導入のポイント
| 導入目的 | 経験に支えられてきた業務を見える化し、教育と業務シェアの基盤をつくる |
|---|---|
| 課題 | ① 手順書が整っている領域が限られ、業務の拠り所となる基準がなかった ② 判断の勘所が担当者の経験のなかにあり、形に残しにくかった ③ 表計算ソフトでの手順書は、作成も更新も検索も負担が大きかった |
| 効果 | ① 6人のグループで30業務以上を共有し、教育と引き継ぎで累計100時間以上を創出 ② AI機能の活用でマニュアル1本あたりの作成時間が約3分の1に ③ マニュアルが要件定義書となり、RPAで年間約150時間分の手作業を削減 |
株式会社ノーリツは、ガス給湯機器を中心に住宅設備機器を手がけるメーカー。同社の資材購買本部 調達企画部 調達基盤・指令グループは、設計変更や新製品の情報をサプライヤーや生産工場へ正確に届ける「指令」業務を担っています。モノづくりの起点となる重要な役割ですが、その判断の勘所は担当者一人ひとりの経験のなかにありました。
そこで同グループは、業務の棚卸しからマニュアル整備に着手。AI機能の活用でマニュアル1本あたりの作成時間は約3分の1に縮まり、取り組みは30業務以上の業務シェアや、RPAによる年間約150時間の手作業を削減、さらに生産管理部や人事部といった他部門へとTeachme Bizの活用が広がりました。2人から始まった取り組みがどのように社内へ波及したのか、前川 加奈様、上木屋 有香様に伺いました。
お話を伺った方々
前川 加奈 様 資材購買本部 調達企画部 調達基盤・指令グループ リーダー(右)
上木屋 有香 様 資材購買本部 調達企画部 調達基盤・指令グループ 主事(左)

モノづくりの起点を担う“指令”業務。経験に支えられていた判断の勘所
はじめに、お二人のお立場と担当業務をお聞かせください。
前川様(以下、敬称略) 資材購買本部の調達企画部で、調達基盤・指令グループの責任者を務めています。役割は、新製品や設計変更の情報をサプライヤーや生産工場へ展開する「指令業務」と、業務改善やDX、自動化などを進める「調達基盤業務」の2つです。
原材料価格の高騰、人手不足、技術の継承など、製造業を取り巻く環境は大きく変わりました。当社では、AIやデジタルツールを活用した省人化や業務改革を進めており、Teachme Bizもその一つです。

上木屋様(以下、敬称略) 私はサプライヤーから入手する納入仕様書の管理や化学物質調査、法規制対応、サプライヤーとの調整業務を担当しています。あわせて業務改善や標準化にも取り組み、Teachme Bizを使ったマニュアル作成と知見の共有を推進しています。

Teachme Bizを使い始める前は、どのような状態だったのでしょうか。
前川 現在の部署へ異動してきたのは3年半前です。それまでは営業部門におり、モノづくりや調達の知識がないまま責任者になりました。
着任してまず苦労したのが、業務の全体像をつかむことです。多くの業務が担当者の深い経験と高度な知識に支えられていました。それ自体は専門性の高さの表れですが、一方で手順や判断基準が個人のなかに閉じ、属人化している状態でもありました。
私たちが担う指令業務は、たった一つの指示のズレが生産現場全体に影響を及ぼす重要な仕事です。だからこそ、人に依存した状態のままでは、将来的に人が変わった際、教育の質や習熟度によって業務品質にばらつきが生じ、安定して業務を継続できないリスクがあります。
ちょうど同じ時期に、長年現場を支えてきたベテラン社員が退職しました。「こういう場合はこう指示する」「こう書けば伝わる」といった判断の勘所は、経験のなかで磨かれたノウハウだけに、意識しなければ形に残りません。積み重ねられた知見を次の世代へ引き継ぐ仕組みが要る。「自分が次に異動するまでには、必ず仕組みとして残そう」と決めました。
現場では、どのような場面に難しさを感じていましたか。
上木屋 業務の手順はわかっていても、「なぜその対応をするのか」までは共有されておらず、担当者が休んでいると判断できない場面がありました。業務に必要な情報や判断基準を個人の手帳や担当者ごとの管理データに残していても、それだけでは別の人が同じように業務を進められるわけではありませんでした。
表計算ソフトでの運用に感じた限界。グループ会社で見た「誰が担当しても同じ品質」の仕組み
Teachme Bizを選んだ経緯をお聞かせください。
前川 はじめは表計算ソフトでマニュアル作成を試みましたが、作成にも更新にも手間がかかり、運用の難しさを感じました。そんななか、業務の一部を委託しているグループ会社(エスコアハーツ)でTeachme Bizを目にしました。誰もが同じ品質で進められる仕組みができており、「これなら自分たちの課題も解決できる。人が変わっても業務を止めずに回していけるし、業務継続の面でもリスクを減らせる」と考え、導入を決めました。
最初はどのように使い始められたのでしょうか。
前川 まずは2人で、所属グループの業務の棚卸しから始めました。どのような業務があるかを書き出し、マニュアルがあれば誰でも進められる業務かどうか、作業時間はどのくらいかを一覧にして分類しました。
Teachme Biz導入に対する反対はありませんでしたか。
前川 導入に大きな反対はありませんでした。当時の上長も業務の標準化や技術の継承に問題意識を持っていたからです。マニュアルの作成数を部門全体のKPIに設定してもらえたことも、取り組みを進めるうえで大きな後押しになりました。
知らない人にやってもらう。つまずいた箇所が、次の一行になる
経験のなかにある勘所は、どのようにマニュアルに落とし込んだのでしょうか。
前川 一度マニュアルにしたうえで、その業務を知らないメンバーにやってもらいます。Teachme Bizのマニュアルだけで進められるかを確かめ、つまずいた箇所を確認し、必要な判断や注意点を書き足す。これを3回ほど繰り返すと、経験のなかにあった勘所が少しずつマニュアルに残っていきます。
上木屋 マニュアルにして初めて、自分にとってやりやすい順番と、初めての人に伝わりやすい順番は違うと気づきました。慣れているから無意識に飛ばしていた手順も、文字にしなければ他の人には伝わりません。

