本社と製造現場が一体で挑む技術伝承。教育工数を年間800時間削減し、グループ全体の品質改善へ

  • 製造業
  • #500名以上1,000名未満
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ポイント
導入目的 世代交代を見据え、ベテランの技術やノウハウを可視化し、確実な技術伝承につなげる

課題 ① 今後迎える多くのベテランの定年退職を前に、技術伝承と属人化解消が急務だった
②文字や静止画の手順書では、手先の細かな「作業のコツ」が伝わりづらかった
③ ジョブローテーションのたびに教育担当者がつきっきりで教える必要があり、教育負荷が大きかった
効果 ① 動画を活用して技術伝承を推進し、教育工数を年間800時間削減
②製造現場の実作業を可視化し、設計部門へのフィードバック精度が向上
③ グループ一体の品質改善活動が評価され、ISO監査で2年連続「Good Point」を獲得

ひずみゲージ(※)のパイオニアとして、約1.7万機種におよぶ少量多品種生産を3拠点で支える株式会社共和電業。今後多くのベテランが定年退職を迎えるなか、技術伝承と属人化の解消が大きな課題となっていました。そこで同社はTeachme Bizを導入し、現場の若手主導で動画を活用した手順書整備を推進。言葉や静止画だけでは伝えきれなかった作業のコツやノウハウを可視化し、誰もが学びやすい環境づくりを進めました。教育時間が15分から5分へ短縮し、年間800時間の教育工数削減を実現。さらに、その取り組みはISO監査でも高く評価されています。技術伝承と品質改善に向けた先進的な取り組みについて、共和電業の上坂様、甲府共和電業の丸茂様、山形共和電業の村岡様にお話を伺いました。

※物体が引っ張られたり圧縮されたりして生じる「ひずみ(変形量)」を測定するセンサー

お話を伺った方々
上坂 直弘 様 株式会社共和電業 品質・製品本部 品質保証部 製品・信頼性技術課 次長 信頼性技術チーム課長
丸茂 拳渡 様 株式会社甲府共和電業 製造部 グループ1 主任
村岡 佑磨 様 株式会社山形共和電業 製造部 変換器第1グループ

ひずみゲージのパイオニアが3拠点で挑む、約1.7万機種の少量多品種ものづくり

―――御社の事業の特長と強みについてお聞かせください。

上坂様(以下、敬称略) 共和電業は、ひずみゲージのパイオニアとして1949年に創業し、目に見えない微細な「ひずみ(変形)」を計測・解析する技術を磨いてきました。自動車の衝突試験や橋梁・ダムなどのインフラ計測、ロケットや風力発電の研究開発まで、一瞬の挙動をミクロン単位で捉える領域でご活用いただいています。

物理的な変化を電気信号に変える「センサー」から、その信号を正しく処理・分析する「測定器」、さらには解析ソフトまで一貫して自社提供できる総合力が、当社の強みです。

―――生産体制と各拠点の役割について詳しく教えてください。

上坂 調布(本社)が設計・生産管理を担い、山形と甲府の2つの生産拠点と連携しています。山形共和電業は、物理的な変化を捉える「ひずみゲージ」や各種センサー、甲府共和電業はその信号を数値として処理・分析する「電子計測機器」全般を生産しています。

人間に例えると、山形は「モノの状態を捉える神経」、甲府は「神経からの情報を処理・分析する頭脳」にあたる製品群を扱っています。グループ全体で扱う機種数は約1.7万に及び、お客様の多種多様なニーズに対し、高品質な製品を希望の納期でお届けできる体制の構築に日々取り組んでいます。

上坂様品質・製品本部 品質保証部 製品・信頼性技術課 次長 信頼性技術チーム課長 上坂様。設計改善やDX化でクレームの未然防止を担い、グループ全体のTeachme Biz導入を推進。

ベテランの世代交代が突きつけた、技術伝承と属人化解消という経営課題

―――Teachme Biz導入以前、どのような経営課題がありましたか。

上坂 中期経営計画において「IT環境の再構築によるグループ全体のものづくり力の強化」を掲げる中、最大の経営課題が「技術伝承」と「業務の属人化からの脱却」でした。山形では、今後多くのベテラン従業員が定年退職を迎える世代交代に直面しており、長年蓄積された技量やノウハウの形式知化が急務となっていました。

行動指針共和電業グループの行動指針である「KYOWA WAY」。全社一丸となって「技術伝承」と「業務の属人化からの脱却」という大きな経営課題の解決を目指す。

また、当社の製造現場は、少量多品種生産を行っていることから、製品ごとに作業の勘所が異なります。そのため、作業者の経験や技能に依存しやすく、属人化の解消が大きな課題となっていました。

こうした環境だからこそ、多能工化を進めるためにジョブローテーション制度を運用しています。しかし、人が入れ替わるたびに教育担当者がつきっきりで指導する必要があり、教育には多くの時間と工数がかかっていました。「前に一度教わったのに、今さら聞きづらい」と感じる社員も少なくありませんでした。

