タイ基本情報と工業系不動産市場
タイは東南アジアの中心に位置し、経済的および地理的な要因から国際的な貿易と投資の拠点として発展してきました。サプライチェーンの多様化などを背景に、タイの工業系不動産市場は今後も成長が見込まれます。本稿では、タイの基本情報を押さえた上で、現地の工業系不動産市場について解説します。
目次
タイの基本情報
タイは人口約7,000万人を有し、そのうち首都バンコクは経済・政治の中心地として機能しています。公用語はタイ語ですが、ビジネスにおいては英語が広く使われており、特に工業団地や商業エリアでは英語が通用します。また、仏教国であるタイは文化的に穏やかな国民性を持ち、外国人に対しても友好的なため、多くの企業が進出しやすい環境です。
経済面では、タイはASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国であり、ASEAN内でのGDP規模はインドネシアに次ぐ2位となっています。タイのGDPは2022年に約5,400億ドルを記録し、特に製造業が経済の中核を成しています。自動車産業、電機・電子機器産業、農産加工業が主要産業であり、これらの分野でタイはASEAN地域の製造拠点として重要な役割を果たしています。
タイの工業系不動産市場の現状
タイの工業系不動産市場は、製造業の発展とともに成長を続けてきました。特に、バンコク周辺や東部経済回廊(EEC: Eastern Economic Corridor)と呼ばれる地域が工業系不動産の中心となっています。EECとは、タイ政府が積極的に推進する経済特区で、チャチューンサオ県、チョンブリ県、ラヨーン県の3県を指し、タイの重要戦略拠点と位置づけられているエリアです。ここでは、外国企業向けの優遇措置や税制上のメリットが提供されており、工業団地や物流施設の需要が高まっています。
COVID-19パンデミックの影響により一時的に投資活動が鈍化したものの、2022年以降は回復基調にあります。特に、電気自動車関連産業や電機・電子機器産業を中心とした工場用地の需要が増加し、賃貸市場も再び活況を呈しています。また、サプライチェーンの多様化を図る企業がタイに進出するケースも増えており、工業系不動産市場はさらなる成長が見込まれます。
タイの工業団地では、土地の購入や長期賃貸が一般的であり、日本企業をはじめとする多くの外国企業が進出しています。2018年以降は中国企業のタイ進出も急増しています。ASEAN諸国と比較してインフラが整備されており、スムーズな事業展開が可能であること、また、港湾や空港、高速道路へのアクセスが良いことも、工業系不動産の魅力です。
タイ進出企業にとってのメリット
タイには進出企業にとって多くのメリットがあり、ASEAN地域の中でも特に進出しやすい国と言えます。
インフラの充実度と安定供給
タイはASEAN諸国と比較してインフラが非常に整備されており、電力・水道・通信などのインフラの安定供給に優れています。このため、製造業や物流業にとって安定した事業運営が可能となり、生産活動の効率化に寄与します。
許認可システムの効率化と継続的な改善
タイでは、政府が許認可システムの効率化に取り組んでおり、企業が事業を始める際の手続きが年々スムーズになっています。このため、他国と比べても迅速に事業を開始することが可能です。
充実したサポート体制
タイ投資委員会(BOI)やタイ工業団地公社(IEAT)といった組織が、外国企業のタイ進出をサポートする体制を整えています。これらの組織は税制優遇措置や投資手続きのサポート、ワンストップサービスによる許可申請の迅速化など、さまざまな支援を提供しており、企業にとって非常に心強いパートナーとなります。
タイの工業系不動産の課題
環境規制の強化や都市計画の厳格化といった新たな課題も出てきています。タイ政府は持続可能な開発を推進しており、工業団地や工場に対する環境規制を強化しています。これにより、環境負荷の低い生産活動やエネルギー効率の向上が求められ、企業はこれらの対応を考慮する必要があります。
また、都市化が進む中で、工業団地の開発に対する規制が厳格化される傾向も見られます。そのため、適切な用地を確保することが難しくなるケースや事業認可が下りないケースも増えているため、事前のリサーチが重要です。
まとめ
タイの工業系不動産市場は、製造業を中心とする多くの企業にとって魅力的な投資先です。COVID-19後の回復や新たなサプライチェーン戦略の影響により、バンコク周辺やEECエリアの工業団地を中心に引き続き成長が期待されます。しかし、環境規制や都市計画の変化に伴う課題にも対応する必要があるため、タイ進出を検討する際は慎重な戦略を立てることが重要です。
次回以降では、タイの投資環境や進出の具体的な方法についてさらに詳しく解説していきます。