「管理側でも把握しきれない。」急拡大中の組織がたどり着いたのは、"現場のリーダー"を育成すること──Salesforce 導入~定着の道のり Vol 1. freee 株式会社

最終更新日: 2019.11.14 公開日: 2019.06.24

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<スライド:Salesforce 導入フェーズごとの課題とアクション>


「会計 freee」をはじめとするクラウドサービスを提供する freee 株式会社では、2014 年に営業組織を立ち上げると同時に「効率的なセールス活動のために」と Salesforce を導入しました。

同時期に入社したソフトウェアエンジニアの海老原さんは、株式会社セールスフォース・ドットコム出身という経歴を生かして入社直後から昨年まで Salesforce の導入〜定着をサポートされていました。現場に運用を任せた時期や営業組織が拡大していく時期では、苦労したこともあったそうです。

そこで、今回は 100 名未満から現在の 500名規模まで成長するまでの各フェーズで生じた課題と、海老原さんたちがチームで取り組んだ施策についてお話を伺いました。

立ち上げ時点で「Salesforce の世界観に沿った、効率的な営業組織」を見据えていた

──freee では営業組織立ち上げの時点で Salesforce を導入したと伺いました。どんなところを評価されていたのでしょうか?

Salesforce は他のツールと比べて管理できる領域が広いことがメリットだと思います。

freee には「世界一のセールスチームを目指すには、データドリブンな営業プロセスでなければいけない」という考えがあります。もちろん導入・定着は簡単ではないですが、使いこなせた際の成果が大きいので、経営陣も最初から導入に前向きでした。

──最初から、Salesforce ありきの具体的な管理プロセスをイメージされていたのですね。導入時に気をつけられたことはありますか?

まずは SFA・CRM としてのコンセプトをしっかりと理解することです。特にエンジニアにとっては “PaaS” のイメージが強いので「Salesforceの標準機能として存在するものをカスタム開発する」なんてことも珍しくはないんですよ。

基本的に「自分たちが考える営業プロセスを Salesforce 上で実現できるように」とすぐにカスタマイズするのではなく、まずは Salesforce が想定している使い方に沿うことが大切だと思います。

──Salesforce のコンセプトが自社の営業組織と近いほうが導入しやすいということですね。

freee には経営層にも現場にも Salesforce を利用した経験があるメンバーがいたので、導入から定着まで能動的に取り組んでもらえました。現在では、現場ごとに最適な設定などを考えながら管理・運用してくれるまでになっています。

ただ、導入時はまず弊社のメインプロダクト「会計 freee」と Salesforce を連携させるためにプログラミングが必要だったので、私がエンジニアとしてサポートすることになりました。

──導入後は、継続的あるいは定期的にサポートされていたんですか?

最初の 1〜2 ヶ月である程度の設計・インプリを終えてからは、2 年ほど Salesforce から離れていました。freee のエンジニアは基本的に自社のプロダクト開発に集中するので、何かあったときには他の仕事との優先順位も見ながら手伝う、という程度の関わり方でした。

各チームで運用を始めると、無駄なカスタマイズが増えてしまった

──導入から 2 年後、再び Salesforce 管理の専任担当になったとのことですが、どんな経緯があったのでしょうか?

まずは単純に規模の問題です。営業組織が拡大していくにつれて、混乱が生じるケースが出てきました。

ちょっとした設定変更でも影響が大きくなりますし、「会計 freee」と Salesforce のデータ連携でトラブルが起きると、営業チーム全体の業務に支障が出てしまいます。

──営業組織が拡大するほど、リスクも大きくなるんですね。

さらに、プロダクトが成長するとビジネスサイドで新しい業務も発生するので、ニーズが複雑化して運用が難しくなったという面もあります。

Salesforce導入から 2 年ほど経ったタイミングで、ちょうど社内での私の役割が変わったこともあり、再び Salesforce の運用・構築を担当するようになりました。

──再び管理者になった時点では何か変化がありましたか?

久しぶりに Salesforce をチェックしてみると、「しばらく見ていなかった間にこうなってしまったのか…」と感じました(苦笑)。各現場主導でカスタマイズをしてもらっていたので、うまく統制がとれていなかったんです。

例えば、必要のないカスタマイズがされていたり、同じような意味をもつカスタム項目がいくつもできてしまっていました。

──管理する側としては頭が痛いですね(苦笑)。

ビジネスサイド主導で、外部のエンジニアに Salesforce のカスタム開発を委託したこともあったみたいですが、あまりうまくいっていなかったように感じました。

──うまくいかなかった原因は何だと考えられますか?

要件定義ができていなかったからだと思います。業務委託で手伝ってもらうエンジニアの多くは、あくまで要件通りに実装することが仕事です。つまり、依頼者が Salesforce の機能やコンセプトを理解していないと、不適切な依頼になってしまいます。

社内では私も含め、業務もSalesforceも知った上でコミュニケーションや要件調整ができるのですが、社外への発注となると同じようには行きません。

──海老原さんが考える「エンジニアへの適切な依頼の仕方」について教えてください。

最初から具体的に「この画面でこういうことができるようにしたい」と依頼するのではなく、「こんな営業プロセスを実現したい」というイメージをエンジニアと共有することが大切です。

──その大変な状況から、どう対処されたのでしょう?

