移行に手間取るほど「何のために導入したんだ?」と疑問視される。新システム定着は時間との戦い──Salesforce 導入 〜 定着 の道のり Vol.8 株式会社サンブリッジ様(前編)

左から株式会社サンブリッジ 東島さん、小野さん、宗像さん

<よくある課題と解決のアクション>
セールスフォース・ドットコム社設立当初からのパートナーである株式会社サンブリッジは、これまで 900 社・2,400 プロジェクト以上の導入~定着を支援してきました。もちろん自社でも Salesforce を徹底的に活用しており、効率的な営業活動を実現しています。2019年 7 月にはリリース直後の Teachme Biz for Salesforce の第一号パートナーとなり、定着に悩むクライアントへのサービスを更に充実させています。
まずは前編として、コンサルタントとして多くの企業をサポートしてきた宗像 千佳さんと東島 行輝さんのお二方に、現場(一つの部署や小規模組織)での導入~定着の際に注意すべきポイントを伺いました。
なお、今回は CEO・小野 裕之さんにもお話を伺い、経営者・役職者に理解してもらいたい Salesforce のメリットや、全社(大規模組織)で導入した際の成果・注意点も伺うことができました。他部署・他拠点への拡大を予定されている、あるいは現在導入を検討されている企業の方は、ぜひ後編もあわせてご覧ください。
目次
効果を実感するためには約 3 ヶ月分のデータが必要。スケジュールはできるだけ圧縮する
──まずはクライアント企業のパートナーとして Salesforce 導入〜定着を支援しているお二人に聞いていきたいと思います。プロジェクトを始めるにあたって、最初に注意しておくべき点は何でしょうか?
東島:
要件定義の段階で一つポイントがあります。Salesforce はデータ入力を行ってもらう営業の方に負荷を強いることになるので、正しくデータが蓄積されたときに相応の効果やメリットを感じられるように設計しなければなりません。
ですので、導入前には現場の情報を集約できる方がキーマンになります。現場から「こんな風にできないか」「一応こういうデータも欲しい」など、たくさんの意見・要望を聞き出し、実装前に精査する必要があります。また、プロジェクトチームに経験者がいない場合、標準機能でできることをカスタム開発要件に加えてしまうといった設計ミスも多いので、Salesforce の世界観や機能を理解した方がハブになる必要があります。当社のようなパートナーが支援する場合、このハブの役割も担います。
宗像:
様々な企業の支援をさせていただいてきましたが、社内の意見を集約できる方がアサインできない場合、大規模なプロジェクトの成功は難しくなります。
本当に大変だったプロジェクトでは、うまく仕様がまとまらず、会議の場で「うちの部署はこうしたい」と喧嘩が始まったこともあります(苦笑)。
──組織が大きくなるほど、運用以前に要件定義での苦労も大きそうですね。
東島:
当社の事例ですと、まずは一つの営業部など小規模でスタートして、Salesforce のメリットや機能が浸透してから徐々に拡大していく企業も多いです。導入~定着の労力を考えると、順繰りに導入していくほうが良いと思います。
宗像:
小規模に始めると、導入から定着までのスケジュールを圧縮できるというメリットもあります。開発以外にも
・旧システムからのデータ移行
・マニュアル作成→修正の認識合わせ
・管理者向け/現場向けトレーニングのスケジュール調整と内容決め
・社内管理者・講師の擁立・業務の調整
・社内管理者・講師の教育
・現場社員の教育
・運用開始後の社内問い合わせ対応
というタスクがあるので、導入する組織の規模によって、時間と労力にはかなりの差が出ます。