さらに、数年ぶりに生産する製品も少なくありません。ベテランが1人退職するだけで、その製品をつくれる人がいなくなり、生産停止につながるリスクもありました。そのため、個人の経験に頼らず、誰もが同じ品質で作業できる仕組みづくりが急務だったのです。

年間数百件の仕様変更。個人のPCによる手順書と、伝わりづらい「手先のコツ」

―――従来のExcel手順書の運用には、どのような課題があったのでしょうか。

丸茂様(以下、敬称略) 製造現場では、設計書だけでは見えてこない「実際の組み立て順序」や「熟練者が培った作業のコツ」を書き加えた手順書をExcelで作成していました。しかし、多品種ゆえに年間数百件もの仕様変更や改善に運用が追いつきませんでした。

改訂内容が個人のPC内に留まり、共有フォルダへ反映されないこともあり、作成者によって情報の粒度やレイアウトにもばらつきが生じていました。

さらに、文字と静止画では、細かいニュアンスの伝達に限界がありました。ネジを締める順番や接着剤の量、機器の具体的な操作手順といった手先の細かな「コツ」。これらが正しく伝わらず、最終工程の検査段階で形状の違いなどが発覚し、修正のための後戻り作業(タイムロス)が発生するケースもありました。

一人ひとりの高い意識や責任感に支えられて重大なクレームには至っていません。しかし、現場の安定稼働は個人の注意深さに依存しており、心理的負担が大きかったです。

甲府共和電業 製造部 グループ1 主任 丸茂様。甲府拠点にて現場教育や動画委員会のとりまとめを担当する。

―――現場(甲府・山形)と設計(本社)の連携にも課題があったと伺いました。

村岡様(以下、敬称略) 手順が複雑な製品では、設計と製造で認識合わせが必要な場面が多々あります。「製品の組み立て方」や「特殊な手順」に関する現場の気づきや疑問を、離れた拠点にいる設計側へフィードバックする際は、静止画や口頭での説明に頼らざるを得ず、細かなニュアンスや複雑な動作が伝わりきれませんでした。

村岡様山形共和電業 製造部 変換器第1グループ 村岡様。山形拠点にて、動画委員会 委員長を担当する。

上坂 例えば、現場から「複数のネジを締める作業」の説明を受けても、ネジを締める順番が言葉だけでは伝わらず、作業の全体像を把握するまでに時間がかかることが多くありました。どうしても伝わらないときは、Web会議を開いたり現地まで出向いたりするしかなく、相応のコミュニケーションコストが発生していたのです。

現場の若手主導でノウハウを手順書化。拠点を超えてノウハウを共有し合う体制へ

―――現場の課題解決に向けて「投資をしよう」と決まったきっかけは何でしたか。

上坂 設備導入や増員をしても、ノウハウが必要なため簡単には解決しないと考えました。そこで、ノウハウそのものをIT化して残すため手順書の改善に踏み切りました。導入の目的は、①技術・技能の伝承、②確実な作業の実施、③設計へのフィードバック、④手順書作成負荷の低減、の4点でした。

Teachme Bizを選んだ一番の決め手は、細かな作業のニュアンスを動画で伝えられること。加えてフォーマットが統一されているため、誰が作成しても一定品質の手順書を作れる点も評価しました。各拠点の社員が実際に触り、「これなら自分たちでも作れる」と直感的に納得しました。

―――社内浸透はどのように行いましたか。

上坂 導入から半年が経つ頃、通常業務に追われて手順書作成が後回しになってしまうという運用の悩みに直面しました。そこで各拠点から「手順書作成を促進させるため委員会を立ち上げたい」という声が上がり、甲府・山形で若手を中心に動画委員会を設立しました。週1回・2時間の「マニュアル作成時間」を業務として正式に確保し、継続的に作成できる体制を整えました。

村岡 ベテラン層が退職していくなか、作業の技術やノウハウを継承していかなければ、自分達やさらなる若い世代が困るという危機感を現場全体が感じていました。そのなかで継承したい内容を写真や動画にまとめられるということが、「従来の手順書よりも効率的で、作業自体もラクになる」という期待がありました。だからこそ、新しいツールでも前向きに受け入れられたのだと思います。

動画委員会動画委員会の様子。入社5年目以降の若手が中心となり、年間のスケジュールを引きながら必要な手順書を作成している。

丸茂 作成する際、細かいルールはあえて設けていません。誰が・いつ・どの箇所を更新したかはTeachme Bizに記録されているため、ルールで縛らなくても現場の主体性を引き出して運用できていると思います。

手順書を作成する際、「言葉で説明しにくい部分は、動画で見せる」という考え方を共通認識にしています。文章で細かく説明しようとする負担が減り、作り手も迷わず手順書を作れるようになりました。

甲府・山形のマニュアルはそれぞれフォルダで分けて管理していますが、双方で閲覧できる状態にしています。山形が整備した手順書作成のコツは、甲府でも積極的に参考にさせてもらいました。拠点が異なっても、それぞれの現場で困っていることを共有し合える同じ立場のメンバーがいる、それが大きな心強さとなっています。

 

