Salesforce導入

新システムの研修で“詰め込みすぎ”は禁物。コツコツ伝え続けることが、最終的には定着への近道に── Salesforce 導入 〜 定着の道のり Vol.9 共同印刷株式会社様

左から共同印刷株式会社 谷本さん、大浦さん、神さん

導入フェーズごとの課題とアクション

「Excel の更新ばかりで営業にも出られていないみたいだけど、課長…大丈夫かな」

多くの課を抱える大規模な組織では、商談や各自の活動を把握するだけでも困難になります。

共同印刷株式会社・プロモーションメディア事業部では、2017 年の 4 月に営業改革が始まり、B2B マーケティングを強化すべく事業部内に新しい組織を立ち上げました。改革の一環として、組織的なセールス活動と効率的なマネジメントを目指して Salesforce の導入が決定。新卒入社時から営業の現場で活躍してきた女性社員たちが主体となって導入を進めました。

今回は未経験から Salesforce 管理者となった大浦 智未さん、設計やテストで協力された神香澄さん・谷本 彩さんの三名を招き、導入~定着の経験談を伺いました。「SFA って何?」という状況から営業現場に定着させるためには、長期的かつ地道な対応が欠かせなかったそうです。

──本日はお集まりいただきありがとうございます。皆さんはどのような経緯で Salesforce の導入~定着に携わるようになったのでしょうか。

大浦:
私たちは三人とも新卒で入社してからずっと営業を担当していました。2017 年 4 月の営業改革に伴って新設された組織へ各自が異動し、以降は B2B マーケティングを強化する業務に従事しています。

私は育休から復帰する際に何か新しいチャレンジをしたいと思ったので、新規組織の立ち上げと同時に異動しました。

そこで Salesforce の管理者をやってほしいと頼まれ、システムに関する知識がない状態から導入プロジェクトを担当することになりました。最初の 2 ヶ月ほどは設計やテスト導入を行うフェーズだったので、現場の目線を持つ二人にたくさん協力してもらいました。

神:
私は大浦と同じく育休明けで、オウンドメディア「Hint Clip」の運用フェーズから編集長を担当しています。

営業改革の目的の一つは、Salesforce を使って新しい営業手法を模索することでした。私は記事やホワイトペーパーを作成して企業のプロモーション・マーケティング担当者との接点を増やすことを業務にしています。

谷本:
私も神と共に属人的な飛び込み営業をしていました。そんな中、新しい手法で B2B マーケティングを強化するという今の組織のビジョンに共感し、インサイドセールスとして仕事をはじめました。

プロジェクトの途中で育休を取りましたが、復職後も同じポジションで、Salesforce や Pardot を活用しながらコールオペレーターの方などと連携して業務を進めています。

──伝統ある大企業で、営業一筋の若手が主体となって進められたのですね。これから導入する企業の担当者にとっては経験談が大いに参考になると思います。

問題意識はみんな同じ。若手からベテランまで、業務改善に積極的なメンバーに働きかけた

──御社では Salesforce の導入から定着まで、どんな流れで進んだのでしょう?

大浦:
定着という意味では、事業部全体で Salesforce のメリットを感じられるまで 3 年ほどかかりました。まず 1 年目の 2017 年は、経験者がいない状態で Salesforce を導入したので、設計から運用開始後の研修まで、とにかくトライが続きました。

2 年目もトライは続きましたが、Salesforce の使い方を質問されることはなくなったので、貯まったデータを活用するフェーズに移りました。私自身も認定アドミニストレーターと Platform アプリケーションビルダーの資格を取得し、管理者としてできることも増えましたし、現場のメンバーにとっても「人ごと」ではなく「自分ごと」になったと思います。

3 年目の今年は、マネジメント層に Salesforce のメリットを理解してもらえたことで、事業部全体で活用していけるようになりました。

谷本:
最近は事業部全体に Salesforce が定着してきたと感じます。

私は 2 年目に育休を取って今年戻ってきましたが、マネジメント層が業務や会議の中で積極的に活用していることが印象的でした。

──そもそも Salesforce 導入のきっかけは何だったのでしょう?

