「Salesforce管理者の仕事、多すぎませんか?」 - 各社の事例から学ぶ、管理者の負荷を減らすポイント

最終更新日: 2020.04.09 公開日: 2020.04.07

Salesforce を活用している企業の方のお話を聞いていると、社内に定着させる上では大きく分けて3つの壁があることがわかっています。

前回の記事では、1つ目の壁である「営業のメンバーに、データを入力してもらいづらい」という問題と、その解決策をご紹介しました。

今回は、初期段階を乗り越えた先にある2つ目の壁について紹介します。

営業のメンバーにデータを入力してもらえるようになり、数ヵ月が経過したころには、Salesforceをより活用できるようになります。管理者や導入推進者の方は、貯まったデータを使ってやりたいことが出てくる頃です。

しかし、せっかくSalesforceを使ってやりたいことが出てきたのに、「管理者の仕事が忙しすぎて、新しいことをする余裕がない」という壁に直面する方が少なくありません。

この壁を乗り越えるためには

  1. - 一人で抱え込まず、協力者を増やしていく
  2. - 各チームの協力者に、教育を引き継いでいく

という2点が欠かせません。また、こうしてSalesforceの運用を個人から組織で担うようにする中では、プロジェクトチームの体制の組み方にもちょっとしたポイントがあります。

今回は、Salesforce管理者の方々から伺った経験談も振り返りながら、そんなお話をまとめます。

「Salesforceは定着したけど、管理者の仕事が忙しすぎる!」現象

営業のメンバーが当たり前にSalesforceでデータを入力してくれるようになれば、問い合わせ対応などの苦労も少なくなっているはずです。では、なぜいつまでも管理者は忙しいままなのでしょうか。

まず、Salesforceの管理者の仕事を整理します。

Salesforce導入実績の豊富なプラチナパートナーである株式会社サンブリッジさんの資料で、Salesforceの機能一覧がまとめられています。

Salesforceの機能・特徴|営業支援システム(SFA)|プロダクト|株式会社サンブリッジ

Salesforceは顧客情報を起点にして多くの部署の仕事をカバーしており、それぞれの業務を改善していくことで企業経営に良い効果が生まれるプロダクトです。

しかし、多くの機能がある分、管理者ができることも多いのです。経営層向けの可視化、操作演習、営業・マーケティング最適化、そしてプロジェクト推進とスケジューリングなど、最初はすべて管理者の方にまわってきます。

これらは本来、それぞれ別の部署で行うような膨大な範囲の仕事です。それを、Salesforce管理者は少人数で、あるいは一人だけで対応しなければいけません。

さらに、個人的な印象ですが、Salesforce管理者には組織思いでサポーティブな方が多い気がします。

そんな方々だからこそ、Salesforceで社内のさまざまな部署の業務効率化をしていくうちに、膨大なタスクを抱え込んでしまいがちなのではないでしょうか。

「管理者が忙しすぎる」状態から抜け出すポイント1:協力者を増やす

「管理者の仕事が忙しすぎる」問題を解決するには、まずシンプルに「協力者を増やす」ことがポイントになります。

いきなり管理者を増やすことは難しいかもしれませんが、一部の仕事をサポートしてくれる人を仲間にするだけでも状況は変わります。すでに運用されている段階であれば、Salesforceの価値を実感してくれている人が社内に必ずいるはずです。そうやって、部署全体、企業全体で当たり前にSalesforceを活用している状態を目指します。

Salesforceに携わる多くの人が集うコミュニティ「Salesforce Saturday 池袋」主催者の本橋さんも、Salesforce導入後はフェーズに応じて携わる人が増えていくものだと語っています。

──そもそも Salesforce の管理者って、規模ごとにどんな人が・どのように増えていくものでしょう?