ルール手順書の作成ガイド。注意点や補足の文字色分け、写真画像と動画の使い分けなど見る側の目線に立ったわかりやすい手順書づくりのコツを紹介。

年間800時間の教育工数を削減、約1,000万円の経営効果を実現

―――具体的な活用シーンについて教えてください。

丸茂 大きく分けて4つのシーンで活用しています。メインとなる「製品の製作手順や装置の操作方法」、「製品出荷前の外観や付属品の最終確認」、毎日行わないからこそ忘れがちな「設備のメンテナンス」、そして物流業務や事務手続きなどの「製造以外の特殊作業」です。

「製品の製作手順や装置の操作方法」では、「良い手順」だけでなく、やってはいけない「悪い例」も画像や動画で比較して載せており、次の作業者が理由を理解してミスを防げるよう工夫しています。

作業中設備のメンテナンスは毎日行わないからこそ忘れがちな作業。タブレットで手順書を参照し、装置の前で誤操作なく作業を進められる。

作業2出荷前の最終確認はミスが許されない工程。手順を確認しながら、外観や付属品を実物と照らし合わせて確認することで、出荷品質を担保している。

pad装置に貼り付けたQRコードを読み込み、開始手順書をタブレットで確認。装置の前で、迷わず正確に操作できる環境が整っている。

―――教育や業務引き継ぎでの効果はいかがですか。

丸茂 以前の文書ベースの手順書では、情報不足を補うため「手順書の作成者が必ず複数回、対面で引き継ぎ説明を行う」という厳しいルールがありました。そのため、教える側に大きな負担が生じていました。
それが今では、動画で細かなノウハウや手の動きを補えるようになり、対面説明に頼らなくても確実に技術が伝わるようになりました。

これにより、一つの作業説明にかかる時間は15分から5分へと約3分の1に短縮され、教える側・教わる側双方の教育時間を年間約800時間削減。教育工数の削減だけでなく生産性向上にもつながり、金額換算で年間約1,000万円に匹敵する大きな経営効果を生み出しています。

現在は、教育時間の削減によって生まれた時間で別の手順書を作る循環が動き始めており、確実な技術伝承と多能工化が加速しています。

Teachme Bizによって「いつでも正しい手順を動画や画像で確認できる」環境が整ったことで、現場の安心感は確実に高まりました。新しいメンバーにも新たな作業を任せられるようになり、担当外の製品を急きょ任された場合でも、自信を持って作業に着手できるようになっています。

確認手順書を画面に表示しながら作業を進める様子。動画と画像で手順を残すことで、誰でも迷わず同じ品質の作業を再現できる。

設計レビューの精度が向上。グループ一体の品質改善でISO監査2年連続高評価

―――設計部門(調布)や拠点間(甲府・山形)の連携にも変化はありましたか。

上坂 Teachme Bizを見れば、現場の実作業を設計者が確実に把握できるようになり、設計レビューの精度が向上しました。動画で実際の作業を確認できるため、設計と生産拠点間の認識合わせもスムーズになりました。

製品の具体的な製造手順をあらかじめ知ることで、新製品を設計・開発する段階から、より効率的な作業手順を組み込めるようになります。今後のものづくりにおいて、非常に役立つ取り組みになると期待しています。

 

マニュアル動画を用いて現場の実作業を確実に可視化。設計レビューの精度向上や拠点間の円滑な連携を支える。

また、Teachme Bizを活用したグループ一体の品質改善活動は、ISO監査において2年連続で「Good Point(優良事例)」として評価されました。審査官からは「現場と一緒に共和グループ全体で取り組んでいる点が素晴らしい」とのコメントをいただいています。

OJTの体系化を進め、「企業文化を変えるツール」として3拠点をつなぐ

―――今後のTeachme Biz活用についてお聞かせください。

丸茂 手順を伝えるだけに留まらず、「社内OJTの体系化」に取り組んでいきたいと考えています。新人教育の流れを示したロードマップや、当社で扱う電子機器の基礎知識も動画で手順書化し、誰が教育担当になっても教えるレベルに格差が出ない状態を目指します。会社全体の知識・技術レベルを底上げし、全員がさらに自信を持って働ける組織につなげていく方針です。

上坂 運用開始から3年。これまで直接の交流がほとんどなかった山形と甲府が、「共通のツールを介してお互いの良い点を教え合う文化」が生まれました。手順の見える化や情報共有にとどまらず、企業文化を良い方向に変えるツールとしての役割を担えたことは、導入時には想定していなかった効果です。
今後は、各拠点と合意形成を図りながら事業継続に向けた取り組みをさらに進めていきます。

※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2026年4月当時のものです。

会社概要
会社名 株式会社共和電業
URL https://www.kyowa-ei.com/
所在地 〒182-0021 東京都調布市調布ヶ丘3-5-1
事業内容 ひずみゲージ・各種センサー、ひずみ測定器・記録器・システム製品など計測機器全般の製造販売と、各種計測コンサルティング。1949年の創業以来、約70年にわたり「ひずみ(変形)」を計測・解析する技術を磨き、自動車の衝突試験、橋梁・ダムなどのインフラ計測、研究開発分野で産業と学術の進歩を支えている。

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