大浦:
きっかけは営業管理の不便さです。私たちの事業部の中だけで Excel ファイルが 数十種類あり、更新の手間が膨大でした。さらに複数人で同時に編集することも、社外でファイルを開くこともできなかったので、余計に時間がかかりました。

マネージャーは社内でExcel ファイルと向き合う時間が長く、営業に出ることも難しいようだったので、現場の若手も「大変そうだよね」と心配していました。

──新しい Excel ファイルが次々に生成されていくという状況はよく聞きますね。

大浦:
そしてもう一つ、営業としての問題意識もありました。市場自体がシュリンク傾向にある中、「これまでと同じやり方で営業していていいのか」という疑問を抱いている社員が多かったんです。

神:
私も、もっと積極的に新しい案件を取りにいく意識が必要だと思っていました。

また、部や課の中にはプロフェッショナルとしての知識を持っている社員がたくさんいるのに、社内で共有して組織的な営業ができていないという課題もありました。

──その状況に Salesforce がマッチしたんですね。とはいえ、社内では慣れ親しんだシステムからの移行に対する反発はありませんでしたか?

大浦:
インプリベンダーの方から「現場では抵抗があるだろうから、事前に対策しておいたほうがいいよ」と教えてもらっていたのですが、幸いにも当社では感情的な反発を感じたことはないですね。使い方を理解してもらったり、本格的に活用してもらうまでにはいくつかハードルがありましたが(笑)。

また、平均年齢が高いほど苦労するという話も聞いていましたが、当社では年齢による反応の差は感じませんでした。確かに若い社員のほうが IT システムに慣れてはいますが、先輩方の中でも「業務改善をしよう」という意識が強い方は積極的に動いてくださいました。

──Salesforce を活用できるようになってからは、どんな効果を感じていますか?

神:
各自が商談・活動情報や提案資料を Salesforce 内にまとめることで、営業スタイルが属人的でなく組織的になったと思います。

新規開拓をしようと思ったら他の課がすでに訪問していたというバッティングはなくなりましたし、問い合わせに対しても過去のデータに基づいて優先的に対応するかを判断できるようになりました。

谷本:
特にインサイドセールスの現場では、業務を進める上で “なくてはならないシステム” になっています。

パイプラインが出来上がっていますし、メール送信・架電の履歴・フィールドセールスへの繋ぎ・Pardot 連携、すべての基盤になっていて、売上予測までできています。

大浦:
あとは「無駄な資料をつくる必要がなくなった」という声が届くようになりました。

今は私たちの事業部だけで活用していますが、他の部門からも注目を集めており、「触ってみたい」と言われることも増えています。

Salesforce 運用開始から 1 年は、ずっと社内を巡回して質問に答え続ける日々

──1 年目、導入直後はどのような部分に苦労されたのでしょうか。

神:
管理システムに各自の商談や活動情報を入力するという習慣自体がなかったので、Salesforce の使い方を理解してもらう前に、まず情報を共有する文化をつくる必要がありました。

谷本:
当然「SFA って何?」という状態だったので、Salesforce 独自の用語などを覚えることにも苦労しました。

大浦:
「やっぱり Excel のほうが使いやすい」と抵抗されたわけではないのですが、入力するデータの意義を理解してもらいたかったので、マネージャーから若手まで各自に「この Excel ファイルを、Salesforce のこの画面にまとめました」と、背景を説明することはありました。

──現場の社員に対する研修もされたのですか?

大浦:
私が 2 時間ほどの研修を数日間にわたって開催しました。ただ、内容を詰め込みすぎてしまったことは反省点でした。

研修を受ける側からすると、10 の内容を教えられても一度ですべて覚えられるわけではないですよね。でも、私は 10 どころか 100 の内容を一度の研修に盛り込んでしまったので、終わってみれば「最初の部分しか覚えていない」という社員も出てきました。そうなると、全体での研修が終わったあと、個別に、イチから教えることになります(笑)。

──マニュアルを整備して「ここに書いてあります」という風に案内はされなかったのですか?

大浦:
マニュアルは PowerPoint で 100 ページ分つくって公開し、研修では印刷して全員に配りました。ただ、マニュアルを読むよりは直接質問する人が多かったですね。

実際に活用されているマニュアル(抜粋)

──100 ページ分もつくると、相当時間をかけられましたよね…?

大浦:
外部のパートナー企業と分担しましたが、導入を進めながらの作業だったので 1〜2 ヶ月かかったと思います。

──それでもさらに個別対応が必要になったのですね。研修後の対応にはどれくらいかかりましたか?

