル作成・更新の効率化
  • #業務の標準化
  • #業務品質向上
  • #属人化解消
  • #障がい者雇用
  • #情報共有
ポイント
導入目的 障害のあるスタッフが自律的に業務遂行できる体制を整える
課題 ① WordやExcelのマニュアルが散在・形骸化。業務品質のばらつきを生んでいた
② 文字中心の複雑なマニュアルと口頭伝承により、障害のあるスタッフへの業務移管が困難
③ 専門職の付随業務の可視化が進まず、障害者雇用チームへの業務切り出し・拡大が停滞
効果 ① 事業部門の創出時間が2023年度2,800時間から2025年度6,000時間超へ拡大
② 障害者雇用チームの担当業務カテゴリーが約10種類から40種類超へ
③ チーム立ち上げから8年間、障害のあるスタッフの離職者ゼロを維持

さまざまな子育て支援事業を展開する認定NPO法人フローレンスでは、WordやExcelで管理されたマニュアルの属人化・更新停滞が組織的な課題となっていました。その突破口となったのがTeachme Bizの活用です。
総務や各事業部の付随業務を請け負う障害者雇用チーム「オペレーションズ」が、Teachme Bizで手順を標準化する仕組みを構築。その結果、保育士や看護師といった専門職が本来の コア業務に専念できる時間を創出し、2023年度は2,800時間、さらに2025年度には6,000時間超へとその成果を大幅に拡大しました。Teachme Bizはオペレーションズ向けの業務マニュアルにとどまらず、全スタッフが日常的に参照する情報インフラとしても機能しています。
総務・障害者雇用チーム ジョブコーチの和田 直美様とマネージャーの天野 祐作様に、成果の舞台裏を伺いました。

お話を伺った方々
和田 直美 様 総務・障害者雇用チーム/ジョブコーチ
天野 祐作 様 総務・障害者雇用チーム/マネージャー

「こどもたちのために、日本を変える」——多様なスタッフが力を合わせる組織

―――フローレンスの活動と、障害者雇用チーム「オペレーションズ」の役割についてお聞かせください。 

天野様(以下、敬称略) フローレンスは「こどもたちのために、日本を変える」を掲げ、訪問型の病児保育、障害児保育、看護、認可保育など10以上の事業を展開する認定NPO法人です。スタッフは約700名在籍しており、現場で活躍する保育士や看護師などの専門職を支える基盤づくりを、私たちが所属する部門が担っています。

和田様(以下、敬称略) ジョブコーチである私の役割は、障害のあるスタッフ11名で構成される業務チーム「オペレーションズ」が、仕事をスムーズに進められるよう支援することです。
フローレンスでは8年前から障害者雇用の取り組みを開始し、オペレーションズは総務業務のほか、各事業部から依頼された業務を請け負っており、請け負い時間を「依頼元の部署に創出できた時間」としてKPI(成果指標)に掲げて運営しています。

総務・障害者雇用チーム ジョブコーチ 和田 直美様総務・障害者雇用チーム ジョブコーチ 和田 直美様

マニュアルの属人化・形式乱立・更新停滞——導入前に抱えていた課題

―――Teachme Biz導入前、当時の組織はどのような課題を抱えていましたか?
天野 組織が急拡大するなかで「ナレッジ共有」の課題が深刻化していました。実際、当時の業務マニュアルはWordやExcelなどさまざまな媒体で作成され、ドライブ内に散在し、バージョン管理の担当者も不在で、何が最新か判断できませんでした。新人が入ったり担当者が変わったりするたびに、口頭確認や業務品質のばらつきが生じ、「属人化」による非効率が法人全体の大きな損失になっていました。

天野様総務・障害者雇用チーム マネージャー 天野 祐作様

和田 その頃、障害者雇用チームでは、専門職の付随業務(清掃や事務など)を切り離して任せる「業務の切り出し」という壁に直面していました。私たちは、総務業務だけでなく、保育や看護といった現場スタッフが担っている付随業務を請け負うことを目指していました。
しかし、事業部門の現場業務は口頭で伝えられているものが多く、マニュアルがあっても文字ばかりで複雑。障害のあるスタッフが一人で理解し、遂行できるものはほとんどありませんでした。また、付随業務の可視化が進んでいなかったため、業務の「切り出し方」がわからず、オペレーションズに任せられる業務範囲が広がらない状況に悩んでいました。

「画像で見ればわかる」——障害の有無を超える、ユニバーサルデザイン

―――Teachme Bizを選定した決め手と、導入当初のマニュアル作成の工夫について教えてください。
和田 最大の決め手は、誰が作っても「わかりやすいマニュアル」に自然と仕上がる仕組みが備わっていた点でした。Teachme Bizは「1ステップ1手順」が基本で、各ステップに必ず画像が付けられ、テキストの文字数制限もあるため、マニュアル作成者は情報が自然に絞られシンプルになり、「一瞬で理解できる」マニュアルが作成できる再現性の高さを求めていました。
―――「障害のあるスタッフに使いやすい」ことは、他のスタッフにとってもメリットになったのでしょうか。
和田 私たちは、特別なツールとしてではなく、全スタッフが迷わず動けるユニバーサルなインフラとして活用しています。
たとえば、障害児保育園ヘレンの清掃マニュアルでは、本文テキストをほぼなくし、画像内に直接指示を書き込む運用にしました。これにより、障害のあるスタッフが働きやすくなったのはもちろん、新しく入職した保育士さんもレクチャーなしで即座に業務に入れるようになりました。
情報を直感的に伝わりやすく整理することが、結果的に「誰にとっても最高に働きやすい」業務環境を生み出すのだと実感しています。

