Salesforce導入

Salesforce 活用の目的と、関わるメンバーの“役割”を明確にすることが第一 ──Salesforce 導入 〜 定着の道のり Vol.10 Sansan 株式会社様

「私自身も、“管理されている” 感覚が苦手でした」

法人、個人向けの名刺管理サービスを提供する Sansan株式会社の塩原 倫平さんは、SFA に対する最初の印象をそう語っています。

Sansan では営業組織の業務改善プロジェクトの一環として、Salesforce の導入が決定。塩原さんは設計から携わり、運用開始後には現場社員への研修を担当することになりました。そこで、Salesforce のメリットやより活用できる可能性などの “気づき” を得たそうです。

今回は開発側のリーダーとしてプロジェクトを進めた杉村 宏治さんも交え、営業・開発両方の視点からプロジェクトを成功させるためのアドバイスを聞きました。

Salesforce は、自社の状況から “一つ上のレベル” に上がるために導入した

──まずは御社で Salesforce を導入した背景と、定着スケジュールを教えてください。

杉村:
Salesforce は 2011 年に導入していましたが、リードを管理する目的に絞って利用していました。

2017 年頃になると営業の社員数が増えてきたため、大規模な組織の SFA・CRM として強みを持つ Salesforce をより活用していくことになりました。商談管理・契約管理の後工程まで一気通貫で行うシステムを構築したため、定着までは 1 年ほどかかりました。

塩原:
Salesforce の本格的な導入~定着と並行して、営業チームでは業務をフェーズごとに管理するようにして、受け入れの準備も進めていました。案件管理自体は行っていましたし、最低限の準備はできていたと思います。

今は営業以外も含めると 270 名が活用していて、今年に入ってからは蓄積されたデータを分析しつつより活用できるように改善を進めています。

杉村:
ユーザー数も随分増えましたね。Salesforce 上にはすべての顧客情報が集まっていますし、他のシステムとの連携ミスもなく活用しやすいシステムができたと思います。

──まず営業の塩原さんから見て、Salesforce を導入して良かったと思う点を教えてください。

塩原:
一番のメリットは、商談のデータを分析できるようになったことだと思います。Salesforce 導入前は “ 今” の案件をいかに管理するかに留まっていましたが、今は過去のデータを見ながらアプローチを考えて、個人としても組織としても PDCA を回せるようになりました。

あとは営業サイドからすると、申込書・見積もり書が比較的簡単に、ミスなく作成できるようになったこともありがたいですね。

──エンジニアの杉村さんから見て、他のシステムと比較検討した際に感じたメリットはありますか?

杉村:
エンジニアの視点では、Salesforce はセキュアでありながらも他のシステムに比べて触ることのできるデータが多いので、開発の依頼に応えやすいと感じます。さらにコードを書かずにカスタマイズできる範囲も広いので、営業チームの中でやりたいことをある程度自分たちの力で実現できることもメリットでしょうね。

──御社では大規模なシステムとして構築したようですが、新しく覚えることが多いと現場では混乱もありませんでしたか?

塩原:
導入する組織の状態によるでしょうね。当社は最低限の案件管理ができていた中で Salesforce を導入したので、しっかりと活用するというゴールを目指せました。もし SFA 自体を初めて導入するなら、標準機能だけで、必須項目も絞り、案件管理を定着させることを目的にしてもいいと思います。

自社がどんなフェーズにあるかを考えて、一つ上のレベルにいくようなゴールを設定すればいいのではないでしょうか。

営業部門の欲求を理解しつつ、コスト面も考えて Salesforce の仕様を決める

──順調に Salesforce を定着されたように見えますが、何か苦労したことや反省点はありますか?

杉村:
当社の反省点は、必要な役割のメンバーが欠けた状態でプロジェクトを進めてしまったことだと思います。

私は開発のリーダー役に集中できればベストだったのですが、人手不足もあり、各部門の意見の取りまとめや Salesforce 社との価格交渉など、マネジメント側のタスクも担当することになりました。営業からは塩原などの現場社員や各マネージャがフェーズごとに意見をくれたのですが、プロジェクトの最初から最後まで責任者といえる存在はいなかったんです。

導入を終えて振り返ってみると、やはり営業側からも運用の責任者を立てるべきだったと思います。

──ビジネスサイドの担当不在により、どんな苦労があったのでしょう?