大浦:
事業部の全員に使い方を覚えてもらうまでには 1 年ほどかかりました。ですので、Salesforce 導入 1 年目はひたすら個別トレーニングに追われていたようなものです。

教える相手が 80 人ほどいて、他に教えられる人がいなかったので、自分の席に座っていることのほうが少なかったですね。机には「終日、研修しています」という札を置いて、次々に呼び出されては各自の席に教えにいく日々でした。

谷本:
大浦を見ていると、毎日かなり忙しそうでした。本当に席にいなかったよね(苦笑)。

──1 年の間には現場からの要望を受けて仕様を変更することもあったと思いますが、そんなときはどう対応されたのですか?

大浦:
仕様や使い方が変わったときも、私が営業課すべてを直接巡回しました。それぞれの定例ミーティングにお邪魔して、「10 分だけ時間をください」と頼んでいました。

時間も限られているので、詰め込みすぎてしまった研修の反省を活かし、シンプルに「今度 Salesforce をこんな風に改修します」「今日はこれだけ覚えてください」とポイントを絞って説明するようにしていましたね。

──それは一度ですべて説明しきれるものですか?

大浦:
一度の説明では足りないので、「続きは次回のミーティングで」という形で何度も通っていました。それでも時間が足りないときは個別に対応していましたね。

マネージャー陣が見たい情報を見られるようになると「すべてがつながった」感覚に

──1 年目は個別対応であっという間に過ぎ去ったようですが、2 年目からは状況が変化したのですか?

大浦:
2 年目になると Salesforce でのデータ入力方法は浸透したので、マネジメント層がデータの分析などをできるように、レポート・ダッシュボードの活用方法を伝えていくフェーズに移りました。

Excel ファイルを順次 Salesforce 上で置き換えたり、マネージャーが欲しいデータを Salesforce 上で取得できるかどうか確認したりしていました。

神:
1 年目は私が手がけるオウンドメディア「Hint Clip」もあまり社内で浸透していなかったのですが、業務改善が進んだ 2 年目からは周囲からの視線の変化を感じました。クライアントインタビューが取れるようになり、さらにクライアントに記事が読まれていることが、SFA を通して営業の現場社員たちに伝わるようになりました。

谷本:
「Hint Clip」も含めたシステム基盤ができたことで、営業の手法や各自の意識が大きく変わったと思います。

Web メディアでホワイトペーパーをダウンロードしてくださった方には私たちインサイドセールスが架電し、フィールドセールスにつなぐのが当たり前になっています。Pardot の情報を元に案件の振り分けも始まっているので、業務のフローが確実に変わっていますね。

──他のツールとの連携もあって、より便利な基盤になったんですね。

大浦:
活用のフェーズでは、マネジメント層に Salesforce のメリットを実感してもらえたことが大きな進歩だと思います。その状態に辿り着いたのは 3 年目に入ってからですね。

──マネージャーが活用してくれると、どんな変化がありましたか?

大浦:
マネージャーがどこにいても部下の活動を把握できるようになり、自ら営業に出ながら部下のフォローもできるようになりました。Excel ベースだった頃は実績の集計や管理がマネージャーの Excel スキルに依存していましたが、Salesforce に変えてからは IT 操作に詳しくなくても組織に関する情報が扱いやすくなったという声を聞いています。

また、マネージャーが Salesforce を活用してくださると、現場にも良い流れができました。マネージャーが業務や会議の中で Salesforce のレポート・ダッシュボードを活用すると、現場の社員も「自分が入力したデータはこうやって活用されるのか」と、データの意味を理解しやすくなりました。

──マネジメント層に Salesforce のメリットを実感してもらうにあたり、効果的だった施策はありますか?

大浦:
毎日のレポートの自動配信はとても好評でした。課の前日の活動を、翌日の朝にマネジメント層に配信するようにしたのです。

どのマネージャーもメールは必ず毎朝チェックします。まずレポートを見て課員の活動を把握して、コメントが必要なときは Chatter で送るという形でマネジメント業務がスムーズになったようです。活動入力が 0 件でもメールは配信されるので、そのときは「なんで入力してないの?」と問い合わせることもできます。

──Salesforce の該当画面を開かなくても、重要な情報の一部にはアクセスできるようにしたんですね。

大浦:
あとは社内キャンペーンも継続的に実施していますね。活動量向上・売上向上といったテーマを決めて、ダッシュボードを開くとキャンペーンの結果がリアルタイムで表示されるようにしました。

Salesforce で商談や活動を入力したらポイントがもらえるようにして、1 位には商品券などのインセンティブを用意しています。

谷本:
キャンペーンを実施しているときは社内の雰囲気も変わります。データを入れていないと、マネージャーから直接「入れて」と指示されるようです(笑)。

現場社員・マネージャー・システム管理者それぞれに別の Salesforce 研修・マニュアルが必要

──3 年間を振り返ってみて、未経験で Salesforce を導入する企業へのアドバイスはありますか?