プロジェクトの進め方の例
そもそも、Salesforce の効果が実感できるまで辛抱強く待てる企業は多くありません。定着に時間がかかると「何のために導入したんだ?」と疑問視する声が出てきてしまうので、スケジュールはできる限り圧縮することが重要です。
──Salesforce のメリットを実感できるまでにはどれくらいの時間が必要ですか?
東島:
スモールスタートの場合、運用開始から 3 ヶ月が目安だと思います。売上予測などは見えるようになるまで、ある程度は辛抱してデータを蓄積していただきたいです。
──ちなみに、運用開始前のトレーニングには通常、どれくらいの期間がかかるのでしょうか?
宗像:
小規模でも 1 ヶ月はかかります。マニュアルは実際の業務フローにあわせて作りこみ、トレーニングも複数回実施することがありますから。
また、講師やプロジェクトリーダーを担当される方は 運用開始前後の1 ヶ月の間ほぼ通常の業務ができなくなるので、他の方に業務を引き継ぐなど Salesforce のプロジェクトのために時間を割いていただく必要があります。定着に時間がかかると、講師の方の通常業務への復帰も、Salesforce 活用のタイミング自体も後ろ倒しになってしまいますね。
定着化が遅れてしまう要因と対応策を事前に把握しておく
──Salesforce 定着完了までのスケジュールが伸びる要因としては、どんなものがありますか?
東島:
テスト環境と本番環境のギャップには要注意です。テスト環境でのテストでは問題ないとされていても、実際に本番環境で Salesforce の運用が始まった際に障害が発生することは少なくありません。ですので、開発を終えて受け入れテストを行う際は、動作だけ簡単に検証するのではなく、ある程度リアルに近い状態で実施していただきたいです。
宗像:
テスト環境にもある程度のデータ量を用意して、実際の業務に沿って検証していただく形がベストです。当然のことですが、運用開始後ではなく、テストの段階で不具合を見つけられたほうが定着をスムーズに進められます。
東島:
また、そもそも元のシステムに蓄積されているデータ量が膨大だと、Salesforce に移行するだけでも時間がかかります。セキュリティの問題があるので実データを扱う業務はパートナー企業でもお手伝いできませんし、事前に準備しておかなければスケジュールの遅延要因になりがちです。
──長年使ってきた管理システムからの移行となると大変そうですね。運用開始後はどうでしょう?
宗像:
特に営業部門で SFA として運用する場合は、定着化まで辛抱強く Salesforce を使い続けていただくことが難しいと感じます。
まず “商談管理” という考え方を理解し、Salesforce 特有の意味での “活動” と “商談” を区別する必要がありますが、Excel 管理では同じ行に入力されていることも多いので、戸惑われることが多いんです。
そして現場の社員は「Salesforce を使っても使わなくても自分たちの仕事は変わらない」と、考え方やデータの入力方法を覚えること自体を面倒に感じる方も多いようです。
──「わからない」上に「覚えるのが面倒」という問題ですね。営業現場での定着がうまくいった企業の例はないでしょうか?
宗像:
アメとムチをうまく使い分けておられる企業は上手だなと思いました。
「営業の社員は自分の商談を Salesforce に入力していなければ仕事をしているとみなさない」というルールにして、個人の “行動の成績” を開示し、ちゃんと行動している社員は高く評価する。個人名が出て比較されると、やるしかない状況になって定着が進むようです。
東島:
営業の社員は架電数やアポイント数・訪問情報など、一日の活動を何かしらの形で残す業務フローになっていますよね。
もしアポを取れていたとしても、Salesforce で入力していなければマネージャがレポートを出力しても反映されません。ですので、マネージャ視点での必要性だけではなく、営業社員視点で「商談と活動を入力することが日報になる」と入力の動機づけを促すようにしています。
完全に使い方を覚えないまま “やり過ごそうとする人” に注意
──研修やトレーニングに関しては注意点がありますか?
宗像:
しっかり研修をしても、実際に使い始めた直後はたくさんの質問があがってきます。ですので、最初の一週間はすぐに対応できるよう、問い合わせを受けるための窓口をつくっておく必要があります。
一時的にかなり負荷が大きくなるので、当社が保守までサポートする場合は、必ず窓口業務も協力させていただいています。
──サンブリッジさんでトレーニングを支援する際はマニュアルも時間をかけて整備されているようですが、どのように活用されるのでしょうか?
東島:
当社でトレーニングを行う場合は、マニュアルを送って終わりではなく、マニュアルに沿ったハンズオンで一度実際に試していただくようにしています。
マニュアルは業務フローの中で Salesforce をどのように使うのかという一連の流れに沿って、商談や見積もりなどの作成方法をスクリーンショットと共に記載しているので、普段の業務と紐づけながら使い方を理解していただけます。
──マニュアルに書いてあることを実際に試したほうが覚えやすそうですし、導入後の質問は減りそうですね。
宗像:
ただ、研修をクライアントだけでやっていただく場合や、運用後に新しい業務プロセスが増えた場合、Salesforce の機能追加や画面変更をする場合は、現場の全員にしっかりと共有することが重要です。
ちゃんと共有していないと、間違えて入力したり、新しいことを覚えるのが面倒だからと Salesforce を避けてやり過ごそうとする方は出てくるようです。そういう方が多いと、定着化には苦労すると思います。
──会社によっては、自分で入力方法を覚えずに事務の社員にすべて依頼する人もいると聞いたことがあります。ちなみに当社の「Teachme Biz for Salesforce」について、以前からご存知でしたか?
宗像:
実は、以前、Salesforce と HENNGE One の SSO (シングルサインオン) 連携についての情報を探していたとき、Teachme Biz で作られた手順書を偶然見つけたのですが、すごくわかりやすかったです。単純に、操作している画面に連動するという仕様はいいですよね。
以前に他のシステムで SSO をしたときに知っていれば、もっと簡単に進められたと思います。
──ビジュアルベースで分かりやすいですよね。普段は PowerPoint で手順書を作られているかと思いますが、 Teachme Biz の説明を受けて気になるところはありましたか?
宗像:
Teachme Biz の手順書を読んだか読んでいないかを管理者が確認できる機能はいいですよね。管理者からすると、社員の一人ひとりに「手順書を読んでないですよね」「まずは読んでいってみてください」と、状況を確認しながらコミュニケーションできますし。
──ありがとうございます。まさに「作って終わり」となってはいけませんよね。
宗像:
あとは、すべての手順をフォローして伝えやすいと感じました。PowerPoint にスクリーンショットを貼っていくと手順が一部飛んでしまうこともありますが、Teachme Biz は実際の画面操作を録画して動画マニュアルにできたり、動画からパッと静止画を切り出して順番に並べたりもできますよね。
特にスモールスタートで成功事例をつくってから他の部署・拠点に拡大していくときはトレーニングや問い合わせ対応のコストが膨大になるので、効果的なマニュアルを整備できれば現場への負担はかなり軽減できます。
──なるほど。ではサンブリッジ社 CEO・小野さんも交え、経営目線でのSalesforce の意義や導入対象が大規模な組織である場合の注意点なども伺っていきます。
<執筆:Hiroaki Takahashi (Web / 所属先)、撮影:大杉 明彦 (Web)>
Teachme Bizでは、SalesforceにTeachme Bizで作成した操作手順書を表示する"Teachme Biz for Salesforce"を提供しております。
Salesforceの使い方が分からない際、その画面内で画像ベースの操作手順をそのまま閲覧できるようになります。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
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