マニュアル作成時間は3分の1に。AIが変えたのは時間だけでなく、作り始めるまでの心理的距離
マニュアル作成では、AI機能を活用されていると伺いました。
上木屋 以前は、操作画面のキャプチャを貼るたびに説明文をゼロから書いていました。今は、キャプチャを順番に貼り、どのようなマニュアルかを一文添えてAI機能にかけます。すると、キャプチャの内容を読み取り、操作ごとのタイトルと説明文のたたき台を作ってくれます。出てきた内容をチェックして整えるだけです。AIがここまでやってくれるのかと驚きました。
前川 一度では仕上げず、数回AIとやり取りを重ねます。「もう少し細かく」と伝えると、基幹システムのどのボタンを押すのかという粒度まで、貼り付けた画面から読み取り、書き起こしてくれます。また、表現のばらつきもAIに指摘されます。例えば、同じ基幹システムでも呼び方が3つほどあり、作成中のマニュアルに混在していました。慣れた社員には通じても、新しく加わった方には伝わりません。指摘を受けて、正式な名称に統一しました。
作ることへの負担も変わりましたか。
上木屋 以前は、時間がかかる、きれいにまとめなければ、という意識が強く、着手のハードルを高く感じていました。今は、まずAIで形にして、後から改善すればよいと思えるようになりました。後回しにしていたものも、まずキャプチャだけ貼ろうと動き出せます。
前川 同じ分量なら、マニュアル作成時間は約3分の1です。以前は難しいと感じていた複雑な業務もマニュアル化しやすくなり、人が判断すべき注意点や勘所に時間を使えるようになりました。
30業務以上を共有し、教育と引き継ぎで100時間超を創出。マニュアルは要件定義書にも活用
活用の効果はどのように表れていますか。
前川 導入から約1年半で、部門のマニュアルは460本ほどになりました。部門の閲覧数も月100件ほどから、2026年に入ってからは月600〜700件へ増えています。今年はマニュアルを使った業務シェアを進め、6人で30業務以上を共有しました。
以前は教える側、教わる側ともに時間が取れず、業務シェアがなかなか進みませんでしたが、今はTeachme Biz内の該当マニュアルのリンクを送り、教わる人がマニュアルを見ながら自分で進められます。その後の問い合わせまで含めると、累計で100時間以上の付加価値創出につながっています。

マニュアル化を進めるなかで、業務の自動化にもつながったそうですね。
前川 マニュアル化によって手順を整理すると、「ここまで決まった流れならRPAで回せる」と気づく業務もありました。数カ月で5業務をRPA化し、年間約150時間の手作業を削減しています。

さらに、マニュアルはRPAを作る際の要件定義書としても使えます。RPAの処理単位ごとにTeachme BizのマニュアルSTEPを紐づけており、RPA作成者以外でも処理内容を確認し、メンテナンスできるようになりました。自動化した業務が新たに属人化してしまうことも防げます。