大浦:
設計の段階で情報システム部門に協力してもらうことは必須だと思いました。私たちは全員営業出身なので “工数” という言葉すら知りませんでしたし、打ち合わせでは戸惑う場面が多かったです。

ただ、営業を経験していない情報システム部門の方だけで設計すると、現場にとって使いやすいシステムにはなりません。営業と開発の人間が最初から密に連携することが大切なのかなと思います。

あとはシステム開発の知識だけでなく、Salesforce の知識がある方にも最初から協力してもらえばよかったです。私たちは標準機能でできること、コードを書かずにカスタマイズで対応できること、開発が必要になることを整理できていなかったので、必要以上にコードが増えてしまいました。

──初心者からすると、社外の Salesforce 関連コミュニティは有効に使えそうでしょうか?

大浦:
未経験者は参加するといいと思います。私は「Admin 女子部」というコミュニティや「Dreamforce」というアメリカの大型イベントに参加しましたが、とても便利だと感じました。上級資格を持つ方も多く参加されているので、わからないことがあれば直接質問できます。Trailhead を使って独学で知識をつける時間がない場合は特に有効だと思います。

振り返ると、知識があればあるほどプロジェクトはスムーズに進むと思いました。私は去年はじめて Salesforce 公認のトレーニングを受けて、資格も取得したのですが、今までやってきたことがすべて繋がった気がしました。

──定着〜活用のフェーズでのアドバイスはありますか?

大浦:
立場ごとに別の研修・マニュアルを用意することですね。

どんな会社でも「Salesforce でデータを入力する方法」というマニュアルは必ず整備すると思いますが、マネジメント層にはレポート・ダッシュボードを活用してもらうための研修やマニュアルが別途必要です。さらに管理者を増やしたり引き継いだりする機会を見据えると、管理者に対しても必要になります。

──当社の「Teachme Biz for Salesforce」を使うとしたら、どんなイメージが浮かびますか?

大浦:
簡単に動画を編集できる機能は良いですね。動画編集はもちろん、キャプチャを撮って PowerPoint で貼り付けていくだけでも時間がかかりますから。

それから、Teachme Biz はよく見られているマニュアルを把握できるところも良いですね。多くの人がわかっていないこと、間違えやすいことがわかると、管理者としては研修やマニュアルで力を入れるべき部分と入れなくてもいい部分がわかります。

谷本:
新しく入ってくるメンバーにも覚えてもらいやすそうですね。異動して Salesforce の使い方が変わった社員がいたり、派遣の方が入社したりすると今は個別で研修していますが、私たち三人は時短勤務ですし、個別対応に長い時間を割けるわけではありません。

ですので、「困ったときはこのマニュアルを見て」と言えるようなものを一つ作りたいと思っています。

──Teachme Biz はフィードバックや仕様変更を受けた際の更新・修正もしやすいのですが、御社のマニュアルは定期的に更新されていますか?

大浦:
マニュアルを更新することで私自身の棚卸にもなるので、大きい改修のたびに対応しています。

現状の PowerPoint のマニュアルでも読んでくれている方はいますが、運用にも手間をかけていますし、もっと活用してほしい気持ちはありますね。

──効果を高めるにはどのような手段が考えられますか?

谷本:
研修もマニュアルも、実際に Salesforce を触ってから、あるいは触りながらのほうが内容が理解しやすいかもしれません。

今年の新入社員 5 名は私のインサイドセールス部門で 1ヶ月間研修をしたのですが、その後の営業部門への配属時に大浦が Salesforce の研修を行ったところ、スムーズに進んだそうです。

大浦:
インサイドセールスの研修時に触っていたおかげか、5 人とも覚えがよかったです。そう考えると、Teachme Biz のように Salesforce を操作している画面にマニュアルが出てくる仕組みは効果的かもしれませんね。

──ありがとうございました。歴史ある事業を Salesforce で進化させているリーダーの皆さんのお話は、多くの方の励みにもなると思います。

<執筆:Hiroaki Takahashi (Web / 所属先)、撮影:大杉 明彦 (Web)>

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>> 【関連】画像・動画ベースのビジュアルヘルプで、Salesforceの運用定着をもっと簡単に

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