営業組織が大きくなる途上だったので、「このタイミングでしっかりテコ入れしないと、営業がスケールしなくなる」と思い、私個人だけで対応するのではなく、Salesforce など社内システム全般を管理する「ビジネス基盤」チームを立ち上げることにしました。

私が管理から離れていた時期に現場を助けてくれていたメンバーに加え、新規での採用も行いました。なかなか都合よく即戦力の採用はできないので、未経験でも興味を持ってくれた人を採用して、ゼロから知識を習得してもらいました。

「科学的なセールス活動には綺麗で正しいデータが入っていることが重要」と、現場と管理チームが結束

──管理チームができても、営業チームが急拡大中だと「データの入力・管理に手間取るよりも次の商談を」と反発の声が上がりそうな気もします。

現場のメンバーも私と同様の危機感を抱いていたので、幸いにもみんな協力的でした。科学的なセールスを行なうためには、綺麗で正しいデータが入力されている必要がある。だから、管理側と現場で「今後の営業に支障が出ないよう、まずは今のタイミングでしっかりマネジメントしよう」という意思統一ができました。

──具体的にはどんな風に連携されたのですか?

各事業部にはセールスオペレーションの改善を推進するリーダーがいるので、彼らとのコミュニケーションを特に重視しました。管理ルールの提案のほか、どんな課題があるのか、私のチームからどんなサポートができそうかという点は、毎週の定例 MTG で常に議論していました。

──営業組織が拡大している段階では、どういう声があがってきましたか?

現場からの要求は、導入時よりも複雑になっていました。これまでスプレッドシートなど別のツールで管理していた情報を Salesforce で一元管理したいという要望や、セールスだけでなく CS(※カスタマーサクセス)チームでも利用したいという声が上がってきました。

標準の機能では作れないようなアウトプットがほしいというニーズもあったので、ここからは Salesforce を PaaS として活用するフェーズだと、カスタム開発を始めました。

──綺麗で正しいデータが入る状態をつくるために、新たに開発をする必要も出てきたんですね。

要件定義は大変でしたが、現場に熱意があったのでしっかり連携して進めることができました。エンジニアとしては「彼らが本当に実現したいことは何なのか?」と考えて最適な設計を提案した結果、過剰な作り込みを避けられた点はよかったと思います。

また、この取り組みは私だけでなく、Salesforce 未経験で採用したメンバーが入社から半年で成果をあげられたので、特に嬉しかったです。

営業の各チームに「Salesforce のチャンピオン」を育成し、全社で活用促進

──営業・CS 全体に Salesforce が定着しても、新しく採用する人材には利用したことがない人も多いと思います。使い方のサポートもされているのですか?

入社後のオンボーディングプログラムでは Salesforce のトレーニングもあります。ただ、部署によって使い方、さらには設定自体も違うので、今は主に各部署で研修をしてもらっています。

さすがに会社全体で 500 名という規模になると、管理チームでも各現場の使い方全てを把握することは難しくなりました。

──現場に任せる部分も出てきたのですね。その中で管理チームとしてはどんなお手伝いをされているのでしょう?

各現場の中に、Salesforce に詳しい人間を育てることです。どんなことができるツールなのか理解できていれば、現場ごとにもっと活用できるようになりますし、カスタム開発する際も適切な依頼ができるようになります。

ですので、チームごとに候補者を選出してもらって、教育メニューを提供し、「ここまで終わらせていれば合格できる」とスケジュールを引いて資格試験の受験をサポートしました。会社からも経費で補助してもらっています。

──社内勉強会のようなものも開催されましたか?

週次での勉強会や、会議室での質疑応答を開きましたね。
Salesforce のアップデートがあった際は、私や管理チームのメンバーで調査した上で「こんな機能が出た」「freee の中ではどう活用できるか」というセッションを開いたこともあります。

Salesforceを管理しているメンバーは、ナレッジサイトも自作していたり、がんばって理解促進に努めていますよ。


──もし当時、 Salesforce の画面上に対応する項目のヘルプを出せる「Teachme Biz for Salesforce」を使えていたら、どう使われますか?

困ったときもSalesforceの画面上からヘルプを出せるのであれば、営業メンバーの学習効率は上がるのではないでしょうか。

当社はビジネスサイドも Web に抵抗感がない社員ばかりなので、おそらく現状は Salesforce を操作中に別のタブでマニュアルを開いて、都度切り替えながら作業しているメンバーが多いと思います。ですので、Salesforce の画面上に対応するヘルプをポップで表示できるなら、それだけで作業効率は上がると思います。

──営業・CS の現場全体にまで定着させるフェーズで特に苦労した点はありますか?

むしろ当社の場合、各リーダー以外にも協力的なメンバーが多くて助かりました。
現場から自発的に「今回リリースされたこの機能をウチでも使えるようにしてほしい」というリクエストが来たこともあるくらいです。営業メンバーがプロダクトのリリースノートを読んでいないとできないことなので、驚きました。

──経営陣が描いていたデータドリブンな営業組織として機能してきたんですね。とはいえ、社内システムを導入〜定着させるチームというのは経営層からの評価も難しそうですし、理解が求められる気がします。

私もエンジニアとしてプロダクト開発を行なうつもりで入社したので、社内システム管理チームのマネージャは入社当時に想定していたポジションではありませんでした。

ただ、会社がちゃんと成長できていなければ、個人目標が達成されても意味がありません。 ですので、今は全社の業務改善に最善を尽くそうと納得した上で仕事を進めていました。


──これからの会社のビジネス成長を優先すると、むしろ最善の選択だったのですね。本日は貴重なお話ありがとうございました!

<執筆:高橋宏彰 (Web / 所属先)、撮影:大杉 明彦 (Web)>

Teachme Bizでは、SalesforceにTeachme Bizで作成した操作手順書を表示する"Teachme Biz for Salesforce"を提供しております。
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詳しくは、以下のページをご覧ください。
>> 【関連】画像・動画ベースのビジュアルヘルプで、Salesforceの運用定着をもっと簡単に

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