調達企画部での活用をきっかけに、他部門にもTeachme Bizの利用が広がっていったそうですね。
前川 私自身、Teachme Bizを広げることが仕事ではありません。ただ、自分たちで使ってみて、「これは同じような課題を抱えている部門にも役立つ」と感じたので、普段の打ち合わせや情報交換のなかで、自分たちの成果を話すようになりました。すると、「自分たちの部門でも使ってみたい」という声が出るようになりました。使うことを勧めるのではなく、「どんな課題がどう変わったか」を伝えたことで、少しずつ活用が広がったのだと思います。
Teachme Bizの活用がうまく進む部門には、なにか特徴はありますか。
前川 活用が進む部門に共通するのは、推進する人と作る人がそれぞれいて、複数人で取り組めることです。地道に積み重ねる取り組みなので、仲間がいることが大きいと思います。私自身も、1人ではやり切れませんでした。
私たちの部門では、新規マニュアルの作成だけでなく、既存マニュアルの改善や業務シェアもKPIとして管理しています。作ること自体を目的にせず、実際に使いながら改善し、業務を共有していくところまでを取り組みとして捉えています。
調達企画部での活用をきっかけに広がる、各部門のTeachme Biz活用
(2026年7月 社内アンケートより)
| 部門 | 課題 | Teachme Bizの活用 | 変化・目指す姿 |
| 製造部 | 低頻度作業の手順を覚えておくことが難しく、作業時に確認できる仕組みが必要 | 低頻度作業をマニュアル化し、現場にQRコードを掲示 | その場で手順を確認でき、誰でも作業可能に。技能伝承にも活用 |
| 生産管理部 | 担当者が変わるたびに業務の引き継ぎが必要となり、教育の負担が大きい | 定例業務やシステム操作の手順をマニュアル化し、教育にも活用 | 誰でも同じ手順を確認でき、新任者教育もスムーズに |
| 生産企画部 | 年1回などの低頻度業務は、担当者が異動・退職すると業務内容の確認から必要になる | 低頻度業務の手順や改善提案の規定・ルールをマニュアル化 | 必要なときに業務内容を確認でき、引き継ぎを時短。問い合わせも減少 |
| 人事部 | マニュアルのわかりやすさが作成者によって異なり、業務品質を揃えにくい | 人事制度・勤怠・考課などの運用ルールをマニュアル化 | 問い合わせが減り、業務品質の標準化と引き継ぎを効率化 |
| 品質保証推進本部 | 過去に作ったマニュアルが更新されず、必要なときに使えない | 監査対応や予算立案などのマニュアルを整備 | マニュアル作成を効率化。予算立案業務などの引き継ぎに活用予定 |
| 業務改革推進部 | 業務プロセスが見えず、業務改革のたびに膨大なヒアリングから始める必要がある | 業務プロセスを見える化し、改善・自動化の基盤に | プロダクツ統括本部の間接人員が大幅に減っても回せる業務体制を目指す |
| エスコアハーツ(グループ会社) | 障がい者への指導時に、口頭による説明だけでは理解出来ない場合がある | 日常業務からイレギュラー対応まで幅広くマニュアル化 | 業務指導・継承を円滑にすると共に、品質の向上・安定化を実現。ある作業ではミスが月3件程度から0〜1件に減少 |
個人の経験に頼る組織から、知識が資産として残る組織へ
今後の活用についてお聞かせください。
前川 現在はプロダクツ統括本部の業務改革プロジェクトにも加わっています。モノづくりは、研究開発、生産管理、資材購買、品質保証など多くの部門の連携で成り立っています。業務プロセス全体を見える化し、部門を越えた改善につなげていきたい。マニュアルは、その基盤です。
上木屋 私にも、まだ自分しか知らない業務があります。急に職場を離れることは、誰にでも起こり得るからこそ、自分しか知らないことを形に残しておきたい。必要なときに誰もが確認できる、業務の隣にいつもマニュアルがある状態にしたいのです。
同じ課題を抱える企業へ、メッセージをお願いします。
前川 人手不足やベテラン社員の退職、AIの進化と、環境が大きく変化するなかで、個人の経験や知識を組織の資産として残すことが、ますます重要になっています。最初から大きな改革を目指す必要はありません。まずは一つの業務を見える化し、標準化する。そこから始めてみてください。

※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2026年7月当時のものです。
会社概要
| 会社名 | 株式会社ノーリツ |
| URL | https://www.noritz.co.jp/ |
| 所在地 | 〒650-0034 兵庫県神戸市中央区江戸町93番地 |
| 事業内容 | 温水空調分野・厨房分野における住宅設備機器の製造、販売、サービス。ガス給湯機器や温水暖房機器、厨房機器を国内外で展開し、暮らしの快適さと省エネルギーの両立を追求している。 |
