売上だけではなく、行動プロセスを可視化し評価することが Salesforce の活用定着へ繋がる (前編) ──Salesforce 導入〜定着の道のり Vol.6 株式会社アイスタイル様

導入フェーズごとの課題とアクション
Salesforce を上手く使えば営業プロセスを改善できるはず、そういったマネジメント層の意図を現場に浸透させるには、操作方法の理解やデータ入力の習慣付け、自発的な活用の促進など様々な課題が付きまといます。
国内外に15以上のグループ会社を持ち、連結1,000名以上の体制で、ビューティ事業を軸に生活者を軸とするマーケットの創造するアイスタイル。同社では、複数の Salesforce を複数の事業部で運用しており、それぞれの部署が独自の工夫で導入、定着、活用を進めてきました。
今回は 2014 年にアイスタイルに入社し、子会社出向時に役員として Salesforce 導入を起案し、既存のシステムからの移行、定着までを手がけた遠田健氏と、プロパーとしてアイスタイルに入社し、化粧品ブランド部門の営業部長としてそれまで使用していた Classic を短期間で Lightning へ移行するリニューアルプロジェクトを推進している大西清貴氏に、それぞれのプロジェクトにおける課題から定着、活用までの経験についてお話いただきました。
目次
営業メンバーの行動プロセスの評価には、定量的な視点が必要だった
──遠田さんが実施された Salesforce 導入プロジェクトの背景を簡単に説明いただけますか?
遠田氏:目的としては営業プロセスの管理と、常に数千ある取引先のお金の出入りをちゃんと見るというものでした。我々の事業のセールスは非常にリードタイムが短く、昼に電話して夕方訪問し、その日中に契約もらってくるくらいのスピード感なんですね。そこでどの取引先がやめた、どこが入った、どこがアップセルしたっていうのをリアルタイムで見たいのと、誰がどういう行動プロセスを踏んで、どの行動プロセスが一番効率よく受注までいけているのかを見たかった、という目的があります。
また、僕は東京、名古屋、大阪、福岡の 4 拠点を担当しているので、誰が今どれくらいがんばっているとか、どこに苦戦しているかっていうのを見る時に定量的な視点がないと難しいと感じたことも導入を考えた理由です。
──Salesforce の導入はスムーズに進んだのでしょうか?
遠田氏:最初は所属していた子会社のボードメンバーからの反対も多かったですね。特に当時のテック担当からの反対が大きかったです。いまの基幹システムを運用して直すほうが良いと言われていたのですが、なんとか説得を続けて最終的には「お前がやりたいならいいんじゃない?」と導入することなりましたね。
──反対された理由としては具体的にどういうものだったんでしょうか?
遠田氏:もともと使っていた基幹システムとの連動や、Salesforce でできないことのカスタマイズを考えた時に、営業はシステム面がわからないから無理難題をバンバン言ってくる、それを受ける人が必要になるということが懸念されていました。10 年間基幹システムを使ってきたので、そこに入っているデータもかなり膨大だったんですね。そのデータに請求関連も全部紐づいていたので、それを移行するリスクがすごく懸念されていました。
ただ、営業を ”結果” でしか管理できていない状況や、社内からしかデータにアクセスできない状況から脱却したかったこと、アイスタイル本社でも Salesforce を導入していたこともあり、将来のために強い意志で Salesforce 導入を決断しました。
入力したデータにもとづく行動量ランキングを見せることで、現場のデータ入力のモチベーションを促進
──結果として導入に至るわけですが、導入後の定着で一番大変だったことは何ですか?