最初に必ず必要になるのは、現場の社員に Salesforceの使い方を教える教育担当者ですね。役職者や現場のエースなど、現場の社員を引っ張っていける方をアサインするほうが上手くいく傾向にあります。

次は開発関連のメンバーですね。多くの部署に導入を拡大していく場合、部署ごとに特化したレコードタイプやページレイアウトをつくるといった開発が必要になります。

そして導入範囲が広くなるほど、使い方が分からないという現場からの質問が増えてきます。そこで問い合わせの窓口担当も専任で必要になります。

悩む箇所や失敗パターンはみんな同じ。コミュニティ運営で学んだ、新人管理者がやるべきこと ── Salesforce 導入 〜 定着の道のり Vol 7. 本橋 孝昭様(Salesforce Saturday 池袋・主催)

つまり、Salesforceを組織として活用していくには、管理者以外のメンバーの力も欠かせません。

特に、社内の導入範囲が広いほど、「顧客管理」「リード管理」「ナレッジマネジメント」「教育」などの一つひとつの仕事の量も増えていきます。大きな部署全体の教育・問い合わせ対応を一人で担当した管理者の方のお話では、「一日中、各自の席に呼ばれて対面でレクチャーするという日々が一年ほど続いた」そうです。

協力者を増やしていった事例では、製造業の会社にSalesforceなど多くのITツールを定着させたMipox株式会社のお話も参考になります。

私たち IT チームは、会社の事業に関しては理解しつつも、業務プロセスを描くのはその部門でお願いしています。時には運用状況をチェックする役割で口を出すこともありますが、情報開示をしつつ、システムの運用すらも各部門の責任として捉えてもらうように変えてきました。

(現場のメンバーにスムーズに協力してもらう)キーワードは “責任感” だと思います。そのデータは誰の持ち物なのかということを理解してもらえれば、自ずとデータを管理し、現場のメンバーを教育する人も決まってきます。
具体的に言うと、弊社では『商談のデータは誰の持ち物ですか?』『では、人事のデータは?』などと整理して、オーナーを決めていきました。

IT 化が進んだ製造業の会社が教える、Salesforce定着を効率化できる 3 つのポイント──Salesforce World Tour Tokyo 2019 セッションレポート(後編)

協力者が増えると、管理者の方が一人で抱え込んでいたタスクを分担でき、管理者にタスクが一極集中する状態を避けられます。

「管理者が忙しすぎる」状態から抜け出すポイント2:教育を引き継いでいく

結論から言うと、もっとも周囲に協力してもらうべき仕事は、マニュアルの作成・更新、集合研修、個別での問い合わせ対応などの教育業務です。

WalkMe株式会社の調査によると、教育業務のメインであるマニュアル作成と研修に対して、約 60% の回答者(※)が「業務負荷が大きい」と回答しています。さらに、教育の効果を実感できるまでには想定以上に時間がかかることも読み取れます。
参考:SaaS導入後の課題が、「ユーザーへの定着化」であると72.9%が回答
※回答者は「SaaSの導入・選定に密接に関わる意思決定関与者」

そして、教育業務は一度きりでは終わりません。新しいメンバーが入社した際、利用部署を広げる際、Salesforceをアップデートした際など、継続的に求められます。

逆にいえば、教育業務を引き継いだり、教育の効率を上げたりできれば、管理者の方にはSalesforceを活用した新しいチャレンジをする余裕が生まれます。

管理者が抱えがちな教育負担を解決した事例では、株式会社アイスタイルさんのお話がとても参考になりました。

アイスタイルさんでは、新卒2年目の営業メンバーをSalesforceのアンバサダーに任命しました。
役員である遠田さんがSalesforce導入を主導し、重要なことは自身が直接伝えていたそうですが、教育業務のほとんどは部下に引き継がれました。