杉村:
開発のコストが想定以上にかかりました。当社はアジャイルで開発したので、作りながらレビューをしてもらっているうちに課題が増え、もともと予定していた完成イメージよりも膨れ上がってしまいました。

簡単に後戻りもできないので進めていくしかないのですが、スケジュールも後ろ倒しになってしまいました。

──現場の人間がプロトタイプを触ってみると、新たな要望が出てきたわけですね。

杉村:
プロトタイプを触ってもらうと、「こんなことはできる?」「これができないと業務で使えない」と、実装していないことを求められがちです。それらをすべて実装しようとするとゴールの見えないマラソンを走るような状態になってしまうので、要望を精査したりフェーズごとに順次実装という判断を下したりと、ゴールのイメージを現場と調整することが重要です。

塩原:
開発中に営業側のレビュワーが変わってしまったことも申し訳なく思っています。

長期プロジェクトになると、どうしても途中で組織体制が変わるので、マネージャによって求められる仕様が変わったり増えたりしてしまいますよね。

杉村:
私はビジネスサイドのタスクも一部担当してはいましたが、ポジションはあくまで開発のリーダーです。営業のマネージャの要望を無視して先に進めるわけにはいきませんでした。

ただ、本来は私たちの上にプロジェクト全体を管理するマネージャを置いて、コストパフォーマンスを判断しながら進めるべきだったと思います。

塩原:
開発者からすると、一つひとつの要望が部署としての総意なのか、マネージャ個人が考えていることなのかまでは分かりづらいですよね。

今でもチーム内では Salesforce に対する要望が出るのですが、杉村に依頼する前に私がまず要件を整理するようにしています(笑)。

──もう一度プロジェクトをやり直せるとしたら、どんな編成にしたいですか?

杉村:
当社のように大規模な開発を行う際は、プロジェクト全体の責任者、開発側の責任者、営業・運用側の責任者、あとは開発の現場を管理するマネージャと営業の旗振り・運用担当の 5 人がマストだと思います。

誰が何に責任を持つのか、役割をしっかり定義することも重要ですね。プロジェクトチームの体制は、設計・開発だけでなく定着でも重要になりますから。

塩原:
すべての担当を揃えられない場合や小規模に導入する場合などは役割をいくつか兼任することになると思いますが、「いま誰がどの役割を担っているのか」は明確にしておいたほうが良いでしょうね。

Salesforce をカスタマイズしたい社員に問う。 「管理者になる覚悟はあるか?」

──Salesforce の導入後、管理は杉村さんがお一人で担当されているのですか?

塩原:
定着からしばらくは管理をすべて杉村に任せていたのですが、最近になって私を含む営業側のプロジェクトメンバーに管理者権限を付与してもらいました。

──プロジェクトメンバーのほうから「管理者権限が欲しい」とリクエストしたのですか?

塩原:
そうですね。データが蓄積されてくると、現場の中でも「より活用するためにはどうすればいいか」という前向きな議論ができるようになったんです。

やはり現場のニーズに応じてスピード感を持って対応するためには、杉村一人に任せるのではなく、営業の各現場にカスタマイズのできる管理者が必要だという結論に至りました。

杉村:
当社はまだ管理者権限を得るための資格や試験といった社内制度が整っていないので、カスタマイズの権限を与える社員は絞っています。

塩原から初めて相談を受けたときは「管理者になる覚悟はあるか?」と聞きましたね(笑)。

──覚悟というのは具体的にどういうことでしょう?

杉村:
たとえばわからないことがあったとき、詳しい人に質問すること自体はいいのですが、まずは一回調べる習慣をつけてほしい。開発の人間からすると、運用には運用の人間として持つべき責任があると思っています。

塩原:
自分で知識をつけた結果、新しく項目をつくる、選択リストを修正するといった簡単なカスタマイズはできるようになりました。

難しいことをしたいとき、影響範囲が広い項目をいじりたいときだけはリスクもあるので、杉村に依頼しています。

杉村:
Salesforce の管理者には、現場の意見を精査するハブにもなってもらっています。現在、私に開発を依頼するときは必ず各部門の管理者を経由してもらうことにしていて、依頼のテンプレートも用意しています。

──開発への依頼のテンプレートはどんな形式ですか?