遠田氏:営業からすると「手間が増えるのでやりたくない」ってところですね。データの入力を促すと「わかりました。すぐやります」とは言うけど 2 週間くらいログインしていなかったり。最初の頃はログインデータのダッシュボードを僕が作って、ログインするよう毎日ダッシュボードから僕がメールで送ってましたね、すごい地味ですけど。
一番効率がいいスタッフってロジカルというよりは感覚が優れていたりとか、タイミングが良かったりするじゃないですか。勘でわかっているんですよ。売ってるスタッフほど行動プロセスを入れたくないし、気にしたくない。それに対してこの手間がなぜ必要なのか、やるとどうなるのかっていうのをひたすら口説いていくことが必要でした。
──現場の方に活用の意義を理解してもらうのは大変ですよね。
遠田氏:Salesforce を一番入れたいのって進捗を管理したい管理者やマネージャーじゃないですか。現場で動いている人達って自分のことはわかっているから興味ないわけですよ。そうすると本人たちにとってはただデータを入れるだけじゃないですか。だからその意識を変えてあげる必要があります。そこで現場の人達が見るダッシュボードに売上のランキングではなく行動量のランキングを作りました。このランキングだと、売上が下から 4 番目の人が実は 1 番電話しているってこともわかるんです。それがわかると現時点で売上ランキングとしては低い人でも、やりがいが見出しやすくなるじゃないですか。「俺毎日がんばってる」って。営業って競いたくなるものだから、そういう仕掛けを入れたりしました。
このランキングが一番かもっていうくらい効きましたね。あとはこれを話題にしてあげる。僕から全員への配信でランキングを上げたメンバーを取り上げて「あれ、この間まで 10 位以内にいなかったのにいきなり上がってきたじゃん!どうしたの?」みたいな感じでコメントしてあげると、結構気にしてくれますね。
──入力結果をしっかりマネージャーが見てることも伝わりますし、営業のモチベーションも上がりますね。
遠田氏:そうです。新卒であろうと中途であろうと入社したばかりの人が売上のランキングで上に行くってすごく難しいことなんですけど、行動量のランキングは結構上に行けるじゃないですか。がんばればいけるし、先輩より自分達の方が時間はあるから、とにかくここで一番目指そうぜ、といった具合です。
このランキングを見ると「Salesforce 見ると、あの人は僕の倍くらい効率がいいんですけど何が違うんですか?」みたいな相談が社員同士で拠点を越えてでもできるようになります。誰に聞くのがいいのかっていうのが定量的にわかるようのが大きいですね。
若手社員をアンバサダーにすることで、操作方法の定着促進を図る
──他に工夫したことってありますか?
遠田氏:操作方法の理解も定着の上で重要でした。「Teachme Biz」にも繋がる話かもしれませんが、データを入力している人たちをずっと観察していると「どうやって入力したらいいんだっけ?ちょっとわからない、後で聞こう」となっているうちに作業されないままになってしまう、みたいな繰り返しがありましたね。操作方法ってマネージャー、チーフ、スタッフって下ろしていくことが多いので、最初はマネージャーに教えていたんですが、マネージャーってそもそもめちゃくちゃ忙しいので全然覚えないんですよ。なので彼らに教えることは諦めて、各拠点で当時の新卒 2 年目の社員を Salesforce のアンバサダーにすることにしました。
「売上は今は先輩達に頼るとして、その分 Salesforce に関しては一番詳しくなれ」って言って僕が直接その社員たちに教えていました。そうすると他の社員の人達はちょっとわからないことがあると、「どうやるの?教えて」ってアンバサダーに聞くわけです。すると 2 年目の社員も自分が役に立ててる実感が持てるようになります。それが結構上手くいきましたね。
──アンバサダーの方へのインプットや準備にはどれくらいかかったんですか?
遠田氏:時間をかけて準備したっていうよりは走りながら、使いながらやってました。当時導入した時に一番詳しかったのは僕なので、僕自身がアンバサダーに教える時間を最優先で取りました。4 人には「経営会議中だろうが役員会議中だろうがアンバサダーの電話だけは最優先で出るから。お前ら最優先だから」と伝えて、優先度を上げてましたね。それだけの重要ミッションなんだよという意識をアンバサダーにも持ってもらっていました。アンバサダーたちは若いっていう理由だけでなく、こういうのが得意そうだなって人を選んでいるので覚えが速いし、コツをつかみ始めるとサクサク作っていけるようになりました。
アンバサダーに定着してからもう 1 回あらためてマネージャー陣に教え始めました。やっぱり現場が使い始めてマネージャーが全然わからないよっていうのは、マネージャー本人たちも嫌なので、取り組んでくれるようになりますね。
──ありがとうございます。後編では、Lightning への移行プロジェクトをリードされた大西さんから詳しくお話をお伺いします。
<執筆:山根英彦 、撮影:大杉 明彦 (Web)>
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Salesforceの使い方が分からない際、その画面内で画像ベースの操作手順をそのまま閲覧できるようになります。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
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