「売上は今は先輩達に頼るとして、その分Salesforceに関しては一番詳しくなれ」って言って僕が直接その社員たちに教えていました。そうすると他の社員の人達はちょっとわからないことがあると、「どうやるの?教えて」ってアンバサダーに聞くわけです。すると 2 年目の社員も自分が役に立ててる実感が持てるようになります。それが結構上手くいきましたね。
売上だけではなく、行動プロセスを可視化し評価することが Salesforce の活用定着へ繋がる (前編) ──Salesforce 導入〜定着の道のり Vol.6 株式会社アイスタイル様

経営者・役員という立場では、「なぜSalesforceを使うのか」「どんなメリットがあるのか」を現場に伝えていく役割が重要になります。しかし、教育業務をすべて一人で抱え込むと、本来やるべき業務ができなくなってしまいます。

さらに、若手社員に頼ることで「チームに貢献できる」というメリットを提供できるため、本来は効果が見えづらい教育業務をうまく効率化しています。

もちろん他にもやり方はあると思いますが、「教育は業務負荷が大きい」「負荷が大きい割に、成果を感じづらい」という点を理解した上でのアプローチが重要になります。

補足:Salesforceに関わる個々の役割を明確にできるとより効果的に

協力者を増やしていくと、Salesforceの運用を個人からチームで担っていくことになります。そこで、一つ注意点があります。

Sansan株式会社でプロジェクトを推進した杉村さんは、協力者は多かったものの責任者といえる存在がいなかった自社の事例を振り返り、「Salesforceの定着~活用では、責任者が誰なのかを明確すると回り道を防げる」というアドバイスをされています。

杉村:
当社の反省点は、必要な役割のメンバーが欠けた状態でプロジェクトを進めてしまったことだと思います。
人手不足もあり、プロジェクトの最初から最後まで責任者といえる存在はいなかったんです。導入を終えて振り返ってみると、やはり営業側からも運用の責任者を立てるべきだったと思います。

──ビジネスサイドの担当不在により、どんな苦労があったのでしょう?

開発のコストが想定以上にかかりました。当社はアジャイルで開発したので、作りながらレビューをしてもらっているうちに課題が増え、もともと予定していた完成イメージよりも膨れ上がってしまいました。

Salesforce 活用の目的と、関わるメンバーの“役割”を明確にすることが第一 ──Salesforce 導入 〜 定着の道のり Vol.10 Sansan 株式会社様

多くの営業メンバーに協力してもらえたものの、現場からの要望が増えることで開発の手がまわらなくなってしまったとのこと。

その経験から、「5つの役割を誰が担っているのか」を明確にすることを推奨しておられます。

杉村:
プロジェクト全体の責任者、開発側の責任者、営業・運用側の責任者、あとは開発の現場を管理するマネージャと営業の旗振り・運用担当がマストだと思います。
誰が何に責任を持つのか、役割をしっかり定義することも重要ですね。プロジェクトチームの体制は、設計・開発だけでなく定着でも重要になりますから。

Salesforce 活用の目的と、関わるメンバーの“役割”を明確にすることが第一 ──Salesforce 導入 〜 定着の道のり Vol.10 Sansan 株式会社様

営業の責任者が定まっていないと、Salesforceに関する各マネージャ・メンバーの要望を取りまとめることができません。

一方で、開発の責任者が定まっていないと、「本当に必要な開発か」「Salesforceの標準機能では解決できないのか」を判断できず、本来は必要でない開発もしてしまいます。

そして、Salesforce活用プロジェクト全体を見る責任者が定まっていない場合は、定着や開発のスケジュール・施策ごとのコストパフォーマンスを考えて動くことができません。

現在運用されている方は、誰がどのような役割を担っているか、今どの役割が足りないかを一度整理してみるといいのではないでしょうか。もし足りない部分があるなら、上司をふくむ社内だけでなく、社外のパートナーなどを頼ってみることも一つの手です。

そうやって組織的に運用することで管理者の負荷も下がり、Salesforceの活用具合を次のステージに進めやすくなります。

次回は、これまで紹介した2つの壁を越えた先にある最後の壁について書きたいと思います。

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