マニュアル障害児保育園ヘレンの清掃業務マニュアルの一例。各ステップのテキストを最小限に抑え、写真で解説することで、誰でも直感的に手順を確認できる構成になっている

天野 使いやすさと更新のしやすさが、法人全体への浸透につながりました。Teachme Bizを全部門・全スタッフの情報アクセス起点として位置づけ、「Teachme Biz内を検索すれば必ず見つかる」という状態を法人共通のルールとして定めたことで、情報分散の問題が解消されました。

「マニュアルと一緒に納品する」——法人全体への展開を生んだ仕組み

―――「法人全体でTeachme Bizが定着するまでのプロセスと、独自の運用の工夫を教えてください。
和田 導入当初、必要性を感じていない部門も多くありました。そこで実践したのが、「オペレーションズが現場の業務を請け負ったら、遂行するだけでなく、その手順をTeachme Bizでマニュアル化して『納品物』としてセットで渡す」という取り組みです。
それを受け取った他部門のスタッフが使いやすさを実感し、結果「次からは自分たちでマニュアルを作ってから依頼しよう」という自発的な動きを引き出すきっかけになりました。
天野 現場での好事例が広がり、全事業部門の責任者が集まる経営会議でTeachme Bizを「法人全体の標準マニュアルインフラ」として位置づける方針が決定され、浸透が一気に加速しました。
現在では2,400件以上のマニュアルが登録されており、あらゆる情報がTeachme Biz内で一元管理されています。
また、各事業部門からオペレーションズへの委託・管理では、業務管理ツール「kintone」と連携させて運用しています。kintoneで依頼業務を管理し、Teachme BizのマニュアルURLを紐づけることで、担当スタッフが作業レコードからそのままマニュアルへ遷移できるようになっています。

作業一覧業務管理ツールと連携したオペレーションズの作業一覧。事業部門から依頼された業務が一覧化され、各行の「マニュアルURL」欄をクリックするだけでTeachme Bizのマニュアルへ直接ジャンプできる

和田 管理アプリを開き、URLをクリックするとTeachme Bizのマニュアルが開く。この流れにより、オペレーションズの担当スタッフが迷わず実作業に入れます。
現在、オペレーションズでは事務・物流・システム管理など、カテゴリーを問わず40種類以上の付随業務を請け負っており、すべての作業にTeachme Bizのマニュアルが完備されています。誰が担当しても品質が均一に保たれるよう設計しており、依頼元の事業部から高い評価をいただいています。

PCのキッティング作業(左)と郵送物・書類の仕分け作業(右)を行うオペレーションズのスタッフ。Teachme Bizのマニュアルに沿って正確に業務を進める姿が、各事業部門からの信頼につながっている

年間6,000時間超の業務創出——障害者雇用チームが組織の「生産性向上の要」へ

―――Teachme Biz活用後の効果について、定量・定性の両面から教えてください。

天野 もっとも大きな変化は創出時間の伸びです。オペレーションズによる創出時間は、2023年度は2,800時間に。さらに2025年度には6,000時間超に大幅拡大しました。保育士や看護師がノンコア業務から解放され、本来の業務に集中できるようになった他、業務のミス減少や経理処理の精度向上といった品質改善効果も出ています。
また、マニュアル整備が進んでいる部門ほど残業時間が少ないという傾向も見られます。「マニュアル化する→オペレーションズに依頼する→コア業務に集中できる」という好循環が機能している部門が、自然と生産性を高めていった実感があります。

和田 オペレーションズの担当業務カテゴリーも、以前の約10種類から現在は40種類超に拡大しています。チームの立ち上げから8年が経ちますが、離職者は現在一人も出ていません。

マニュアル2障害児訪問保育アニー事業向けの、訪問看護指示書・喀痰吸引指示書の更新書類発送手順を示したマニュアル。毎月定期的に発生するルーティン業務を細かなステップで整理しており、担当スタッフが変わっても均一な品質で対応できる体制を整えている

マニュアル3障害児保育園ヘレンの清掃マニュアルの詳細ステップ。電気スイッチ・ドアノブ・エレベーターボタンの拭き方まで、写真で丁寧に示すことで誰でも同じ衛生基準で清掃。障害のあるスタッフも保育士スタッフも同じマニュアルを参照しており、業務品質の統一に役立てられている

社内から社会へ——オペレーションズが切り拓く、次のフロンティア

―――今後、Teachme Bizをどのように活用していきたいですか?

和田 直近では子育て支援事業のSNS用PRショート動画の編集など、クリエイティブな業務への挑戦も検討しています。「どこが見せ場か」という判断基準をTeachme Bizでマニュアル化できれば、動画制作の仕事も依頼として受け入れられると思っています。
天野 法人内での活用を深めながら、障害者雇用に取り組む企業・団体へのノウハウ提供も進めています。『障害者雇用の「困った」を解決!発達障害・知的障害のある社員を活かすサポートブック』も出版する等、精力的に活動しています。
今年からは近隣の企業から清掃業務の委託を受けるトライアルも進めており、「障害のあるスタッフとともに働くことは自然なことだ」という体験を社会に広めていきたいです。
Teachme Bizによる業務の標準化があるからこそ、こうした外部展開が可能になっています。障害の有無にかかわらず誰もが活躍できる組織モデルを、これからも発信し続けていきたいです。

※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2026年3月当時のものです。

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会社概要
会社名 認定NPO法人フローレンス
URL https://florence.or.jp/
所在地 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-14-1 KDX神保町ビル4F
事業内容 訪問型の病児保育、障害児保育、看護、認可保育など10以上の事業を展開する国内最大規模の認定NPO法人。子育て支援と社会課題の解決を両立するさまざまな事業を提供している。

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