杉村:
各部門の責任者に対して、“目的”・“担当部署”・“効果” の 3 項目を書いてもらっています。

“影響範囲” などは営業の社員が想像しづらいと思うので、やりたいこととゴールを明確に書いてもらうようにしています。

──開発時の反省を活かし、運用はしっかりと組織的に役割を分担できているのですね。

杉村:
定着~応用のフェーズも、営業・運用と開発がしっかりしたチームになっていなければスムーズに進められないと思います。

Salesforce の運用はずっと続くものなので、異動などの影響でメンバーが変わることも出てきます。役割や運用フローをしっかりと定義しておくことで、引き継ぎもスムーズにできると思います。

Salesforce の設計も研修・マニュアルも “あるべき姿を規定する” ことが重要

──どちらかといえば大規模な設計・開発で苦労されたようですが、定着・研修の面での反省点は何かありますか?

塩原:
昔から在籍している社員よりも、新しく入社する社員への研修のほうが苦労しましたね。

組織が拡大していく中では B2B 営業の経験がない方、独自のやり方で成績を残してきた方も採用することになります。そういった方々には Salesforce を使った営業プロセスをイチから覚えてもらう必要があります。

──実際のところ、営業の社員からすると入力の負荷は強いと思うのですが、反発されることはありませんか?

塩原:
難しい問題ですね。私自身も、昔は案件管理という考え方があまり好きではありませんでしたから(笑)。現場の人間からすると “管理されている” 感覚が強く、細かい作業が多くて面倒に感じていました。

ただ、私は研修を担当するようになったおかげで SFA の必要性を理解できるようになったので、きっかけ次第かもしれませんね。

──立場が考えを変えたのですね。研修は新しい社員が入社したタイミングで、個別にトレーニングされているのでしょうか?

塩原:
そうですね。Sansan では直近ですと平均して毎月 5~10 名ほどのメンバーが営業系として入社しているのですが、入社から 1 か月間ほどを研修期間としています。
そのプロセスの中で、Salesforce の使い方などもインプットしています。

──研修資料・マニュアルはどれくらい整備されていますか?

営業研修全体で使う資料は、PowerPoint ファイルで 100 ページを軽く超えています。

Salesforce や案件管理についても数十ページ分ありますし、Web サイトでも基本マニュアルを整備しています。現在は研修を動画としてアーカイブしているので、マニュアルとあわせて各自で観てもらっています。

──動画も作っているんですか。かなり時間をかけて整備されていますね…。

組織の規模が大きくなると、全員に同じ水準の研修を実施することは難しくなります。整備したコンテンツの効果を最大限に活かすために、研修は動画を中心にしました。

マニュアルの特徴としては、Salesforce に関する部分を “Salesforce の使い方” ではなく “Sansan の営業担当としてやるべきこと” として整備し、社員の目線を合わせるためのコンテンツにしています。特に項目の種類や定義は Sansan 独自のものが多いので、Salesforce の利用経験があったとしてもしっかりと目線を合わせる必要があります。

──営業担当としてやるべきこと、ですか。

Salesforce の本質は “営業の社員としてあるべき姿を規定すること” ではないかと最近感じています。

直近では法人営業未経験で入社する方も少なくありません、彼らは慣れるまで商談の進め方に苦労することも多いですが、Salesforce の設計を工夫すれば、次に何をすべきかが分かりやすくなります。

例えば、商談はフェーズ管理を行い、最近ではフェーズごとに考慮・確認することを項目化しました。早い段階でベストプラクティスを学ぶことで、“どのタイミングで”・“何をやるべきか” をある程度理解できます。

──覚える側も「なぜこのデータを入力する必要があるのか」を理解しやすそうですね。未経験者の理解を早めるという点では、当社の「Teachme Biz for Salesforce」のようなシステムは効果がありそうでしょうか?

塩原:
そうですね。Salesforce の各画面を使うタイミングで、インプットしておくべきことを適宜示せるのは便利だと思います。

ただ、当社のマニュアルの役割は、Salesforce の使い方だけを効率的に伝えることではありません。

フェーズごとの考え方や提案のポイントなど、受注するために必要なナレッジを総合的にまとめて整備して、Salesforce の枠を超えたような活用をしていきたいと思いますね。

──確かに、いざというときに立ち返るのは、使い方だけではないですよね。基本思想も共有して営業全体の知識基盤になるのは一つの理想形な気がします。本日は、チーム作りから教育まで幅広くお話いただき、本当にありがとうございました。

<執筆:Hiroaki Takahashi (Web / 所属先)、撮影:大杉 明彦 (Web)>

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